泉房穂氏の「救民内閣構想」への期待 [日本の独立]
・「「小沢一郎が、動き出した。日本も変わる。この流れを作れ。」(副島隆彦)」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2023-06-25-2
泉房穂コールは起きるか?「救民内閣構想・7つのステップ」の可能性と課題〜決定的に重要なのは「圧倒的な総理大臣候補の登場」だ!
- 2024年1月16日
私は昨年、泉氏と共著『政治はケンカだ!』(講談社)を上梓し、政治改革の道筋についても突っ込んだ意見交換を重ねてきた。その立場から、「泉構想」の可能性と課題について、率直に論じてみよう。
①世論喚起
泉氏が掲げる7つのステップの一つ目は「世論喚起」だ。
泉氏は昨年4月末に明石市長を退任した後、明石市長選に続いて兵庫県三田市や東京都立川市、埼玉県所沢市などで自公候補に挑む無所属新人を支援し、連戦連勝してきた。この結果、自公政権に対抗する「顔」として泉氏への期待が高まったという経緯がある。
岸田内閣の支持率が一桁台まで落ち込んで国民からそっぽをむかれたうえ、自民党派閥の裏金事件が勃発して自民党への反発は極限まで高まっている。まさに政権交代の千載一遇の好機が訪れたといっていい。
一つ目の「世論喚起」は着実に進んでいると泉氏を指摘している。
しかし政権交代の機運が高まるには至っていない。なぜなら、野党がバラバラで、自公政権に代わる新政権の具体的イメージがみえてこないからだ。
私はこの点、立憲、維新、国民の3党が仮に政権構想をつくって掲げても、政権交代の機運は高まらないとみている。それは圧倒的な総理大臣候補が不在だからだ。立憲の泉健太代表、維新の馬場伸幸代表、国民の玉木雄一郎代表の誰かを総理大臣候補に掲げることで仮に3党が一致したところで、世論はおそらく盛り上がらない。
岸田内閣への反発と自民党裏金事件への怒りで高まりつつある世論を受け止める「圧倒的な総理大臣候補」の登場こそ、政権交代のリアリズムを高める「世論喚起」にもっとも必要な要素であろう。
②大同団結
泉氏が掲げる二つ目のステップは「大同団結」だ。
泉氏は「政権交代の実現は、『救民内閣』の大義のもとに各党が組めるか否かにかかっている」とし、立憲、維新、国民、れいわ、共産、社民、参政に加え、日本保守党や前原新党も連携したらいいと指摘。場合によっては自民党の一部や公明も連携していいと唱えている。
2017年衆院選の希望の党のように「排除の論理」を打ち出すと失敗するとし、「救民内閣」の大義のもとで大同団結することを強く訴えていることが肝だ。
この提案については、(1)本当に大同団結ができるのか(2)できたとしても、新政権は成り立つのかーーという二つの疑問が出てくる。これについて、泉氏は以下のステップで解説している。
③候補者調整
三つ目のステップは「大同団結」をするための「候補者調整」だ。
泉氏は野党の現状について「各党は比例復活を狙って小選挙区に『かかし』として候補者を立て、潰しあっている」と指摘し、これを解消するために「予備選の実施」と「比例重複の禁止」を唱えている(比例候補は各党に任せるとの立場)。これは「言うは易し」だが、その実現は簡単ではない。
予備選実施の「世論喚起」効果は極めて大きい。野党各党が「限られた自公批判票」を奪い合っているだけでは投票率は上がらず、自公の組織票に競り負ける。無党派層の支持を引き寄せ、投票率を大きく引き上げなければ政権交代はそもそも実現しない。予備選には「野党候補の一本化」に加え、「世論喚起による無党派層の掘り起こし」という、さらに大きな狙いがあるといっていい。
しかし、野党各党が小選挙区で候補者を一本化するための予備選に参加する可能性は極めて低い。実際に立憲も維新も否定的だ。それは、野党各党が「小選挙区での勝利」よりも「比例議席の確保」を優先し、現職議員が小選挙区に敗れても比例復活して自分の議席を維持することを最優先にしているからだ。
そこで、泉氏は「予備選実施」とあわせて「比例重複の禁止」を掲げている。この狙いは、野党各党に「比例重視」からの転換を迫り、小選挙区での勝利に不退転の決意で挑むことを促すことにある。小選挙区で勝てなければ政権交代は実現しないのだ。
私はこの主張に賛成だが、いまのままでは実現可能性は低い。ここでも不可欠なのは「圧倒的な総理大臣候補」の登場である。「この人のもとに結集しなければ自分は落選してしまう」というほどの強力な総理大臣候補が出現して「予備選実施」と「比例重複の禁止」を掲げれば、相当数の野党議員がそれを受け入れるだろう。
④政権交代
泉氏が掲げる4つ目のステップは「政権交代」である。
過去の政権交代は1993年と2009年に起きた。
93年衆院選は中選挙区制のもとで行われたが、自民党が分裂したうえ、日本新党や新党さきがけなど新党が乱立し、結果として自民党が過半数を割り、非自民非共産の8党連立政権が誕生したのだった。複数政党が複数議席を奪い合う中選挙区制だからこそ、シナリオなき政権交代が起きたといえるだろう。
一方、2009年の政権交代は、小選挙区制導入を柱とする政治改革の帰結として起きた。自民vs民主の事実上の一騎打ちの対決構図が実現し、自民党政治への反発が高まるなかで、もうひとつの選択肢として民主党が地滑り的な勝利を収めたのだ。だが、民主党政権は発足後、小沢派と反小沢派の内紛で瓦解し、短命に終わった。
泉氏は次の衆院選は「93年の多党連立政権型」になると予測している。93年との相違点は、選挙制度が小選挙区制に変わり「候補者調整」が不可欠になったことだ(③のステップ)。
93年は自民党を割って出た小沢一郎氏という「剛腕の黒幕」がいた。しかしもはや黒幕政治家の時代ではない。やはり「圧倒的な総理大臣候補」の登場が多党連立の実現には不可欠ではないだろうか。
⑤方針転換
政権交代が実現すれば、あとは政策をどう実現していくかである。
泉氏が掲げる5つ目のステップは「方針転換」。新政権の方針に従わない大臣や官僚を総理大臣が次々に更迭すればいいと主張している。
私はこの主張におおむね賛成だ。しかしこれも「言うは易し」。民主党政権も当初は各省庁の局長以上の全員にいったん辞表を提出させ、新政権の方針に従う者だけ再起用するとしていたが、やりきれなかった。
役所はあの手この手で新政権を妨害してくる。とくに人事に手を突っ込めば、なりふり構わず新政権の足を引っ張ってくる。民主党政権はそこで官僚を手を握り合い、国民の期待を裏切ったのだ。
新政権の方針に従わない大臣や官僚を次々に更迭するのは、国民から圧倒的に支持された強力な総理大臣でなければやりきれないだろう。
泉氏は「方針転換」に必要な財源について「国債発行でいい」との考え方を示した。これに対しては財政規律を重視する立憲民主党の執行部(野田佳彦最高顧問、岡田克也幹事長、安住淳国対委員長ら民主党政権で消費税増税を推進した重鎮たち)が強く抵抗する可能性が高く、「大同団結」の大きな障壁となることが予想される。
⑥国会での可決
泉氏が掲げる6つ目のステップは「国会での可決」だ。
政策を具体化するには予算や法案を国会で成立させる必要があるが、国会議員が反対する可能性がある。その場合は躊躇なく、衆院を解散して国民の信を問えばよいという主張だ。
泉氏は、かつて小泉純一郎首相が郵政民営化法案の否決を受けて衆院を解散した「郵政選挙」を持ち出し、この手法を踏襲すればよいと説く。リベラル勢力には「首相の解散権の行使」に慎重な意見もあるが、私は首相が求心力を獲得して政策を動かすには解散総選挙で国民の支持を勝ち取ることが極めて有効だと考えている。岸田首相がレームダック化したのは、解散総選挙を断行できなかったからにほかならない。
ただ、ここでも「圧倒的な総理大臣」が存在することが不可欠だ。小泉首相も国民に絶大な支持を得ていたからこそ郵政解散を断行できた。内閣支持率が低く、国民から見放されている首相では、与党の反対を振り切って解散総選挙に踏み切ることは不可能だ。
⑦令和の大改革
泉氏が最後に掲げるステップは「令和の大改革」。都道府県を廃止して300くらいの圏域に再編する「廃県置圏」や「首相公選制」を掲げているが、ここに至る道のりは長く、今回は省略する。
以上、泉構想の成否を握るのは、「圧倒的な総理大臣候補」の出現である。それなくして「大同団結」も「候補者調整」も「政権交代」も「方針転換」もリアリズムは高まらない。
そして、野党第一党である立憲の泉健太代表や野党第二党の維新の馬場伸幸代表が「圧倒的な総理大臣候補」になる可能性は極めて低い。どこからか「新しい顔」を引っ張り出すことが不可欠だ。
その有力候補のひとりが泉房穂氏であることは間違いない。
泉氏は「自らは主役ではなく脚本を描く」として国政進出に慎重な姿勢を示しているが、これは「泉待望論」の世論が高まらない限り手を挙げても圧倒的な総理大臣候補にはならないというリアリズムに基づいたものであり、「泉コール」がわきあがれば一転して「主役」に名乗りをあげる可能性はあるだろう。
地元の政敵である自民党安倍派の西村康稔前経産相が裏金事件で窮地に立っており、ここで泉氏が「世なおし」を掲げて衆院兵庫9区(明石市と淡路島)から出馬すれば、衆院選最大の注目区として世論を盛り上げるのは間違いない。
泉氏は一方で、別の政治家(山本太郎氏かもしれないし、田中真紀子氏かもしれない)に世論の期待が高まれば主役を譲る考えは持ち合わせていると私は思っている。誰に風が吹いて、誰のコールがわきあがるかは誰にもわからない。しかし誰かに風が吹いた以上、その好機を逃してはならず、その風に乗り、みんなでその人を担がなければ自公政権は倒せない。
2019年参院選でれいわ新選組が旗揚げした当初の山本太郎代表の勢いはすごかった。あの時、立憲を率いていた枝野幸男氏が山本氏を担いで一気に政権交代を目指せばどうなっていたか。枝野氏は逆に山本氏への警戒感を強め、れいわとの関係がこじれた。その失敗を繰り返してはならない。
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