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新・mespesadoさん講義(146)「経済学」御破算宣言 [mespesado理論]

mespesadoさんの真骨頂です。丹念に丹念に読んで理解してください。そうすれば、結びの文、《従来の経済学は、その根本から作り変える必要があり、高橋さんのように従来の経済学に固執して、それを前提にしていくら数式を使って厳密な計量経済学の理論を作っても、砂上の楼閣。実学としては全く意味は無いのです。》は自ずと納得できるはずです。そしてプーチンが、これからの世界をどのように構想しているかもくっきり見えてくるはずです。

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928 名前:mespesado 2022/05/03 (Tue) 15:49:00
 亀さんがブログで(ネガティブに)紹介しておられた高橋洋一さんの動画↓
第454回 ロシア経済の安定を訴えるプーチンがとったアホな政策
https://www.youtube.com/watch?v=VaTiUytXOqw

 通貨ルーブルを守るために為替のために金利を挙げたプーチンの政策は、いきなり借入金利が高騰することによって企業を苦しめ、その結果、国民生活を犠牲にする愚策である、という趣旨なのですが… まあ、高橋洋一氏はこれをもってプーチンがアホである証拠のように鬼の首を取ったようにプーチンを腐していますが、実際のところはどうなのでしょうか?
 まず、政策金利、つまり中央銀行から市中銀行への貸付利率を引き上げると、それに連動して市中銀行から企業への貸付利率も引き上げられますから、企業は銀行貸付による資金調達に伴う金利負担が増加するため、一般論としては、政策金利を引き上げると企業は負担が増えることになります。社債の金利や株式配当率も、これらの金利との間に裁定が働きますから、社債や株式による資金調達も同様に厳しくなります。ただし、これは、あくまで「自国で」資金を調達しようとした場合の話です。では、実際はロシアの企業はどのように資金を調達しているでしょうか?
 この問題について、

ロシア産業高度化に向けた課題と経済への影響
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/knowledge/publication/chitekishisan/2018/05/cs20180506.pdf?la=ja-JP&hash=ECCCD9B7F7D40C27E7F70329C1B087D1B1324806

という論文があるので、そこから引用してみましょう:

>  多くのロシア企業は、既に日欧の最新の製造設備への更新による技術
> 変化への対応などを試みているが、外貨で製造設備を調達したため、そ
> の外貨建て債券の返済に苦しんでいる。実際に、ウクライナ危機とルー
> ブル安の影響で設備投資のコスト負担(金利や為替)は2倍程度になっ
> ている。

 つまり、外貨建ての債務が大きいというのですが、その実額は、情報BOX:デフォルト目前のロシア対外債務、返済を巡る主な問題
https://jp.reuters.com/article/default-russia-idJPKCN2LD05F

によると、

> ロシア企業は頻繁に国際金融市場で資金調達し、合計1000億ドル近
> い外貨建て債を抱えるだけに、

とのことです。ということは、ロシアの企業にとっては、銀行による貸付金利もさることながら、外貨による資金調達が大きなウェイトを持っているとすれば、当然為替も同じくらい重大な役割を果たすことになります。そして、この為替に影響を与える重要な要素の一つが金利政策です。そして、外貨による資金調達の場合、借りた後の為替でルーブル安になるのは困る。なぜならロシアでは国内販売が中心でしょうから収益は当然ルーブルが主体となり、この収益を為替で外貨に交換して返さなくてはいけないからです。そして、為替がルーブル安になるのを防ぐには、金利を引き上げなければならない。でないと投資家にとってのルーブル債の魅力が無くなるからです(これは低金利維持により円安になっている理屈と同じですね)。つまり、日本企業のように、国内での資金調達が主体なら金利は低い方がよいに決まっていますが、ロシアのように外貨による資金調達が大きなウェイトを占めていると、国内での資金調達は金利が低い方がよいけれども、外貨による資金調達では逆に金利が高い方がよいので、日本とは事情が全く異なるわけです。
 では、プーチンの経済政策は正しいのかどうか?
 答を求める前に、もう一つ考えておかなければならないポイントがあります。為替のルーブル安を防ぐには、もちろん金利を引き上げることで「一時的には」目的を達成することができるでしょう。それは投資家に対して「ルーブルに投資すれば金利が高いゾ」という「エサ」になるからです。でも、もし将来ルーブルの価値が紙くずになるかもしれないとしたら、いくら金利が高くても買う人はいなくなる。そこで、ルーブル安を「安定的に」防ぐには、単に金利を引き上げるだけではなく、実際にルーブルの価値が無くならないことを保証する必要がある。それが「ルーブルの現物(資源)へのペッグ」です。実際、ロシアは欧州諸国に必須の天然ガスの供給に対する支払をルーブルに限定することによってルーブルの価値を維持しようとした。そしてそれは為替の急回復を見る限り成功したわけです。このようにして為替を安定することに成功すれば、最早金利を無理して高止まりさせておく必要は無い。言ってみれば、金利にの引き上げは「対症療法」、対するルーブルの現物ペッグは「根本療法」ということになるわけです。このようにして現物ペッグでルーブルを根本治療してしまえば、資金の国内調達にとって害でしかない金利引き上げという対症療法はやめることができ、実際にロシアは一時の20%というとんでもなく高い金利を引き下げる方向に舵を切り、今日に至っているわけです。
 以上のようなロシアの経済政策の流れを見る限り、プーチンは、決して高橋洋一氏が主張するような「愚か者」なんかではなく、しっかり自国企業の実態把握の上に乗っかって経済のセオリーどおりの対策をすることに成功した優れもの、と私は考えざるを得ません。


929:亀さん:2022/05/03 (Tue) 17:15:19
https://bbs6.fc2.com//bbs/img/_409100/409098/full/409098_1651565719.jpg    >>928

mespesadoさん、拙稿をお読みいただき有り難うございました。高橋洋一氏に関しては、たとえば及川幸久氏の↑動画↑などで、自分なりにプーチンの経済戦術が分かっていたので、、「高橋氏、変なこと言っているな」くらいに思っていましたが、今回のmespesadoさんの解説で、明瞭かつ一層クリアになりました。感謝します。
2022.5.1【ドイツ】ショルツ首相のジレンマ:バイデンのロシア制裁に従えば、安価なロシア産ガスなしでドイツ経済は大打撃!【及川幸久−BREAKING−】
https://www.youtube.com/watch?v=47hedYPGxas&t=625s
 ・・・・・・・ 
ところで、ぺっぴりごしさん紹介の記事を読み、それに関連して明日あたり、ブログ記事にしてアップする予定です。
https://ameblo.jp/yamatokokoro500/entry-12740709756.html

亀さん@人生は冥土までの暇潰し


930:mespesado :2022/05/03 (Tue) 23:18:23
>>929
 高橋さんは、プーチンの経済政策の中で最も重要だと思われる、天然ガスのルーブル決済の強要による「ルーブルの現物ペッグ」というアイデアで自国通貨の価値暴落を防いだという業績を全く無視して、金利を引き上げたことだけをもって愚者扱いし、反対に円安にもかかわらず国債購入を続けて低金利を維持した日本銀行をべた褒めしています。
 しかし、この前半だけでなく、実は後半の「金利の上げ下げで景気をコントロールできる」という理論自体が既に古臭く、日本などでは既に正しく無くなっていることに気付いていない。政策金利を上下して景気がコントロールできるためには、市中銀行の企業貸付金利の上下によって企業の借入額が増減する、すなわち「貸付金利が下がれば企業がそれに比例してカネを借りてくれる」ことが大前提になります。ところが、日本のように「生活必需家電が国民に行き渡り、しかも企業の内部留保が増えた」国では、この前提がそもそも成り立たない。つまり、日本のような「企業にオカネを借りるインセンティブが無い」国では金利をいくら下げても企業はオカネを借りないので信用創造が増えず、従って景気は善くならないわけです(ロシアでは今でもこの理論は成り立っているとは思いますが)。なので、日銀はこの理論どおりのことをやっているからエライ!ということにも当然ならず、日銀がいくら政策金利の低金利維持や国債買い入れのような金融緩和をやってもやらなくても、そもそも資金需要が無いのですから、市中金利は米国のように上昇するはずがありません。つまり、従来の経済学は、その根本から作り変える必要があり、高橋さんのように従来の経済学に固執して、それを前提にしていくら数式を使って厳密な計量経済学の理論を作っても、砂上の楼閣。実学としては全く意味は無いのです。

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