森元総理をどう見るか [現状把握]
そして「ロシアとウクライナ、どっちが悪でどっちが善だ、どっちが勝つとか負けるといった問題ではないぞ 。ウクライナの戦争がどんな結果になって世界がどう変わろうとも、その後の日本と日本国民が困窮せず苦しまない為に何が出来るか、何をするべきなのかをもう一度能く考えておけ」と警告しているのです。/政治家の本分は例えいっとき有権者に批判され、嫌われたとしても自分が禄を食んだ国家の平和と国民の安寧を実現しこれを守ること。/彼は自分の役どころを”わきまえている”のです。》
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(※無報酬でなければ会長職を引き受けなかったことに関して、多くの人が森さんのボランティア精神に依るものだと考えられるかもしれませんが実際はそのような美しい理由では無いと考えています。無報酬で無ければ会長職なんてとても出来ない、あるいは無報酬であることがその職責を全うするに最適だ・ということを森さんは着任する前から解っていたのでしょう。高額の報酬を貰っている人間に頼まれて素直にハイと言えない人でも1円も貰わずに癌を患った老体にムチ打って訪ねてきた森さんから「どうか今回はこの森の顔に免じて」と言われて断れる人はそうそういないですから。)
(※ちなみに後任の会長にはちゃんと報酬が出ています)
大量の企業や組織、人の欲が数百億、数千億円という金額をかけてコンフリクトする巨大な渦中のようなオリンピック開催事業をまとめ上げることのなんと困難で恐ろしいことか。
おそらく森氏はいかなる相手も決してないがしろにしない人なのでしょう。利害が衝突した際に彼の進言を受け入れて折れてくれた人、妥協してくれた組織、引いてくれた企業などには後日必ず他のことで余りあるフォローをすることを決して欠かさず、我を通したところは別の案件で妥協あるいは諦めさせる等など、納得して貰えるだけの”徳”があるのです。
自分の権力欲の為だったり自己栄達や自己顕示欲の為に動いて最後は逃げてしまったり約束を反故にするような相手の言うことを誰が聞くでしょうか。相手を納得させられるだけの配慮が出来て、約束を守る、信頼に足る人物で無ければとてもあのような大事業は成し得ません。
今の彼が権力を持っているとはとても思えませんがもし、そう見えたのだとしたら周りが彼に権力を持たせているのでしょう。
そしてウクライナとロシアのことで森氏がああいった発言をしているのもロシアと彼がここ20年以上少なからざる交渉と調整を続けてきた経緯があるからです。
森氏は総理を辞任し平議員になった後、2011年に政治基盤を引き継ぐかもしれなかったご子息の長男を交通事故で失われると2012年に国会議員の椅子も後進に譲って代議士に戻らず、政治家としては第一線からあっさり退いてしまいました。選挙に出れば必ず当選する盤石の地盤があったにも関わらず・です。
小泉純一郎が自民党内に定年制を導入して引導を渡し、ムリムリ引退させるまで国会議員の椅子にしがみついたかつての中曽根元総理や宮沢元総理、
選挙の時に党内の金と人を割り振る絶大な権限(幹事長職)を手に入れてそれを長期間手放さず、周りが自分に傅(かしず)く万能感・優越感に酔いしれている権力者達とは違うということです。
ところが無職になっても周囲は相変わらず彼に頼み事をし続ける。さらに民主党から再度自民党政権になった後の第2次安倍内閣発足以来、総理や閣僚が表立って動けない外交特使としての役割を担うことが多くなりました。
2年前の台湾元総統、李登輝氏死去に伴う葬儀にも現職総理や閣僚ではなく森氏が弔問団筆頭として訪台し、現総統である蔡英文氏と会談しています。(対中強硬派で親日だった李登輝氏の葬儀に現職が行くと差し支えがあるのでその代理)
特にロシア…ありていに言えばプーチンとの交渉あるいはメッセンジャーとしては唯一の窓口となっていました。
日本はアメリカとの同盟関係がある以上、表立ってロシアと共同で動いたり協調したりすることは出来ない。ずっと日本の現職総理の代わりに何度も密命?を帯びてロシアと交渉を重ね、人間関係を作ってきたのです。
2014年クリミア危機に際し、日本のアメリカ及びEUとの協調的(同調的)対ロ経済制裁の時は総理や閣僚はもちろん、高級官僚なども一切伴わずモスクワに渡航して直接プーチンに事情を説明、事なきを得ています。経済制裁してきた国の人間とプーチンは笑って会談に応じてくれたんですね。
今度のロシア関係の発言もあれをそのまま受け取っては稚拙に過ぎる。
小泉郵政解散の時の彼のチーズを使った腹芸を知っていればわかることです。
「おれに対して、こんな対応だよ」
⇒自民で先輩の俺にもこんな態度だ。常識は通用しない。
「まあ、さじ投げたな。オレも」
⇒もう誰にも小泉を止められないぞ。
「干からびたチーズ、噛むんだけど固くて噛めないんだよ」
⇒小泉の決心は硬い。あの意思を崩すことは絶対に出来ない。
「小泉にいつまでもこだわっててもいかんなという気持ちにも、まぁ、なりかねないな」
⇒反対派は怨恨を捨てて党と自分自身のことを考えろ。
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ロシアに聞こえるようにああいった発言をすることの意味。
まず第一は日本のロシアへの窓口が塞がれないようにしていると考えるのが妥当でしょう。プーチンは猜疑心の強い人物のように見えますがそんな人物からも森氏は信頼されている。信頼とは好き・嫌いの彼岸にある感情でこれが無いと話も出来ないし、話が出来たとしてもその言を信用しては貰えません。
そして「ロシアとウクライナ、どっちが悪でどっちが善だ、どっちが勝つとか負けるといった問題ではないぞ 。ウクライナの戦争がどんな結果になって世界がどう変わろうとも、その後の日本と日本国民が困窮せず苦しまない為に何が出来るか、何をするべきなのかをもう一度能く考えておけ」と警告しているのです。
政治家の本分は例えいっとき有権者に批判され、嫌われたとしても自分が禄を食んだ国家の平和と国民の安寧を実現しこれを守ること。
彼は自分の役どころを”わきまえている”のです。
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