井筒俊彦著『イスラーム哲学の原像』について。「神秘主義」のその突き抜けた先を見せてくれている。


「神秘主義」とは何か。『神秘哲学』(井筒俊彦 1949)冒頭の言葉、神秘主義的体験は個人的人間の意識現象ではなく、知性の極限に於いて知性が知性自らをも越えた絶空のうちに、忽然として顕現する絶対的超越者の自覚なのである。≫を、若松英輔氏は神秘体験とは人間が神を見ることではない、神が神を見ること》と言い換えた。神秘主義と神秘道』要するに、自らの「神性」体験。


「神秘」の言葉からは「秘密」を連想させ、特別な近づきがたさを思わせる。しかしこの書は「神秘主義」を近づきうるものにしてくれた上で、さらにその先、だれにでも容易にわがものとし得る「神秘体験」の可能性を示唆してくれている。そこではもはや「秘密」でもなんでもない。