実は、『電光石火』の基調となっているのが、若い世代への期待です。まず、2014年の沖縄再訪の際、那覇空港から辺野古に向かうヘリコプターでの小山内官房長官と大田秘書官の会話、《「この国をあるべき姿に戻したいんだよな」小山内が大田に向かってポツリと言った。「官房長官がお考えになるあるべき姿というのはどのような形なのでしょうか」「若者が逞しく育っていくエネルギーを持つような国にしなければならない」「非常に抽象的な感じがしますが‥‥」大田は正直に言った。これに対して小山内が厳しい顔つきになって語り始めた。「現在の日本はとてつもない国難にあると言っていいと思う。東日本大震災からの復興は最優先課題であるにもかかわらず、決して順調とはいえない。さらに竹島、尖閣諸島など、わが国の領土が脅かされている。これに加え、長引くデフレ・円高によって経済は低迷し、若い人たちは未来に夢や希望を見いだせないでいる」大田は黙って聞いていた。「危機にある日本を立て直し、子供からお年寄りまで安心して暮らせる、強い日本、豊かな日本をつくっていかなければならない」》(258-259p)さらにエピローグでは、先に引用した「今でも、党の長老や派閥や有力議員を向こうに回しても、勇気を持って主張し、必ず実現させる行動力は素晴らしいと思います。」》(290p)につづくのが次の会話。《大田の言葉に小山内は照れくさそうな顔をして言った。「そうは言っても、一政治家の意思に基づいて、国の形を変えることなどはできないだろう」「しかし、誰かが声を上げることは大事なことではないかと思います。そして、言葉だけでなく行動に移すことが大事だと思います。」「明治維新の原動力となったのは、二十代、三十代の若者だったことを、日本人は今一度思い起こす必要があると思っている」「明治維新ですか‥‥」「あらゆる分野で若い力が台頭してこなければならない。草食系だなんだと言っている場合じゃあない。学を積むものは積極的に海外に出て見聞を広め、日本のあり方を海外から見てこなければならない」》(291p)

mespesadoさんは、菅さんのマキャベリズム性の底から本音を読み解いていきます。そして結論、最後は今の既得権受益者の守護者になるだろう、というのは、大変残念だけどそのとおりだろうと思います。若い世代の台頭、つまり安藤さんみたいな政治家が要職を務めるようになれば、冒頭に書かれているように「国民世論は緊縮財政の間違い、消費税増税の弊害に気付」き始めているのだから、状況は反転する、ということなんでしょう。これも、国民が若手の先入観を持たない政治家の背中をもっと積極的に押さなければいけない、という意味で有権者の覚醒が今ほど重要になっている時代も無い、ということだと思います。》菅さんの根っこの思いに通じてゆくような気がしました。持ち場持ち場で声をあげつづけてゆかねばならないのだと思います。私には、菅さんも同じ方向を向いているように思えます。

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