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『電光石火』(3)財政問題、菅さんのホンネ [本]

菅さんは経済政策について、依然厳しい経済状況の中で、雇用を守り、事業を継続するために、今後も躊躇なく対策を講じます。最大200万円の持続化給付金、公庫や銀行による最大4000万円の無利子・無担保などの総額230兆円の経済対策について、スピーディに必要な方々にお届けします。》と言っている意志あれば道あり。いったい積極財政の「反緊縮」派なのだろうか、「財政規律(プライマリー・バランス)」に囚われた「緊縮」派なのだろうか。mespesadoさんの見立ては、《「規制緩和が正しい」派で、それがホンネ・・・多分、思想的にも本当に「反緊縮派ではない」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2020-09-12-1。そこのところ、『電光石火』から追ってみる。

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小山内に親しい「経済に詳しい識者」の言葉、《「長期デフレを脱却するため、三本柱をもって名目経済成長率三パーセントを目指す」/安藤新政権は日本経済再建のための経済政策を「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の3本立てで進めることを表明した。/「派手にぶちあげたが、ばらまきによる『財政出動』『金融緩和』は一時的なカンフル剤にはなろうが、借金が増えるだけだからな‥‥いくら消費税を上げても財政規律が崩壊しかねない」》(52-53p)

政権発足から2回目の冬、小山内官房長官と大田秘書官が夕食をともにするエピローグ。ここでも「原点」。菅さんは「原点」が好き。《「官房長官の戦う姿勢はいつ頃からできたものなのですか?」「私の原点は、市議会議員選挙に初めて臨んだ時だろうな。地盤を譲ってもらって楽な選挙をしていたら、今の私はないと思うよ。お金が無くとも、地盤が無くとも、強靭な意志と弛まぬ努力があれば、何事も成し得るという、政治哲学のようなものを得た戦いだったからね。」「今でも、党の長老や派閥や有力議員を向こうに回しても、勇気を持って主張し、必ず実現させる行動力は素晴らしいと思います。」》(290p)やがて話題は経済の課題に及ぶ。まず地の文で「金融緩和」の限界、《通常の経済の状況であれば、金融政策によって金利が下がると景気が刺激される。しかし、いくら金利をゼロ近くまで下げても景気が低迷したままになることがある。それが今の日本の現状なのだ。/金利が低く、なおかつ物価が下落する状況では、国民の多くは預貯金で資産を持とうとする。日銀がいくら貨幣量を増やして経済を刺激しようとしても、国民の感覚が支出に向かわない。その結果、景気はさらに冷え込むことになる。》(294p)そこで前政権下で約束された「消費増税」をめぐる二人のやりとり、《「消費税の引き上げ時期の判断は、市場だけでなく国民意識からも『期待』と『実態』の乖離が広がりつつある中で、来年10月の再増税は難しいかもしれない」「円安による外需関連企業の収益増が真の経済力強化になるか否かの判断が難しいでしょう」「経営者は経済失速リスクを恐れるからな」・・・「増税は将来の国家運営の観点から、早めに手を打たなければならないことは確かですが、今はその時期ではないような気がします」「国家運営か‥‥私も今の借金大国の現状を一刻も早く解消し、一刻も早く孫子の代の安心を考えてやらなければならない時が迫っていることは認識している」》(295p)

「国」的見地から「借金大国解消→消費増税」の小山内に対して、国民目線の大田は小山内の主張を相対化する役割、《「君は消費税増税のタイミングはどうした方がいいと思うんだ?」「デフレを確実に脱却する時期を明文化して、その時まで増税を延期したほうがいいと思います」「すると、それを大義にして国民に信を問うということか?」「最も混乱が少ないと思います。消費税増税は現野党が政権時にに決めた合意です。これを反故にするために信を問うのです。ただし、多くの国民には理解できないでしょうし、ここは丁寧に説明する責任があります。」「マスコミは反発するだろうな。」「それを受け止めるのが官房長官の仕事です。」小山内はニヤリと笑った。》(296-297p)大田の「増税約束反故論」に対して小山内は「ニヤリ」と応えるのです。菅さんのホンネをここに見ます。菅さんは、決して「財政規律」一辺倒ではない。

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