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ずっと続くガザ戦争 [田中宇]

要約:《【2023年11月25日】パレスチナの大義にこだわらなければ、ガザ市民がエジプト人になり、西岸市民がヨルダン人になっても生活的には問題ない。(英国の詐欺に騙されたままの)思想信条に拘泥しなければ、西岸パレスチナ国家は要らない。》

ダイジェスト:アラブ諸国は、パレスチナの大義を理由にパレスチナ人を西岸とガザに押し込め続ける。悪いのはイスラエルだ。文句はイスラエルに言ってくれ。イスラエルはパレスチナ人を追い出そうと、攻撃や嫌がらせ、殺傷や焼き討ちを過激化する。/イスラエルは、しだいにひどい人道犯罪を常態化し、アラブ諸国や欧米の人権重視なリベラル派が「人道犯罪国家イスラエル」「アパルトヘイト国家イスラエル」への非難や敵視を強める。アラブ諸国はパレスチナ人を閉じ込めることで、イスラエルの人道犯罪をよりひどいものに仕立てることに成功してきた。
これに対してイスラエルは、米諜報界により深く入り込み、米国の政界やマスコミ権威筋をイスラエルの傀儡にする策略を強めて、イスラエルがパレスチナ人に対していくら人道犯罪をやっても「悪いのはハマスなどアラブやイランのテロリストだ」という話になるよう歪曲を強化した。》

以前のイスラエルは、パレスチナ人の人権を最低限認めてきた。だが最近のイスラエルはパレスチナ人の人権を認めなくなり、むしろ虐殺など明らかな戦争犯罪を積極的に展開し、それによってパレスチナ人を恐怖のどん底に陥れ、殺されぬようエジプトやヨルダンに出ていかざるを得ないように仕向けている。 /イスラエルは今回のガザ戦争で、わざと戦争犯罪を重ねている観がある。イスラエルはガザ北部のシファ病院を、ハマスの司令部として使われていると言って攻撃・破壊し、重大な戦争犯罪を犯したと世界的に非難されている。・・・イスラエルはわざとひどい戦争犯罪を犯し、世界から戦争犯罪を非難されても屁とも思わずガザ市民を虐殺できるぞと示唆し、ビビった世界とパレスチナ人たちがエジプトを加圧してラファの国境を開けさせるように仕向けている。》

今回のガザ戦争の隠れた本質のもう一つは、以前から書いている「ガザ市民がエジプトに追い出されると、エジプトでハマス=ムスリム同胞団が活発化し、米傀儡の軍事政権を再び倒すアラブの春が再演される」ことだ。/ハマス(同胞団ガザ支部)がイスラエルによってガザから追い出されることで、同胞団はガザよりはるかに大きなエジプトの政権を得る。イスラエルガザの土地を接収し、パレスチナ問題のくびきの半分から解放される。ハマスエジプトを得る。 /表向き仇敵どうしのハマスとイスラエルは、この「ウィンウィン」のシナリオで事前にひそかに合意したうえで今回のガザ戦争を展開している可能性がある。》

パレスチナ国家は、西岸とガザでなく、エジプトとヨルダンを転換して作られる。それはまさに昔からイスラエルが言ってきた「詭弁」でもある。/だが、すでに述べたように、ヨルダン川の東岸がパレスチナで西岸がイスラエルになるはずが、詐欺師な英国が東岸をハーシム家に与えてしまったという歴史が語られないことの方がインチキだも言える。2国式は、英国の詐欺に立脚している。》

BRICSを主導する中国もロシアも、2国式の実現が目標だとか、平和的な外交解決が必要だとか言っている。戦争や経済制裁でイスラエルを潰すのでなく、平和的な外交解決をやっている限り、2国式は実現しない。
いや正確には「西岸に2国を作る」のでなく「西岸はイスラエル、東岸とエジプトはパレスチナ」の拡大2国式に事態は向かう。プーチンや習近平が言っている「2国式」は、この拡大2国式のことなのか??。違うだろう。だが、現実は拡大2国式に向かう。》

私はこれまで「イスラエルが2国式に沿ってパレスチナ国家の運営を許さないと、米覇権衰退後の非米化・多極化した世界でイスラエルが受け入れられず、国家存続を許されない」と考え、イスラエルは最小限の2国式(オルメルト案=トランプ案)を受け入れるのでないかと予測してきた。 /だが、その予測は外れた。イスラエルは、パレスチナ国家の存在を全く許さず、ガザと西岸からパレスチナ人を追放する策をやり続ける。ハマスにエジプトとヨルダンを与え、それらをパレスチナ国家に仕立てようとしている。》《パレスチナの大義にこだわらなければ、ガザ市民がエジプト人になり、西岸市民がヨルダン人になっても生活的には問題ない。(英国の詐欺に騙されたままの)思想信条に拘泥しなければ、西岸パレスチナ国家は要らない。(あえてはっきり書いてみた)》

今後の世界は多極型であり、これまでの米英覇権体制に比べ、覇権国から他の国々に対する強制力が少ない。イスラエルはそれを踏まえた上で、これみよがしに戦争犯罪を重ねている。/「イラクの大量破壊兵器」「イランの核兵器開発」など、米英覇権は気に入らない国に戦争犯罪の濡れ衣を着せて潰す策をやってきた。イスラエルもその策に加担してきた。中露BRICSは、そのような米英覇権の世界を是正するために非米的な多極型体制を形成している。/そのような中露BRICSが、これからイスラエルをどう扱っていくのか。英米が遺した難問をどう解決するのか。拡大2国式の具現化を容認し、旧来2国式(西岸2国式、パレスチナの大義)にこだわる勢力をなだめて安定化するのか。それともイスラエルの戦争犯罪を裁くことにこだわるか。これは、今後の多極型世界がどういうものになるのかを象徴する事項になる。》

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