平岳謙先生が90歳でちょっと体調を崩されてから、会員の鈴木岳啾さんと橋本櫻岳さんが1ヶ月交代で先生を務めてこられた。岳啾さんは南陽宮内岳鷹会発足当時からのオリジナルメンバーで、詩吟に取り組む本気度は並でなかった。先日の吟行で吟ずる歌のいくつかは岳啾さんが節付けした。私が吟ずる斎藤茂吉の「陸奥をふたわけざまに聳えたまふ・・・」もそのひとつで、微妙な節回しが難しい。しかしそれには岳啾さんなりのこだわりがあったようで、なんとかこなす中でその思いが伝わってきたようにも思えた。体調の悪化で岳啾さんの吟行参加は叶わなかった。そうこうしているうちの訃報だった。定番の「亡き人を(内柴御風)」のほかに、岳啾さん節調の「陸奥を・・・」を全員で吟じた。遺影を見つめて吟じていると、ついこの前までの岳啾さんがその声とともに眼前してこみあげるものがあった。いい送りをすることができた気がする。

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