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「特殊作戦から本格的な戦争へ」(ドゥーギン) [ロシア思想]

In Deep記事「特別軍事作戦から全面戦争へ。そして黙示録」https://indeep.jp/full-scale-war-and-apocalypse/で、《これは記事というより論文で、ものすごい長いものでして、全体をご紹介できるようなものではないのですが、この記事が書かれたのが、2月24日でした。記事は、ロシア側の理念が、「 2023年2月23日にすべてが変わった」というようにありました。》と紹介されていた記事「特殊作戦から本格的な戦争へ」は、ほかならぬドゥーギンによって書かれたものでした。長いけどがんばって読みました。「ロシアの覚悟」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-21-1 ドゥーギンが語ったことの詳論と言っていい。この1年間のロシアを内在的に明らかにした議論として最もすぐれたものなのではないか。《ウクライナで1年間戦争が続いた後、ロシアがこの戦争で負けるわけにはいかないことは絶対に明らかである。これは、国、国家、国民であるのか、ないのか、という実存的な挑戦である。》の言葉に武者震いが伝わった。「実存」が問われているーそういう時代なのだと思う。ドゥーギン氏自身、娘が殺されているのです。https://www.bbc.com/japanese/62621385

勘どころ、ピックアップしてみました。

《第4段階に入ると、それまで部分的にロシアの支配下にあったハリコフ地方で、ウクライナ軍の反攻が始まる。ウクライナ軍による他の戦線への攻撃も激化し、HIMARS部隊の大量投入、衛星通信システム「スターリンク」のウクライナ軍への供給など、多くの軍事的・技術的手段とあいまって、ロシア軍にとって準備不足の重大な問題が発生したのである。ハリコフ地方の撤退、クピャンスクの喪失、さらにはDNRのクラスニィ・リマン町の喪失は、初期の「半戦」の結果であった。特別軍事作戦が本格的な戦争に変わったのは、この時点からである。より正確には、この変容はロシア上層部でようやく本格的に実現されたのである。/〈5段階 ロシアの部分的覚醒〉これらの失敗を経て、事態の流れを変えたのが第5段階である。部分動員の発表、軍部指導部の改造、特殊作戦調整会議の設置、軍需産業の厳しい体制への移行、国家防衛命令不履行に対する罰則の強化などである。この段階の頂点は、DNR、LNR、ケルソン、ザポロジェの4対象でのロシア加盟の住民投票、プーチンのロシア加盟の決定、そして9月30日のこの場での基本思想演説で、こう述べた。このとき初めて、ロシアは西側の自由覇権に反対し、多極化した世界を建設するという完全かつ不可逆的な決意を表明し、西側の現代文明を「悪魔的」と断じた文明戦争の急性期が始まったことを、率直に述べたのである。》

ロシアがNATO諸国とその同盟国の手による直接的な軍事的敗北、占領、主権の喪失に直面した場合、ロシアは核兵器を使用することができる。一方、ロシアには米国の核攻撃から確実に身を守る防空設備もない。その結果、本格的な核戦争が勃発すれば、どちらが先制攻撃しようとも、ほぼ間違いなく核の黙示録となり、人類、ひいては地球全体が滅亡することになる。》《米国とNATOにとって、現在のような状況では、当面、核兵器を使用する動機がまったくない。核兵器は、ロシアの核攻撃に対応して使用されるだけであり、根本的な理由(つまり、深刻な、あるいは致命的な軍事攻撃の脅威がない限り)なしに使用されることはないだろう。仮にロシアがウクライナ全土を支配することになったとしても、米国がレッドラインに近づくことはないだろう。ある意味で、米国はロシアとの対決ですでに多くの成果を上げている。多極化への平和的かつ円滑な移行を妨げ、ロシアを西側世界から切り離し、部分的に孤立させ、軍事・技術面でロシアの弱点を示し、深刻な制裁を加え、ロシアの真の同盟国、潜在的同盟国のイメージダウンに貢献し、自らの軍事・技術兵器を更新し、新しい技術を現実の状況で試行錯誤している。ロシアを相互殲滅ではなく、他の手段で倒すことができるのであれば、西側諸国は喜んでそれを行うだろう。核以外の手段で。つまり、欧米の立場は、遠い将来であっても、ロシアに対して真っ先に核兵器を使用する動機がないのです。しかし、ロシアはそうする。/しかし、ここではすべてが西側諸国にかかっている。ロシアが行き詰まりまで追い込まれなければ、これは容易に回避できる。ロシアが人類を滅ぼすのは、ロシア自身が滅亡の瀬戸際に立たされた場合のみである。

ウクライナで1年間戦争が続いた後、ロシアがこの戦争で負けるわけにはいかないことは絶対に明らかである。これは、国、国家、国民であるのか、ないのか、という実存的な挑戦である。紛争地域の獲得や安全保障のバランスについてではありません。それは1年前の話だ。今はもっと深刻だ。ロシアは負けるわけにはいかない。このレッドラインを再び越えることは、核の黙示録の夜明けをもたらすことを意味する。これはプーチンだけの決断ではなく、ロシアの歴史的な道筋の論理であり、どの段階においても、チュートン騎士団、カトリックのポーランド、ブルジョアのナポレオン、人種差別主義のヒトラー、現代のグローバリストなど、西洋への依存に陥らないように戦ってきたのだ。ロシアは、自由になるか、あるいは、何もなくなるかのどちらかである。》

ロシアの完全勝利は、ウクライナの全領土を親欧米のナチス政権の支配から解放し、東スラブ人の国家とユーラシアの大国の両方の歴史的統一を再構築することである。そうすれば、多極化が不可逆的に確立され、人類の歴史をひっくり返すことができるだろう。/さらに、このような勝利によってのみ、当初設定した目標、すなわち脱亜入欧脱軍事化を完全に実行することが可能になる。なぜなら、軍事化されナチス化した領土を完全に支配しなければ、これを達成することはできないからである。》

プーチンの登場ですべてが変わった(教育では違うが)。プーチンは、国際関係論において確固たる現実主義者であり、主権を根本的に支持する人物であった。同時に、西洋の価値観の普遍性という意見に完全に共感し、西洋の社会的、科学技術的進歩こそが文明を発展させる唯一の道であると考えていた。彼が主張したのは主権だけであった。それゆえ、彼がトランプに影響を与えたという神話が生まれた。プーチンとトランプを結びつけたのはリアリズムである。そうでなければ、両者はまったく違う。リアリズムは西洋に反対するものではなく、国際関係におけるリベラリズムに反対し、世界政府に反対するものである。》《プーチンは現実主義者として、それ以上のものではないとして特殊軍事作戦を始めたが、1年後に状況が変わった。ロシアは、近代西欧自由文明全体と、グローバリズムと、西欧が他の人々に押し付けようとする価値観と、戦争状態にあることが明らかになったのだ。このようなロシアの世界情勢に対する認識の転回が、特殊軍事作戦の最も重要な成果であろう。》

結論です。

主権防衛から、戦争は文明の衝突に変わった(ところで、S.ハンティントンは正しく予言した)。ロシアはもはや、西側の態度、基準、規範、ルール、価値を共有し、独立した統治を主張するだけではなく、独自の態度、基準、規範、ルール、価値を持つ独立した文明として行動するようになったのである。ロシアはもはや西側では全くない。ヨーロッパの国ではなく、ユーラシア正教の文明であるこれはまさにプーチンが9月30日の4人の新臣民の受け入れに際しての演説で宣言し、その後バルダイ演説で、そして他の演説でも何度も繰り返したことである。そして最後に、プーチンは勅令809号で、ロシアの伝統的価値を守るための国家政策の基礎を承認した。この価値観は、自由主義とは大きく異なるだけでなく、ある点では正反対である。ロシアは、現実主義から多極化世界論へとパラダイムを変え、あらゆる形態の自由主義を真っ向から否定し、西洋近代文明に真っ向から挑戦し、その普遍的権利を公然と否定しているのである。/プーチンはもはや西洋を信じず、西洋近代文明を明確に「悪魔的」と呼んでいるその言葉の使い方には、正統派の終末論・神学への直訴と、スターリン時代の資本主義体制と社会主義体制の対立が見え隠れしているのが容易に見て取れる。今日、ロシアが社会主義国家でないことは事実である。しかし、それは1990年代初頭にソ連が敗北した結果であり、ロシアをはじめとするポストソ連諸国は、グローバルな西側の思想的・経済的植民地という立場に立たされることになった。/2022年2月24日までのプーチンの全治世は、この決定的瞬間への準備であったが、かつてはリアリズム(欧米の発展+主権というやり方)の枠内にとどまっていた。今、ロシアが受けた厳しい試練とひどい犠牲の1年を経て、主権+文明的アイデンティティ、すなわちロシア流という方式に変わったのである。》

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「世界最終戦争」段階に突入か(ロシア兵士へのインタビュー記事で思う) [ロシア]

ドゥーギンによると、ロシアのウクライナへの特別軍事作戦は、ある時点から国民意識の変化をもたらしたという。国民の意識も変わった。〈これは限定的な反テロ作戦や領土の統合ではなく文明の戦いだということを国民が理解し始めた。〉こうしてこの戦争は、ロシアが勝利するか人類滅亡になるかの2択。3つ目のシナリオはない。〉ということになった。》(「ロシアの覚悟」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-02-21-1)と書いた。そのことをうかがわせるロシア人兵士のインタビュー記事があった。今やロシア社会そのものが歴史的使命感をもって戦いに挑んでいるかのようだ。いわく、《ロシアのウクライナ攻勢は1年近く続いており、その間、多くの人がこれを解放の戦争と考えるようになった。》そして事実、その方向に社会全体が動き出している。今の市民社会は、国防省よりもはるかに効率的に兵士を装備することができます。人々は、政府が行き詰まった問題を解決する術を身につけました。紛争の間に、膨大な数の横のつながりが生まれました。これは、一見するとわからないかもしれませんが、捕獲されたすべての都市よりも重要な、前向きな進展です。だから、ロシアの変化を語るとき、私は退役軍人だけでなく、ソ連時代にすべて破壊されたこの新生市民社会にも注目したい。》

この一兵士のインタビュー記事を読み、石原莞爾の「世界最終戦争論」を思った。→「馬野周二『世界最終戦争論』」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2022-04-10-1

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