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アフリカのクーデター頻発の意味 [田中宇]

「多極化論」が冴えています。

中南米の人々の多くは、米国が意図的に中南米を潰し続けていると思っている。この感覚は、おそらく事実に近い。米国は中南米を偶発的にでなく、意図的に潰してきた。となれば米国は、似たような策略をやっているアフリカも、意図的に潰している可能性が高い。西アフリカでクーデターが頻発して政治経済の不安定が延々と続いている一因は、米軍が西アフリカ諸国の将校たちを訓練してクーデターのやり方を教えているから、ということになる。》

英国による世界分割は、英覇権上層部の「帝国と資本の暗闘」の一部でもあった。産業革命によって成立した英国覇権(大英帝国)は、英国による世界支配を恒久化しようとする「帝国」と、産業革命(工業化)と大量消費を世界中に拡大して世界経済を発展させようとする「資本」という2つの方向性の間の協業で成り立っていた。「資本」は、大量消費してくれる安定した大きな市場を各大陸に作りたがった。大きな新興国が安価な労働力で大量生産し、その賃金で貧困層が所得を増やして中産階級になって消費が拡大し、経済大国になる。その過程で資本家が儲ける。資本の側は、中南米アフリカ中東インド中国など各大陸に経済大国が新興してくることを望み、各地の民族主義を奨励・扇動し、世界中が植民地から独立する民族自決が理想なんだと当時のマスコミ権威筋に喧伝させた。第一次大戦後の国際連盟創設時には、すべての植民地が独立する方向性が定まった。/だが、植民地が独立して建国した新興大国は、英国の世界覇権の支配体制を壊そうとする。英国内の「帝国」の側は、「資本」の側による新興大国づくりの策略(謀略)を隠然と阻止した。覇権運営の帝国側は、資本側との政治力学上、諸大陸の植民地の独立自体は容認したが、その前段階で他の列強を誘ってアフリカや中東を分割するなど植民地を細切れにしておき、英国の世界支配を凌駕・破壊しかねない大きな新興国の出現を阻止した。帝国側は、資本側の希望をかなえてやるふりをして破壊した。世界は、すべての植民地が独立したものの、200近い細切れの国家群になった。

米国はクーデター誘発などでアフリカを不安定化し続けているが、ロシアや中国は逆に、アフリカを安定させようとしている。中国はアフリカ諸国に資金を貸し、交通インフラ整備や資源開発を手がけている。米国側のマスコミ権威筋は、中国がアフリカを借金漬けにしていると非難しており、建設したがうまく機能していない案件もあるが、全体として、中国はアフリカを発展させている。中国より米欧の銀行の方がアフリカへの融資総額が多く、借金漬けにしている。近年はロシアと中国が協力してアフリカの発展を助けている。これまでの100年間、米英がアフリカを混乱と貧困の中に置き続けてきたのと対照的だ。アフリカ諸国は、アフリカ連合を作って国際紛争や内戦など政治経済の問題を解決しようとしているが、そこでも中露がアフリカに協力している。米国(や英欧)がアフリカを混乱・不安定化する策をやるほど、アフリカ諸国は「米欧より中露の方がましだ」と考え、中露に頼るようになり、米国から中露への覇権移転を望むようになる。》

これらの全体から考えて、米国の覇権運営の失敗は意図的なものであり、米軍が西アフリカでクーデターを繰り返し誘発していることも、アフリカ諸国が米国に見切りをつけて中露に頼るように誘導する隠れ多極主義の策略でないかと思われる。覇権運営は失敗するとコスト高なので、とくに中国は従来、米国覇権(の一部)を自国が代替することに消極的だったが、アフリカ中南米や中東などの諸国から、ぜひ覇権をとってほしいと頼まれ続けているので、もはや「いやです」と言いにくい。習近平は先日の党大会で、米国の覇権を中国がとっていく方向を宣言した。米軍が「アフリカ諸国の軍幹部の動向なんて見ていません」とうそぶいている間に、静かに多極化が進んでいる。》

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