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『音楽の師 梁田 貞』 [本]

音楽の師 梁田貞.jpg今年が創立150周年になる南陽市立宮内小学校の校歌は、大正11(1922)年、創立50周年を記念して作られ歌い継がれてきた。「ふるさと」の高野辰之作詞、「城ヶ島の雨」の梁田貞作曲である。製糸業全盛の時代、宮内が最も勢いのあった時代だった。当時の宮内にふさわしい最高の校歌をつくりたい、そういう思いをこめた依頼だったと思う。後に校長となる山田二男は『百年のあゆみ』に、《かつて郡講習会で梁田先生の御指導を受けた縁故があり、先生の希望によって、高野先生への作詞の道がついた》と記している。
高野辰之についてはいろいろ知るところも多かったが、このたび『音楽の師 梁田 貞』によって、音楽教師として卓越した梁田貞を知った。著者が演奏会プログラムに梁田について書いた文章が「あとがき」にある。《「純粋な音楽」というものが、心やさしく生きたいと願っているひとたちにとって、その心やさしさを支える「無償の愛」のようなものであることを、梁田先生の音楽と人格は、私たちに悟らせてくれる。/せわしない日常、わずらわしいもろもろの相対的関係、虚しさにつうじかねない疲労時の孤独などの波のまにまに己れ(心やさしくありたいと願う)を見失いかける時、救いの声のように、また自問自戒のことばのように音楽がひびいてくるーーという経験。そうした経験を、梁田先生を識るしあわせに恵まれたひとたちは、生涯の間にいくどか持つのではなかろうか。少なくとも私はそうであった。/梁田先生を想うだけで私たちの耳には「純粋な音楽」が聴こえてくる。私たちの眼には「純真な音楽家」のおもかげが映ってくる。梁田先生の73年間(生涯)の生命は、イコール純粋な音楽の生命にほかならなかった。そして私たちは、音楽の本質が「純真な音楽家の全人的な生命の投象である」という真理を、先生の存在によって確信する。/確信することで私たち自身、いつかしら音楽を深く愛している自分に気づくのである。》(251-2p)

70年前、小学校1年生から親しんできた軽快なメロディーにこめられた純真な音楽性、いい校歌に恵まれた幸せを思った。

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