《2001年の911テロ事件は、米諜報界のCIAが、当時とても親しかったサウジアラビア諜報機関の力も借りて、サウジ人らのエージェントたちに計画実行させていた可能性が高いことが、最近の米国の機密公文書の開示で明らかになった。これらのことは以前から指摘されていたが、今回はグアンタナモ監獄にとらわれている人々の裁判記録の機密解除というかたちで示された。この記録では、実行犯のうちの主犯格だった2人のサウジ人(Nawaf al-Hazmi と Khalid al-Mihdhar)が1年半かけてテロを計画して実行犯メンバーを募集する過程について、CIAがずっと行動を監視していたことが明らかになった。》《CIAとサウジの諜報界が配下の要員たちにテロを計画させているうちに、FBIがこの事態に気づいて捜査を開始した。外国の要員絡みの話なのでCIAに何度も問い合わせたが、CIAは「知らない」の一点張りで、FBIに捜査をさせなかった。そのうちにテロ事件が発生した。》《当時のサウジの諜報機関はCIAの下請けにすぎなかった。サウジ側は、CIAが自作自演の大規模テロをやらかすとは思わず、何かのおとり捜査に協力していると思っていたかも知れない。全容を知っていたのはCIAだけだ。22年後の今や、サウジの方が米国を見限って中露の側に転向し、911の話はどうでも良くなった。911は、米国が世界中で幻影的なテロ退治の戦争を引き起こす体制を作り出し、米国は各地で大失敗の戦争をやらかし続けて自滅していった。ウクライナ戦争がとどめとなった。》
《米諜報界は、米国が覇権国になった終戦前後に創設されて以来、建前的には米国の覇権を守るための集団だ。だが当初から諜報界は、米国が国連を通じて多極型の体制を実践していこうとする多極派(ロックフェラー系)と、冷戦を起こして国連の多極型体制を破壊して米英単独覇権体制に塗り替える単独覇権派(英国系)とが内部分裂して暗闘が続いてきた。冷戦終結は多極派の勝利だったが、冷戦後に対米自立するはずだったEUは米傀儡のままで、中露も弱かったので多極化は起こらず、諜報界の自作自演だった911テロ事件によって世界は再び「アルカイダとの新冷戦」の構図を持つ単独覇権体制に戻るかに見えた。しかし、米諜報界と大統領府に入り込んだ隠れ多極派によって、イラク戦争からウクライナ戦争までの自滅策が次々と打たれ、米国がへこんで中露サウジなど非米側が台頭する多極化が誘発された。》
《欧日など米同盟諸国はこれまで米諜報界の多極主義的な傾向に見てみぬふりをしてきた。米覇権の崩壊が加速しているのに、同盟諸国はいまだに見てみぬふりだ。フランスのマクロン大統領が訪中して非米側に転向する感じを見せたが、これも米国側のマスコミではきちんと報道されず重要性が無視されている(フランスのいつもの裏切り、みたいな歪曲話になっている)。米諜報界の多極派は、見てみぬふりの同盟諸国を困らせてやろうと最近、米国が同盟諸国をスパイしていることを示す国防総省の機密文書の束を意図的に漏洩させ、騒動を作り出している。》《同盟諸国の政府はいずれも「そんな事実はない」と強く否定し、漏洩したとされる機密文書自体が偽物であると言ったりしている。米大統領府自身が、漏洩文書は本物だと認めてしまったが、同盟諸国はそれを無視している。同盟諸国は、米単独覇権体制のもとで長く安住してきたので、まだまだそこから出たくない。米覇権はこれまで何度か崩壊しかけた(ベトナム戦後など)が、その後蘇生しており、今回もまた延命するかも知れない、と同盟諸国は期待している。だが今回は違う。中露がどんどん多極型の新覇権体制を作り、米覇権は押しのけられて領域が狭まっている。今回の多極化は不可逆だろう。だからマクロンは訪中し、対米自立して中国と組むことにした。しかし、日本を含む多くの同盟国では、まだこの事態が理解されていない。》