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『電光石火』(2)沖縄問題 [本]

菅官房長官 糸満市.jpg『電光石火』のプロローグは、小山内官房長官の沖縄訪問の場面。糸満市の国立沖縄戦没者墓苑での献花と長い祈りの後、市内ホテルでカリユシ姿の知事と会談。その内容について、《今回の沖縄訪問の最大の目的は日米両政府がその週のうちに合意を目指している嘉手納基地より南にある米軍基地などの返還計画に関するものと、普天間基地の名護市辺野古への移設問題に道筋をつけることだった。知事は「いつ頃というメドをつけてほしい」と、返還計画について率直に具体的な時期の明示を求めた。これに対し、小山内は、「沖縄県民の強い要望に応えることができるように、今、全力で交渉に当たっている」と応じ、さらにこれに付随する沖縄振興策について語った。双方とも一歩も引かない姿勢に変わりはなかったが、小山内が安定した長期政権になるであろう現政権を支える官房長官として、沖縄問題を全面的に総理から任されていることを知事は会話の中から感じ取っていた。/特段の結論も出ない会談ではあったが、小山内は次の事務レベルの会談で、知事サイドを驚かせるような内容を提示する用意があった。それは小山内が日頃から口にしている、「原点を大事にする」というものであった。/「沖縄のことを沖縄の立場に立って考えれば自ずとわかることがある。そうすれば物事は見えてくる感じがする」(30-31p)(当時の記事→https://www.news24.jp/articles/2013/04/03/04226037.html

またその前には、小山内が「強い意志」の由来を尋ねられて答える場面で、《今、われわれ日本人にとって一番の課題は‥‥そうだな、自信を取り戻すことじゃないかな。戦後、焼け野原の状況からこの経済発展を遂げて、豊かな平和な国にはなったが、その中で失ったものも多くあるわけだ。それを、もう一度、原点に返って取り戻すということだ。」》(10p)と、やはり「原点」という言葉がある。そしたらこの9月2日の菅総裁候補出馬表明会見https://www.youtube.com/watch?v=Gf16XlDXG7Aを評して、最も意外だったのは「原点」語った菅義偉氏https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20200908-00196959/との記事があった。たしかに菅さんには「原点」という言葉がよく似合いそうだ。mespesadoさんが安倍総理を評して日本のために何をしたらよいのかという本当の目的を達成させるためにはどこを押さえたらよいのか(=詰み手順=毛細血管)が見えているからこそ、そこに現実に至るための手連出管、例えば「敵の妨害」をいなすためにはどうしたらよいか、という「動静脈」の部分の思考に専念することができる。》(https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2020-09-01-1に通ずるようにも思う。

菅さんの沖縄に対する姿勢の「原点」がうかがえる会話がある。主人公である警視庁から出向の秘書官大田と、同期で総理秘書官の植田が交わす対話だ。《「・・・未だに沖縄には急進的左派の政治感情が根強いんだろう。彼らは沖縄を最後の日本革命の拠点として位置付けているからな。何かことが起きれば日本中から支援団体が押しかけてくる。まるで沖縄県民全体が反対闘争を行なっているかのような錯覚に陥るんだが、選挙をしてみると半々の結果になるところが面白いといえば面白いんだ」「しかし小山内はそれを切り崩すという感覚を持っていないところが、これまでの政治家とはちがう」大田の言葉に植田が反応した。「選挙でも半々に分かれる感情を、切り崩さずにどうやって懐柔するつもりなんだ?」「おそらく、あくまでおそらくだが反対派に対しては何らかの課題を与えようとしているような気がする」「課題?反対派にか?」「俺もまだはっきりと本人の話を聞いたわけではない。しかし、理想と現実の間には大きな隔たりがあることは事実だ。反対派にいくら国家の問題を説いても仕方がない現実がある。それならば、国家支援を固定的にして県民が自立できるかどうかを試してみるのも一興というものだ。そのためには普天間基地の跡地利用を沖縄県民に委ね、県民の力だけで経済、文化の復興をやってもらえばいい。もしそれができれば国も余計な金を払わずに済むし、沖縄県民も自信を持つことだろう」》サヨクの吹き溜まりのような沖縄の現実に手をつっこんでもどうにもならない。むしろ県民の自立を信じよう。まさにそれが、「沖縄のことを沖縄の立場に立って考えれば自ずとわかることがある。そうすれば物事は見えてくる感じがする」ということであり、「原点を大事にする」ということなのだろう。(つづく)
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沖縄振興と基地問題「リンクしている」 菅官房長官、容認重ねて言及(琉球新報)
2020年9月3日 12:44
【東京】菅義偉官房長官は3日午前の定例会見で、前日の自民党総裁選出馬会見で沖縄の基地負担軽減の成果として、沖縄振興である那覇空港第2滑走路増設を挙げたことについて「結果的には(沖縄振興と基地問題が)リンクしている」と述べた。

 菅氏はこれまでも、沖縄の基地問題と沖縄振興について「両方の課題を全体で総合的に推進していく意味合いにおいてはリンクしているのではないか」とリンクを容認する発言をしており、基地問題と沖縄振興を関連付ける政府の考え方は、今後の沖縄振興の在り方にも影響を与える。

 同じ2日の出馬会見では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設計画について「沖縄の地元の市長、県知事とも合意した中で、辺野古建設というのは決まった」と述べた。これに対し、当時は条件付き合意で、その後条件が外されて現在に至った経緯に言及せず、地元合意を強調したものだとの指摘には「地元の県の許可がなければ工事できない。こういう法的手続きをとるなかで進んできたことだ」と話し、2013年に埋め立て承認を得ていることを強調した。

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菅氏、これまでの成果と自分の原点を端的に語る(「明暗分かれた自民党総裁選の出馬会見 最も意外だったのは「原点」語った菅義偉氏」石川慶子 9/8(火) 9:30 https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20200908-00196959/

最も意外で面白かったのは菅氏の出馬会見でした。感情を出さない菅氏がどのような出馬会見をするのか注目をしていましたが、冒頭スピーチが意外に心にすっと入る内容でした。安倍政権の官房長官として7年8ケ月支えてきた実績をアピールした上で、「政治の空白は許されない、危機を乗り越える必要がある、全ての国民が安心できる生活を取り戻すため総裁選挙に立候補する決意をした」と表明。ここまでは普通ですが、この後の話に思わず聞き入りました。自分の原点について語ったからです。秋田県から東京に出てきて町工場で働き始めたが厳しい環境だった、その後法政大学で学び民間に就職したものの「もしかしてこの国を動かしているのは政治ではないか」と考え政治家を目指すことにした、と。用意した原稿を淡々と読んでいるのですが、お金も人脈もない地方出身の若者が総裁選まできた事実、物語は心を打ちました。身振り手振りの大げさなアクションがないからこそ、余計に胸に沁みたともいえます。「この世の中には当たり前でないことが残っている。それを見逃さず、国民の生活を豊かにするために、さらに国が成長するために何を改革すればいいかを考えて実践してきた」と信念をわかりやすく語り、縦割り行政の弊害に取り組んだダムの水量調整、携帯電話料金が高すぎるため自由競争で引き下げたこと、ふるさと納税、インバウンド推進など実績を説明。最後に「自助、共助、公助」のキャッチコピーも披露してスピーチを終えました。原点、政治信念、実績、キャッチコピーとポイントが盛り込まれていました。無駄がなく、飽きさせず、聞かせるストーリーも盛り込んだ10分間でした。

ただ、記者とのやりとりはいつも通り、そっけない回答でした。記者の質問時間の方が長く感じられるほど。今回だけはもう少し丁寧な回答であってもよいだろうと思いました。あまり報道陣は好きではないのでしょう。ほとんどニコリともせず、淡々と回答。ごくたまに笑顔はありました。「33年前市会議員選挙に挑戦した時、菅さんは貧乏でした。地盤も看板もカバンもない中選挙に勝ったことがここにつながっている。支えてきた神奈川、横浜の人達に今の思いを」といった神奈川新聞記者の説明的質問の際に「貧乏」という言葉に反応してニヤリとしたのです。ストレートな質問に聞いているこちらもドキッとしました。

出馬にあたって誰かに相談したかという質問には、「無派閥の議員、当選4回以下の若い国会議員のエネルギーが私を支えている」。シンプルでいい言葉選択だと思います。すっかり名物やりとりとなった東京新聞望月記者との質疑応答も後半見られました。「今日はいつもよりも多くの記者から質問を受けていて評価したい。私自身も3年間・・・・(中略)今後も番記者からの厳しい質問にもきちんと対応していくのか」。これに対しては「記者会見は限られた時間の中でやっている。質問が短くなれば時間が空く」と皮肉を込めた切り返し。このような紛糾も見慣れましたが、今回ぎょっとしたのは、望月記者の服装。派手な横ボーダーの体に密着するニット風生地。カジュアルすぎると思います。女性記者は何でもいいというわけではありません。服装マナーは必要ではないでしょうか。シンプルな服装で相手への尊重を心がけてほしいと感じました。ストライプが好きでどうしても着たい場合には、細い縦ストライプのブラウスにするだけで丁寧さを表現できるでしょう。試していただきたいと思います。

最後は質問したい記者がまだまだいましたが、切り上げてしまい、怒号も飛び交う緊張感ある退出。菅さんと報道陣のやりとりは、見ていてヒヤヒヤしますが面白い。記者の質問がやけに長いのは、自分の思うことをストレートにぶつけてくるからでしょう。報道陣が遠慮なく質問できるという関係ができていることはある意味民主的ではないか、とも思えました。菅氏の課題は、何と言っても表情ですが、そこは眼鏡を活用するとソフトな印象になります。そして、スーツの肩のサイズを合わせると立派に見えます。髪型を変えればもっと若々しくなるでしょう。中身に自信のある方は外見も中身にあわせるとメッセージはより伝わりやすくなるのです。菅氏も試していただきたいと思います。


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