昨日(17日)の山形新聞「ふるさとを詠うー山形の現代詩」。南陽の遠藤敦子さん(遅筆堂文庫副館長)が、雪国に住む人の心を見事に代弁してくれました。


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     覚悟

            遠藤敦子


 真っ白なクラフト紙で

 作ったような街なみが

 静かにひっそりと

 地下から湧き上がってくる

 昨夜までのざわついた景色が

 舞台の迫(せ)りのように入れ替わり

 一転 モノクロームの静寂を広げていく


 覚悟はできている

 冷たく長い時を連れてくることも

 喘ぐ声を

 風雪が容赦なく塞いでしまうことも

 全てを受け入れて

 ここにいるのだ


 もちろん ときには

 そんな街を

 ぺしゃんとつぶして

 峠を駆け上りたくなるときもあった

 しかし

 無数の針で肌を突き刺すような

 空っ風より

 外套に重く伸し掛かる

 湿った風のほうが

 ・・・嘘は無い


 クラフト紙の街並みは

 もはや

 堅固な覚悟で

 ぴくりとも動かない


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