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mespesadoさん講義(139)貨幣についての本源的議論 [mespesado理論]

素浪人さんの問題提示にmespesadoさんが答えます。本源的な議論でいずれも「目からウロコ」を体験させられます。

①政府が1兆円硬貨を発行してそれを日銀券と交換すれば、国債発行より簡単なのでは?→実際のオカネの造幣の方法それ自体よりも、貨幣の仕組みをいかに国民が理解しているのか、という方が大切なのです。私が「通貨発行権」という見かけ上の「権利」よりも、国民による貨幣の仕組みの理解そのものと直結する「通貨主権」の方が大事だと力説したのは、まさにこれが理由です。》

②「会計」が必要なそもそもの理由→自分の責任の及ばない第三者のせいで財を失って生活できなくなることを防ぐことが目的》《破綻を未然に防ぐために財務諸表を作ることを強制することによって、現時点での破産の可能性が外部からわかるようにしたものが会計の制度》《会計という制度が適用されるのは企業や自治体のような通貨主権を持たず、従って破綻のリスクが存在する、互いに責任を共有しない人々からなる集団に限られます》《通貨主権を持つ国の財政に破綻はありえない(もちろん外貨建ての借金があれば話は別)ので、企業のような複式簿記を作る必要はそもそも無い》

③菅氏のキャッチフレーズ「自助、公助、共助」に対して、反緊縮論者から批判があるが、→《菅さんの一見すると昭和のセピア色に脱色したような古臭~い考え方は、十分考慮するに値する意見》

④国の会計でも貸借対照表があれば不正が防げるのでは?→国の会計に必要なのは、「財政赤字をいくらに設定すればよいかを算定するのに必要な項目」》。というのは、正しい貨幣理論では、デフレにならないだけの貨幣を発行する必要がある。その額は「①民間貯蓄増加額」と「②経済活動規模増加量」》の合計額。この額を算定するには財務省内に「主計局」、「主税局」と並ぶ「主幣局」のようなものを設置する必要がある。

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869:素浪人 :2020/09/14 (Mon) 23:59:49
861
日本国政府が発行するお金は硬貨ですね。
ですから、硬貨を発行して日本銀行券と交換すればいいという考えはダメなんでしょうか?

通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律上では、補助通貨となっていますが、
硬貨は通貨ですね。

通貨を日本国政府(および日銀)は発行できるけど、それ以外の法人・個人は発行できないから
会計の考えも異なるという考えはいかがでしょうか?

会計の前提条件が違うから、国と個人や企業とは「借金」の考えが異なるというのはどうでしょうか?

875:mespesado :2020/09/15 (Tue) 12:30:00
>>869
 素浪人さん、はじめまして(かな?)
 具体的なご質問ありがとうございます。

> 硬貨を発行して日本銀行券と交換すればいいという考えはダメなんでし
> ょうか?

 そういう考え方も確かにあります。実際、昔飯山一郎氏の弟子を自称していた「がけっぷち社長」という人が、政府が100兆円玉を発行して、これを日銀に持って行って日銀券と「両替」すれば政府は100兆円の日銀券を手に入れることができる、という話を(もちろん半分冗談交じりに)していました。もちろんそれもアリですが、今の法律では具体的に何円玉を発行することが許されるのかが限定列挙されているので、100兆円玉を発行するには法律改正が要ります。さすがにこのままの「法案」で議員立法しても、国民には「ふざけているのか」としか思われず、実現はムツカシイのではないでしょうか。ちなみに法律改正ナシで500円玉を2000億枚発行すれば、100兆円の財源は確かに確保できますが、そんなことをしても、貨幣の正しい理解をしていない大半の国会議員と国民は「その財源はどこから調達したんだ」などと政府を追及してスキャンダルにされてしまうでしょう。つまり、実際のオカネの造幣の方法それ自体よりも、貨幣の仕組みをいかに国民が理解しているのか、という方が大切なのです。私が「通貨発行権」という見かけ上の「権利」よりも、国民による貨幣の仕組みの理解そのものと直結する「通貨主権」の方が大事だと力説したのは、まさにこれが理由です。

> 会計の考えも異なるという考えはいかがでしょうか?

 おっしゃるとおりです。そもそも「会計」というのがなぜ存在するのか、というそもそも論を考えてみてください。
 企業には「企業会計」というものがあり、複式簿記で「損益計算書」という特定の期間内のオカネや資産の入りと出を管理する財務表と、「貸借対照表」という特定時点における資産と負債がいくらずつ存在するかを表示したものの2つの財務表を作成することが義務付けられています。
 これに対して個々の家計の場合、もちろん自主的に家計簿をつける人はいますが、個人の家計の場合は「複式簿記」はおろか、「単式簿記」すら作成することは義務付けられていません。これは何故でしょうか。
 それは、そもそも会計を作ることが根本的な目的ではなく、人々が、自分の責任の及ばない第三者のせいで財を失って生活できなくなることを防ぐことが目的だからです。個人の家計が破産したとことで、被害を被るのは自分が責任を持つ自分の家族だけで済みますが、企業になると、ステークホルダー等他人を巻き込み、破綻した場合の被害の範囲が大きすぎるので、破綻を未然に防ぐために財務諸表を作ることを強制することによって、現時点での破産の可能性が外部からわかるようにしたものが会計の制度です。なので、会計という制度が適用されるのは企業や自治体のような通貨主権を持たず、従って破綻のリスクが存在する、互いに責任を共有しない人々からなる集団に限られます。一方、日本銀行も、しょせん「通貨発行権」はあっても「通貨主権」を持たない一企業に過ぎませんから、会計を作る義務があります。しかし、通貨主権を持つ政府だけは違います。一応納税者である国民のために、歳入と歳出の管理をして公開する必要があるので、これだけは公開されていますが、これは、企業会計の「損益計算書」とは似て非なるものです。なぜなら、国の財政に「損」も「益」も無いからです。予算(実行)額と税収の差額としていくらの国債を発行(=国による通貨の追加発行)したかを記録しただけの単なる「記録」に過ぎません。この国債発行額は、国が破綻するかしないかなど直接は何の関係もありません(ただし財政赤字=国債発行額が少な過ぎて企業が維持できずつぶれて供給力が失われることにより国家が破綻する、という企業会計とは逆の悪影響はありますが)。財務省OBの高橋洋一氏などは国が複式簿記を採用していない、つまり「貸借対照表」が無いことを問題にして、在職中は国の財政に対する貸借対照表を作って、ALM管理(Asset Liability Management)をしたことを誇らしげに語っていますが、そもそも通貨主権を持つ国の財政に破綻はありえない(もちろん外貨建ての借金があれば話は別)ので、企業のような複式簿記を作る必要はそもそも無く、これはナンセンスな自己満足の押し付けだったわけです。事実、他の財官僚たちは相当迷惑がっていたらしいですw(高橋氏本人談)。
 ですから、国民すべてが会計の詳しい知識を持つ必要があるとまでは思いませんが、会計というものがそもそも何のために存在するのか、というところは認識しておく方がいいと思います。

877:mespesado :2020/09/15 (Tue) 14:38:17
 反緊縮界隈から“優先順位が違うやろ(怒)”と批判の多い菅氏のキャッチフレーズ「自助、公助、共助」ですが、この趣旨について書かれた記事がありました↓
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/suga-shin-sosai

> メルカリで高額転売されるなど、話題になっていた菅氏の著書「政治家
> の覚悟 官僚を動かせ」(文藝春秋、2012年)。官僚人事、マスコミ対策、
> 「自助・公助・共助」への思い、そして公文書……。いったい、そこに
> はどのような言葉が綴られていたのでしょうか。

として、その著書からの引用として次のように書かれています↓
> 民主党政権が子ども手当や年金施策を通じて「国からの直接給付を増や
> し、公助を大きくしようとして」いるとして、それを批判する文脈で用
> いられているもので、「自民党は自助自立を基本として制度をつくって
> きました」として、こう続けている。

>|自分のことは自分でする、それが難しいものについて隣近所や会社など
>|で支え合うのが「共助」です。そして、最後に国が責任をもって支える
>|のが「公助」という順番です。

>|いたずらに給付を拡大しては、国民の自立心は薄れ、国への依存心ばか
>|り大きくなってしまいます。(197ページ)

> そのうえで、「日本社会のすばらしさは、日本人の自立心であり、助け
> 合いの精神にあります」と指摘。民主党政権の考え方では「長い間かけ
> て培われてきた日本人の優れた特性を、根底から壊してしまう怖さを感
> じます」とまで言い切っている。

 これ、一見すると供給不足時代の古くさ~い考え方で、反緊縮派は一斉に反発して「それ見たことか。菅やめろ~」の大合唱が始まりそうですが、私は、これはある意味では実に正鵠を射た意見であると思うのです。
 今回の国民一律の10万円給付ですが、これはコロナという非常事態だからこそ素直に国民に受け入れられましたが、もしこれが毎月の恒常的な給付として継続した場合、どうなるでしょうか。
 これは、財政という観点では >>865 の山本太郎氏の街宣の中で解説されているように、「国債の発行上限は額で決まるのではなく、インフレ率で決まる」し、実際に毎月10万円全国民に給付し続けてもインフレ率は2%に到達することなく、3年目の1%台をピークにインフレ率はむしろ下降し、5年目以降はマイナスにすら落ち込む」という参議員のどこかの専門組織によるシミュレーション結果があるそうで、私もそのとおりだろうと思います。
 ですが、ことの本質は実はそこではない。日本人の性格からして、「タダで」国から給付を受けることに対して、今のままでは絶対に「後ろめたさ」を感じる人がほとんどでしょう。そして、そんな中で、貨幣の正しい理解をしていないにもかかわらず「平気で受け取る人」の中には金銭感覚を失って「自堕落になる」人が絶対にある一定割合で発生すると思います。
 つまり、反緊縮論者の主張することは貨幣論や正しい経済理論の観点から見れば全く正しいのだけれど、しかしそれは、日本人のメンタリティーをきちんと読み込んでいないという点でバランスが悪い。まずは国民の大半が、貨幣の正しい認識を持ち、家計簿脳が間違った考えであることを真に理解したうえでなければ、仮に反緊縮革命政権が政府を乗っ取って突然BIを支給し出すということで制度としてBIを発足させることに成功したとしても、国民の間に正しい認識が定着していない以上、何もないのに国からタダで給付を受けることに対する国民のモヤモヤ感は払拭できず、その結果社会が不安定化するだけだ、と思います。
 そういう深~い意味で、菅さんの一見すると昭和のセピア色に脱色したような古臭~い考え方は、十分考慮するに値する意見だと思うのです。
879:mespesado :2020/09/15 (Tue) 15:00:53
>>877
 あ、だからといって私がBIなどの財政出動に反対しているわけではなく、逆で、当然に賛成です。ただ、国民の大多数が貨幣の正しい仕組みを理解していない間はそういう直接給付みたいなやり方は「国民のメンタリティーの崩壊」という「副作用」が大きいので、国民の正しい貨幣認識を奨励する運動も同時進行させろ、というのが私の言いたい趣旨です。ただ、正しい貨幣観が定着する前に供給力が破壊されて国が亡ぶのではないか、という不安があるのは確かなので、まずは直接給付よりは日本人のメンタリティーに抵触しないような、例えばインフラ整備に対する建設国債の大盤振る舞いとか、中国の脅威を口実とした科学研究・文教・国防予算を大盤振る舞いするとかから始める方がスジがいいと思います。あと、直接給付のかわりに同じ効果がありながら「濡れ手に粟」感の少ない「マイナスの消費税」もいいですね。

882:素浪人 :2020/09/15 (Tue) 19:54:07
mespesadoさん 回答ありがとうございます。

>>875
法律改正ナシで500円玉を2000億枚発行すれば、100兆円の財源は確かに確保できますが、そんなことをしても、貨幣の正しい理解をしていない大半の国会議員と国民は「その財源はどこから調達したんだ」
その財源に500円玉を200億枚発行して~その財源は?~500円玉を20億枚発行して~
という問答なので一定額に収束するはずなので。

あと、国の会計の場合損益はないのですが、かといって複式簿記を採用しない理由にならないと思います。
その理由として、国のお金は公金ということで不正防止のためから複式簿記が必要かと思います。

>>879
 安全のための投資としての治水事業などや、学びなおしのための教育投資などが該当しますね
あと、「マイナスの消費税」、これって還元率の高いキャッシュレス消費者還元事業の言いかえでしょうか?
ある意味小売りの中小企業にとっては有益な政策になるかと思います。

884:mespesado :2020/09/15 (Tue) 20:33:41
>>882
> 国のお金は公金ということで不正防止のためから複式簿記が必要かと思
> います。

 貸借対照表が必要だ、ということでしょうか。
 その場合、国の資本を計算する必要がありますが、それを担当しているのは財務省の理財局ということになりますね。ただ、個々の国有財産の売買の記録は、個別の国有資産を「適正価格で売却したか」、つまり購入者間の公平性を開示により確認できるようにするためにしているだけなので、そうした国有資産の評価額を積み上げたものには何の意味もなく、これを勝手に国の資産と名付けたところで「だから何?」という話です。
 高橋洋一さんは、国の負債の半分以上は資産でキャンセルされる、だから実質的な負債は大した額ではないんだ、などと主張しておられるようですが、財務省はこの「複式簿記」を主張する高橋さんの議論に便乗して「国有財産はすべてがいざというとき売却できるわけではないから負債とキャンセルすることができるわけではない」などと反論して緊縮財政を正当化しています。しかし通貨主権を持つ日本政府は、そもそもその負債(=国債という貯金専用通貨)を債権者に返す必要なんかない(確かに国債の保有者で、償還日に現金が必要な人には日銀券と交換するが、これは「借金の返済」などではなく、単に「貯金専用貨幣」である国債を「決済専用貨幣」である日銀券に両替しただけのこと)ので、負債に見合った資産があることを保証する必要なんかありません。一般の私企業の場合は破綻することがあるので、その場合、負債の債権者は企業の資産を売却することによってその債権を回収する必要があるからこそ貸借対照表が必要なんで、そもそも「破綻」自体があり得ない日本政府は「債権者に売却して返すための資産」自体が不要なので、貸借対照表を作る必要がそもそも無いわけです。

> 「マイナスの消費税」、これって還元率の高いキャッシュレス消費者還
> 元事業の言いかえでしょうか?

 今日のように、企業が借金しなくなると、信用創造による貨幣の増加が無くなるので、政府がPBゼロを守ると、市場の貨幣が民間貯蓄の分だけどんどん減少します。企業は儲けの範囲内でしか給料は出せないし、一方の消費者は給料の範囲でしか買い物ができません。なので、消費者の給料も企業の儲けも、国が何もせず放置していたら、決済でやり取り可能な貨幣はどんどん収縮していってしまいます。これを防ぐには、商品の売買が生じるたびに、消費者が支払った金額以上に販売者が受け取るようにすれば、商品の売買が起きるたびに貨幣が増えていくので、貨幣量が収縮していく一方なのを防ぐことができます。しかも国民は、何かモノやサービスを販売することに成功したときにのみ国から「補助金」を貰えるわけですから、日本人が一番嫌う「濡れ手に粟」ではない形で国からオカネを貰うことになるので、日本人のメンタリティーを破壊するリスクも最小になります。

886:素浪人 :2020/09/15 (Tue) 21:06:19
>>884
B/Sに関しては数値だけの問題かと思います。
P/Lやキャッシュフローに応じた数字があればいいと思います。
ただ単式だと、不正がしやすいという観点から複式簿記を導入したほうが良いという理由です。

>>商品の売買が生じるたびに、消費者が支払った金額以上に販売者が受け取るようにする
そういうことですか。
インボイス制度が普及すれば、納付した消費税など税金の一部を補助金として戻しやすくできると思います。
その際、還元率を100%以上にする手もありますね。

888 名前:mespesado 2020/09/15 (Tue) 23:09:52
>>886
 確かに損益計算書の項目には発行社債の利払い費とか固定資産税とか設備投資後の減価償却費のように、資産や負債の全貌が明確にされていないとその金額が正しいかどうかが見えない項目が多いので、貸借対照表をまず作ってからでないと、毎期の損益計算書が作れない、ということから複式簿記の必要性というのはわかるのですが、国の会計の場合、まあ確かに国債の利払い費のようなものは発行国債残高のようなものはしっかり管理する必要はあるものの、すべての資産や負債について積み上げて貸借対照表を作る必要があるかと言えば、そうでもない。必要に応じて必要な項目だけ管理すればよいと思うのです。
 むしろ、国の会計の場合、もっと必要なものがあると思うのですね。それは何かというと、以前も書いたことがありますが、「財政赤字をいくらに設定すればよいかを算定するのに必要な項目」です。今みたいに家計と同一視した誤った考え方だと財政赤字はゼロにするのが当たり前になるので、「はあ?財政赤字をいくらにするべきか?あんた何言ってんの?」となってしまいますが、正しい貨幣の理論によれば、「適切な財政赤字額」はゼロではなく、「①民間貯蓄増加額」と「②経済活動規模増加量」を合わせた分だけ貨幣の量(=MS)を増やさなければデフレになってしまう。ですからこの毎年の財政赤字の適正額は、ゼロなどという単純な話ではなく、①と②の合計額としなければならない。ですから、財務省は、この①と②を計算する必要があるのだけれど、①はともかく、②を計算するのはいろんな要素を用いていろんな仮定を置いて計算しなければならないので、統計局の片手間仕事でできるようなシロモノではない。やはり財務省に内局を置いて、そこで財務省の責任において、その額を定めなければならない。つまり複式簿記なんかではなく、①と②を計算する内部部局を作る必要がある。まあ「主計局」、「主税局」というのがあることに合わせると、さしずめ「主幣局」とでも名付けるんでしょうかね、まあ名前は何でもいいけど、そういう組織を新たに作って、その階級も主計局や主税局よりも上に持ってくる。こんな風に財務省を組織変更してしまえば、彼らは緊縮財政を継続する大義名分を失い、しかも新たな部局を作ることによって彼らの権限も増えこそすれ減ることは無いんだから、財務官僚としても反対すべき理由がない。こういう案を議員立法として誰かが出せば一挙に風向きが変わると思うんですがどうですかね。例えば西田議員とかに、このアイデアを直接持ち掛けたらいいのかな?どうでしょうね?

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