《これからトランプが加速する米中分離は、この体制を破壊して大転換する。トランプの米中分離策で、欧米企業は中国から出て行くことを義務づけられる。中国市場は、中国企業の製品の天下になる。すでに書いたように、各国が人的鎖国を強いられているコロナ危機の状況下で、中国市場は、ダントツに世界最大の単一市場である。その巨大市場が、中国製品・中国ブランドの天下になる。これまでの中国市場では、米欧日のブランドがもてはやされて高値で売れ、米欧日の企業が中国市場で大儲けしていた。米欧日の製品の製造を下請けしていたのは中国側だったが、すでに書いたように、下請けである中国側の利幅は限られていた。中国市場は、米欧日を儲けさせるために存在していた。これは、産業革命時に英国の資本家が夢想したことの具現化であり、英米の謀略だったともいえる。


だが今後の米中分離によって、中国市場での利益のすべては中国人のふところに入る。ブランド力で大儲けしていた米欧日の企業は、トランプの策略(米中分離とコロナ危機)によって、中国から退却させられていく。中国企業は下請けから脱却し、高いブランド製品の製造主になり、外国人にとられていた儲けを初めて中国人自身のものにしていく。中国人が、中国市場の主人になる。トウ小平は墓の下でほくそ笑んでいる。これは、アヘン戦争以来の中国の夢の実現でもある。それを実現してくれるのが、トランプの米中分離策である。トランプは、中国にとってニクソン以上の「恩人」になる。中国をボロクソに言って敵視しているトランプが、である。これが、隠れ多極主義の痛快な真髄である。》

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