続・世界史素描:中国冊封体制へ。そして、東アジアは(田中宇) [現状把握]
世界史デッサン:「悪の根源が英国に在る理由」(田中宇)https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-03-07 のつづきです。
《そもそも単独覇権体制はコスト高で儲からない。中国はユーラシア東部、ロシアは西部、インドは南部、サウジは中東、南アがアフリカ、ブラジルが南米をまとめていくといった多極型の方が、中国にとっても効率的で、儲かる貿易やインフラ整備、資源開発などだけ中国がやるという都合の良い状況を作れる。損しても融資が焦げ付くぐらいですむ。焦げ付いても政治的に債務国に恩を売れて超長期的に収支が合う。支配・被支配の一極支配より、多極型の方が双方にとって良い。前編に書いたように米国も、もともと大戦を機に世界を多極型に転換して、国連に覇権を渡して機関化するつもりだったが、詐欺師の英諜報界に入り込まれて覇権運営を乗っ取られた。》
《中国は古代から明清までの各帝国が調子の良い時に、自国周辺の東アジアやユーラシアを支配する覇権体制(冊封体制、朝貢貿易)を敷いていた。これは、周辺諸国を宥和して味方につけ、中国の辺境地域を安定させる策だった。中国は地域ごとに多様性が強く、中央政府が力を失うと国内の反乱がひどくなり崩壊していく。だから、今も中国は民主主義をやれず(選挙をやると民意を集めて政治力をつけた各地方の指導者が中央の言うことを聞かなくなる)、多党制にもできず独裁を維持するしかない。そんな感じなので、今後しばらく中国は覇権拡大より先に国内の体制を安定させねばならない。中国の覇権は伝統的に、外国を支配するのでなく、外国によろしくと言う善隣外交だ。今の中国も、外国が台湾やウイグルや香港の分離独立を扇動して中国の内政が不安定になることを最も恐れている。》
《英国の単独覇権は、第一次大戦前にドイツや米国が英国と並ぶ経済大国になった時点で終わるべきものだった。もし英国が単独覇権を解体してドイツや米国や日本やロシアに覇権を分け与えて多極型に転換していたら、世界は2度の大戦なしで発展し続けられた。だが、英国は自国の凋落や覇権放棄を拒否し、米国を味方につけてドイツを潰す戦争を仕掛け、世界大戦になった。多極型覇権より、単独覇権の方が覇権維持のための戦争が起きるので不安定だ。国際連合の多極型(機関型)の覇権は冷戦で壊れたが、壊したのは単独覇権を維持したかった英国だ。単独覇権を完全に解体して不可逆的に多極型にするのが世界を平和にするための最善策だ。》
《きたるべき米国覇権の崩壊とともに、日本の対米従属も終わりにさせられる。もともと戦後日本の対米従属は、中国より強い日本が再び中国支配を試みないようにする「びんのふた」だった。昔から中国が内部崩壊すると、日本が中国に進出して支配したがる歴史が繰り返されてきた。しかし近年は中国が日本より強い状態になった。中国は今後さらに発展台頭し、対照的に日本は経済的にも、人材的・人々の叡智や技能的にも衰退する一方だ。日本は対米従属をやめても25年ぐらいは今のままのダメさだろう(その後に期待)。日本が中国を支配することはもう不可能で、びんのふたも要らなくなっている。》
《最近は韓国が日本に和解を提案している。これは、日韓から米軍・米覇権が撤退する時が近づいているからだ。従来の米覇権下では、日韓が仲違いし続けて米軍が日本と韓国に別々に駐留し続けている方が米国の軍事費が浪費できて、軍産と隠れ多極主義者の両方に好都合だった。日本と韓国の主流派である米傀儡勢力も、米国とのつながりを強くしておくため日韓が別々に米国に従属するハブ&スポーク型の恒久化を望んできた。しかし今後は米国が退潮し、日韓は対米自立を余儀なくされ、相互に対立し続けることが愚策に転じる。米国の退却後、極東は、日本と韓国が仲良く中国の朝貢国になる感じになっていく。台湾は話し合いで中国の傘下に入っていく。/北朝鮮は、金正恩が内政の転換をうまくやれれば、軍部の権力を削ぎ、かつて殺された張成沢の代わりになる経済運営の専門家たちに権力が移り、中国の傘下で経済発展していき、日韓と和解することになる。金正恩がうまくやれない場合、軍部が権力を握り続け、緊張緩和と発展への動きがゆっくりしか進まなくなる。韓国も中国も北朝鮮を追い詰めないことを優先するので、戦争にはならず、緊張緩和がゆっくり進む。》
落ち着いた気持ちで納得です。
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世界史デッサン:「悪の根源が英国に在る理由」(田中宇) [田中宇]
2月26日以来の田中宇氏「国際ニュース解説」、近代世界から現在まで、世界史の流れが納得できます。次回「中国への覇権移動をどう考えるか」の本題にはいるようですが、その前に「悪の根源が英国に在る理由」が論じられます。
《米国が世界を細かく管理して強圧的に支配したがるのは、米国の覇権が英国から譲渡されたものであり、譲渡後に英諜報界が米国の諜報力をつけてやると言って入り込んで米諜報界になって冷戦などを起こし、米国覇権の本質が英国覇権であるからだ。産業革命後、2度の大戦まで世界の覇権を握っていた英国は、欧州(オーストリア・ハンガリー帝国)、中東(オスマン帝国)、アフリカ、中南米などを細かい中小の国々に分割して相互に対立させ、世界に英国をはるかに超える大国がない状態を作ろうとし続けた。英国自身が中規模の国なので、大国に経済発展されると敗けてしまい、覇権を奪われかねない。世界中を、英国より弱い中小諸国の集まりにして、その上に英国好みの規則を設けた国際社会をかぶせ、英国が裏からそれを動かすのが19世紀以降の英国覇権体制だった。 (多極化の目的は世界の安定化と経済成長) /いま世界に存在している諸大国はいずれも英国の世界分割戦略が失敗したので存在している。中国は英国に分割されかけたが、米国が分割を阻止した。インドは英国の直轄植民地だったので大きくて良かった。英国は出ていく時にインド植民地をヒンドゥ教徒のインドとイスラム教徒のパキスタンに分割して独立させて恒久対立させた。ブラジルは、ポルトガルの一部だったので分割できなかった(中南米のスペイン領は、ナポレオンがスペインを制服している間に、英国に扇動されて独立国になったが、そのさい英諜報界は地域ごとに別々の独立運動を支援し、中南米のスペイン領が無数の国々わかれて独立するように仕向けた。ポルトガルもナポレオンに征服されたが、その間ポルトガルの王政はブラジルで延命しており、英国が手を出せなかった)。 (覇権の起源:ユダヤ・ネットワーク) (世界のデザインをめぐる200年の暗闘)》
その一方でのロシアの動きと日本。《ロシアは、英国が海から東アジアに進出して植民地化するより少し先にシベリア鉄道を極東まで敷き終わって国土を急いで広げた。それ以上のロシアの拡大・南下を防ぐため、時間切れの英国は日本を植民地化せず、むしろ長州藩を支援して明治維新を起こさせて日本を親英反露の近代国家に仕立てたが、第一次大戦で大英帝国が英米資本家に自滅させられた後に日本は独自覇権を希求し始め、英米は太平洋戦争が必要になった。などなど。》昨日どこでだったか「日本の満州支配はシベリア支配までを企図していた」という文章を目にしたが、その背景に英国の意思があったのかと納得。
本来米国は、戦争体質の英国型でなく、戦争のない多極型世界を目指していた。《このように大英帝国=英国覇権は、全世界の状況を細かく把握し、中小の諸国に分割したり、相互に対立させたり、内政干渉して政権をすげ替えたりして覇権を維持した。第二次大戦での敗北回避のために、英国は米国に覇権を譲渡する条件で参戦してもらって戦勝した。当時、世界の戦争のほとんどはユーラシア大陸で、英国の分割支配の世界戦略の結果として起きていた。米州大陸にある米国はユーラシアの戦争が他人事で、戦争体質をやめさせるため英国から覇権を取り上げ、米国が新設する国際連合に覇権を移す「覇権の機関化」をやって、世界の戦争体質を終わらせようとした。米国が作った国際連合は、相互に拒否権を持つ5大国(米英仏ソ中。P5)で構成する安保理常任理事会が機関として覇権(戦争と平和に関する最高意思決定権)を持つ多極型の世界体制だった。米国は多極型の覇権を好んでいた。 (田中宇史観:世界帝国から多極化へ)》しかし、それに対して英国は、《だが英国は、米国や国連に覇権を譲渡する一方で、お得意の諜報力を駆使し、米国にも諜報機関が必要だから作ってやると言って、戦時中に新設された米諜報界(のちのCIAなど)を英国系の勢力が牛耳り、戦争報道の管理を通じて英国傘下の米諜報界がマスコミや世論操作を管理する構造が出来上がった。米諜報界はマスコミや軍事産業や政財界(これらの総称が軍産複合体)を動かし、米国がソ連や中国を敵視する冷戦構造を作り上げ、国連のP5を内部分裂させて機能不全に陥れた。米国自身が国連を中ソに味方する悪い組織として退ける世論も扇動され、代わりに米国が英国と組んで独仏日など同盟諸国を傘下に入れつつソ連中国と恒久対立する冷戦型・NATO軍産の体制が組まれた。国連でなく、英国が操る軍産に牛耳られた米国が覇権を握り、英国流の強圧的で細かい世界支配を続ける状態になった。》これが現状。しかしそれが大きく変わろうとしている。最後は、《この新世界秩序について考察する前に、すでに今回たくさん書いているので、ここでいったん打ち切って配信する。執筆がなかなか進まず、何日もかかってしまったし。続きは次回に書く。》
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「現在の企業は、広義のファシズムの 定義にあてはまる」 [mespesado理論]
久しぶりのmespesadoさんで、かつての日常が戻ったようで穏やかな気持ちです。今日の起きがけには、亀さんの「日本とトルコ」http://toneri2672.blog.fc2.com/blog-entry-1961.htmlを読んで、ユーラシアに心を馳せることができました。まだ完全に終わったわけではないけど、ずっと追い立てられてきた「宮内小創立150周年記念誌」編集と「がんばろう!商店街事業」の後始末は、私にはかなりの重石としてこたえていたことを今更ながら実感しています。あと一息でそこから解放される!
mespesadoさん曰く、《そう!これって、西洋の(=弱肉強食をベースに持つ文明の)企業のことに他ならない。高度成長期の日本式経営の企業とは根本が異なる。》そういえば、「宮内小創立150周年記念誌」の同窓生出版物紹介の「星岳雄東大経済学部教授」の項に、《時代の変化の中で抜本的変革が迫られるとき、それをなしうるかどうか、企業経営の管理能力( コーポレート・ガバナンス)の重要性を説いたのでした。2013年の著書『何が日本の経済成長を止めたのか 再生への処方箋』でこう訴えています。《日本経済は長期にわたって停滞してきた。しかし、まだ再生は可能である。必要なのは改革への政治的意志である。本書が、成長を取り戻すための政策議論を活発化し、今度こそ日本を再生させる一助になれば幸いである。再生が不可能になるまで日本経済が衰弱してしまう前に。》》https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-11 と書いたのを思い出しました。要するに「企業におけるファシズムの徹底」ということかと。高度成長の時は、みんな必要に迫られて突っ走っていた。今はSDGsやら気候温暖化やらの得体の知れないものを鼻の先にぶらさげてもらわないと前に進むことができない。もう無理に前に進まなくてもいいんだよ。→「1990年の生活レベルで日本人が満足した」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-01-31-1
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3月議会一般質問発言通告書 [議会]
最終的に予定の金額が入ってくるのかどうか、それまでまだまだ心配ですが、ほんとうに大変だった「がんばろう!商店街」の実績報告書が、くたびれ果てて、昨日一応一段落したところです。昨日今日のいい天気、「ああ春が来たんだなあ」の気分に浸っています。今朝のラジオ体操の始まりと同時に、ちょうど朝日が昇り始めました。
27日が一般質問締め切りでした。戦没者遺族の方々の高齢化が進む中で、今後の戦没者慰霊をどうするか、ごく最近ある方から指摘されたことでこの問題を取り上げることにしました。不思議な体験をしました。遺族会ということですぐ頭に浮かぶのが、宮内地区遺族会々長のTさんでした。質問を考えながら何度もTさんの顔が思い浮かびました。27日質問書を議会事務局に届けて市役所を出ようとしたら、そのドアのところでTさんとばったり出くわしたのです。一般質問で戦没者慰霊について取り上げることをその場で報告することができました。戦没者の方々が動いておられるに違いないことを確信しました。気持ちがぐんと引き締まりました。
もうひとつは、例によってワクチンの問題です。厚労省から令和4年の人口動態速報値が発表されたのが発言通告の翌日でした。(「人口動態統計速報:死亡数前年比8.9%増」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-28-3 その後のマスコミ報道、出生数の低下を大きく囃し立てますが、それより深刻と思える死亡数の増加についてはほとんど問題にしようとしません。そのことの異常さの指摘も加えた質問内容をこれから考えます。3月10日(金)午後2時ぐらいの登壇予定です。議会中継あります。→http://gikai.city.nanyo.yamagata.jp/nanyocity/
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「特殊作戦から本格的な戦争へ」(ドゥーギン) [ロシア思想]
In Deep記事「特別軍事作戦から全面戦争へ。そして黙示録」https://indeep.jp/full-scale-war-and-apocalypse/で、《これは記事というより論文で、ものすごい長いものでして、全体をご紹介できるようなものではないのですが、この記事が書かれたのが、2月24日でした。記事は、ロシア側の理念が、「 2023年2月23日にすべてが変わった」というようにありました。》と紹介されていた記事「特殊作戦から本格的な戦争へ」は、ほかならぬドゥーギンによって書かれたものでした。長いけどがんばって読みました。「ロシアの覚悟」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-21-1 でドゥーギンが語ったことの詳論と言っていい。この1年間のロシアを内在的に明らかにした議論として最もすぐれたものなのではないか。《ウクライナで1年間戦争が続いた後、ロシアがこの戦争で負けるわけにはいかないことは絶対に明らかである。これは、国、国家、国民であるのか、ないのか、という実存的な挑戦である。》の言葉に武者震いが伝わった。「実存」が問われているーそういう時代なのだと思う。ドゥーギン氏自身、娘が殺されているのです。(https://www.bbc.com/japanese/62621385)
勘どころ、ピックアップしてみました。
《第4段階に入ると、それまで部分的にロシアの支配下にあったハリコフ地方で、ウクライナ軍の反攻が始まる。ウクライナ軍による他の戦線への攻撃も激化し、HIMARS部隊の大量投入、衛星通信システム「スターリンク」のウクライナ軍への供給など、多くの軍事的・技術的手段とあいまって、ロシア軍にとって準備不足の重大な問題が発生したのである。ハリコフ地方の撤退、クピャンスクの喪失、さらにはDNRのクラスニィ・リマン町の喪失は、初期の「半戦」の結果であった。特別軍事作戦が本格的な戦争に変わったのは、この時点からである。より正確には、この変容はロシア上層部でようやく本格的に実現されたのである。/〈5段階 ロシアの部分的覚醒〉これらの失敗を経て、事態の流れを変えたのが第5段階である。部分動員の発表、軍部指導部の改造、特殊作戦調整会議の設置、軍需産業の厳しい体制への移行、国家防衛命令不履行に対する罰則の強化などである。この段階の頂点は、DNR、LNR、ケルソン、ザポロジェの4対象でのロシア加盟の住民投票、プーチンのロシア加盟の決定、そして9月30日のこの場での基本思想演説で、こう述べた。このとき初めて、ロシアは西側の自由覇権に反対し、多極化した世界を建設するという完全かつ不可逆的な決意を表明し、西側の現代文明を「悪魔的」と断じた文明戦争の急性期が始まったことを、率直に述べたのである。》
《ロシアがNATO諸国とその同盟国の手による直接的な軍事的敗北、占領、主権の喪失に直面した場合、ロシアは核兵器を使用することができる。一方、ロシアには米国の核攻撃から確実に身を守る防空設備もない。その結果、本格的な核戦争が勃発すれば、どちらが先制攻撃しようとも、ほぼ間違いなく核の黙示録となり、人類、ひいては地球全体が滅亡することになる。》《米国とNATOにとって、現在のような状況では、当面、核兵器を使用する動機がまったくない。核兵器は、ロシアの核攻撃に対応して使用されるだけであり、根本的な理由(つまり、深刻な、あるいは致命的な軍事攻撃の脅威がない限り)なしに使用されることはないだろう。仮にロシアがウクライナ全土を支配することになったとしても、米国がレッドラインに近づくことはないだろう。ある意味で、米国はロシアとの対決ですでに多くの成果を上げている。多極化への平和的かつ円滑な移行を妨げ、ロシアを西側世界から切り離し、部分的に孤立させ、軍事・技術面でロシアの弱点を示し、深刻な制裁を加え、ロシアの真の同盟国、潜在的同盟国のイメージダウンに貢献し、自らの軍事・技術兵器を更新し、新しい技術を現実の状況で試行錯誤している。ロシアを相互殲滅ではなく、他の手段で倒すことができるのであれば、西側諸国は喜んでそれを行うだろう。核以外の手段で。つまり、欧米の立場は、遠い将来であっても、ロシアに対して真っ先に核兵器を使用する動機がないのです。しかし、ロシアはそうする。/しかし、ここではすべてが西側諸国にかかっている。ロシアが行き詰まりまで追い込まれなければ、これは容易に回避できる。ロシアが人類を滅ぼすのは、ロシア自身が滅亡の瀬戸際に立たされた場合のみである。》
《ウクライナで1年間戦争が続いた後、ロシアがこの戦争で負けるわけにはいかないことは絶対に明らかである。これは、国、国家、国民であるのか、ないのか、という実存的な挑戦である。紛争地域の獲得や安全保障のバランスについてではありません。それは1年前の話だ。今はもっと深刻だ。ロシアは負けるわけにはいかない。このレッドラインを再び越えることは、核の黙示録の夜明けをもたらすことを意味する。これはプーチンだけの決断ではなく、ロシアの歴史的な道筋の論理であり、どの段階においても、チュートン騎士団、カトリックのポーランド、ブルジョアのナポレオン、人種差別主義のヒトラー、現代のグローバリストなど、西洋への依存に陥らないように戦ってきたのだ。ロシアは、自由になるか、あるいは、何もなくなるかのどちらかである。》
《ロシアの完全勝利は、ウクライナの全領土を親欧米のナチス政権の支配から解放し、東スラブ人の国家とユーラシアの大国の両方の歴史的統一を再構築することである。そうすれば、多極化が不可逆的に確立され、人類の歴史をひっくり返すことができるだろう。/さらに、このような勝利によってのみ、当初設定した目標、すなわち脱亜入欧と脱軍事化を完全に実行することが可能になる。なぜなら、軍事化されナチス化した領土を完全に支配しなければ、これを達成することはできないからである。》
《プーチンの登場ですべてが変わった(教育では違うが)。プーチンは、国際関係論において確固たる現実主義者であり、主権を根本的に支持する人物であった。同時に、西洋の価値観の普遍性という意見に完全に共感し、西洋の社会的、科学技術的進歩こそが文明を発展させる唯一の道であると考えていた。彼が主張したのは主権だけであった。それゆえ、彼がトランプに影響を与えたという神話が生まれた。プーチンとトランプを結びつけたのはリアリズムである。そうでなければ、両者はまったく違う。リアリズムは西洋に反対するものではなく、国際関係におけるリベラリズムに反対し、世界政府に反対するものである。》《プーチンは現実主義者として、それ以上のものではないとして特殊軍事作戦を始めたが、1年後に状況が変わった。ロシアは、近代西欧自由文明全体と、グローバリズムと、西欧が他の人々に押し付けようとする価値観と、戦争状態にあることが明らかになったのだ。このようなロシアの世界情勢に対する認識の転回が、特殊軍事作戦の最も重要な成果であろう。》
結論です。
《主権防衛から、戦争は文明の衝突に変わった(ところで、S.ハンティントンは正しく予言した)。ロシアはもはや、西側の態度、基準、規範、ルール、価値を共有し、独立した統治を主張するだけではなく、独自の態度、基準、規範、ルール、価値を持つ独立した文明として行動するようになったのである。ロシアはもはや西側では全くない。ヨーロッパの国ではなく、ユーラシア正教の文明である。これはまさにプーチンが9月30日の4人の新臣民の受け入れに際しての演説で宣言し、その後バルダイ演説で、そして他の演説でも何度も繰り返したことである。そして最後に、プーチンは勅令809号で、ロシアの伝統的価値を守るための国家政策の基礎を承認した。この価値観は、自由主義とは大きく異なるだけでなく、ある点では正反対である。/ロシアは、現実主義から多極化世界論へとパラダイムを変え、あらゆる形態の自由主義を真っ向から否定し、西洋近代文明に真っ向から挑戦し、その普遍的権利を公然と否定しているのである。/プーチンはもはや西洋を信じず、西洋近代文明を明確に「悪魔的」と呼んでいる。その言葉の使い方には、正統派の終末論・神学への直訴と、スターリン時代の資本主義体制と社会主義体制の対立が見え隠れしているのが容易に見て取れる。今日、ロシアが社会主義国家でないことは事実である。しかし、それは1990年代初頭にソ連が敗北した結果であり、ロシアをはじめとするポストソ連諸国は、グローバルな西側の思想的・経済的植民地という立場に立たされることになった。/2022年2月24日までのプーチンの全治世は、この決定的瞬間への準備であったが、かつてはリアリズム(欧米の発展+主権というやり方)の枠内にとどまっていた。今、ロシアが受けた厳しい試練とひどい犠牲の1年を経て、主権+文明的アイデンティティ、すなわちロシア流という方式に変わったのである。》
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「世界最終戦争」段階に突入か(ロシア兵士へのインタビュー記事で思う) [ロシア]
ドゥーギンによると、ロシアのウクライナへの特別軍事作戦は、ある時点から国民意識の変化をもたらしたという。《国民の意識も変わった。〈これは限定的な反テロ作戦や領土の統合ではなく文明の戦いだということを国民が理解し始めた。〉こうしてこの戦争は、〈ロシアが勝利するか人類滅亡になるかの2択。3つ目のシナリオはない。〉ということになった。》(「ロシアの覚悟」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-21-1)と書いた。そのことをうかがわせるロシア人兵士のインタビュー記事があった。今やロシア社会そのものが歴史的使命感をもって戦いに挑んでいるかのようだ。いわく、《ロシアのウクライナ攻勢は1年近く続いており、その間、多くの人がこれを解放の戦争と考えるようになった。》そして事実、その方向に社会全体が動き出している。《今の市民社会は、国防省よりもはるかに効率的に兵士を装備することができます。人々は、政府が行き詰まった問題を解決する術を身につけました。紛争の間に、膨大な数の横のつながりが生まれました。これは、一見するとわからないかもしれませんが、捕獲されたすべての都市よりも重要な、前向きな進展です。だから、ロシアの変化を語るとき、私は退役軍人だけでなく、ソ連時代にすべて破壊されたこの新生市民社会にも注目したい。》
この一兵士のインタビュー記事を読み、石原莞爾の「世界最終戦争論」を思った。→「馬野周二『世界最終戦争論』」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2022-04-10-1
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