SSブログ

世界を多極化したがる米国 [田中宇]

逆説的な見出し。しかし読めば納得。田中氏の根っこの「多極化論」、重要論考です。

米英覇権主義と多極主義の相克は、第2次大戦で英国がドイツに負けそうになっていた時に、当時中立国だった米国が英国に、覇権を譲渡してくれるなら大戦に参戦して勝たせてやると持ちかけた時に始まった。19世紀初頭のナポレオン戦争から2度の大戦まで、英国が世界の覇権を握っていた(列強体制を活用し、他の列強諸国も頑張らせて覇権を効率運用していた)。米国(を動かしていたNYの資本家)は、第一次大戦前から、英国や列強が世界の大半の地域を植民地化して、それらの地域の経済発展を阻害している帝国主義体制が不満で、列強による中国の分割を阻止した。植民地を独立させて発展への道を解放した方が世界経済が長く繁栄する(資本家が儲かる)。そのため米国は、英国から覇権を譲り受け、新たに国際連合を作ってそこに覇権をもたせ(覇権の機関化)、国連の最上層部に多極型のP5を置き、国連が植民地の独立や戦争防止策を担当する新世界秩序を作ることを決め、英国からの覇権譲渡のために世界大戦に参戦した。米英は戦勝し、ヤルタ会談やカイロ会談が開かれて多極型のP5が構成されて国連が作られた。世界はいったん多極化した。》

実際の歴史を見ると、中国やソ連との対立を解消して冷戦体制を崩したのはニクソンとレーガンという共和党の政権だった。いずれも、表向きは反共主義や軍事費増強(軍産複合体との親密性)を維持しながら、実際に推進したのはニクソンの米中関係正常化や、レーガンの冷戦終結という、冷戦体制=米英覇権体制の破壊、米中正常化による中国の経済発展・台頭への誘導、東西ドイツ統合とEU国家統合への誘導(欧州を世界の極の一つに仕立てること)などの多極化策だった。共和党は、表向きの共産主義敵視や軍産との癒着の下に、多極化や、米英覇権体制(米国の覇権運営が英国に乗っ取られている状態)の破壊を目指す動きを秘めている。共和党は「隠れ多極主義」の政党といえる。国連(多極型世界組織)の創設や、キッシンジャーをニクソン政権に送り込んで米中正常化を推進した黒幕としてロックフェラー家が知られており、ロックフェラーは隠れ多極主義であると言えるが、彼らも共和党支持である。共和党の隠れ多極主義的な傾向はロックフェラー(などNY資本家群)に起因しているとも考えられる。》

米英覇権体制下で洗脳されてきた人々は「人類にとって最良なのは米英覇権体制だ。中露が台頭する多極型などうまくいくはずがない」と言うだろう。「米国が世界を自由に支配できる単独覇権体制を自ら破壊して、敵である中露に覇権を分散譲渡する多極化をやりたいはずがない」という考えも強い。そのような軽信者たちのために、米諜報界は、コロナ独裁体制や対露戦時体制を使い、米欧の社会状況をどんどん悪いものにしていっている。米国は、インフレ激化と貧富格差増大、犯罪増加、違法移民流入、2大政党支持者間の対立激化などで「住めない社会」に成り下がっている。ドイツなど欧州や英国も似たようなものだ。現時点で、おそらくドイツよりロシアの方が住みやすい状態だ。人類にとって最良なのは米欧でない。米英覇権体制は世界を悪化させている。そういう話にするために、多極派に牛耳られた諜報界が活躍してインフレや犯罪増加、とんでもリベラル政策のゴリ押しによる混乱増、コロナワクチンの永久連打、妄想に基づく自滅的な温暖化対策などを推進している。(日本はこっそり非米側なので、社会が自滅させられていない) 》

米英覇権体制は終戦時の開始から80年近く経っている。すでに米国の上層部も覇権維持派ばかりであり、多極派など表向きは皆無だ。しかし実際の覇権運営策の立案実行に際しては、多極化につながる未必の故意的な失策が連発され、この四半世紀、米国の覇権低下が続いてきた。表向き米英覇権派として振る舞っているが実は多極派という「逆スーパーマン」みたいなのが諜報界のあちこちにいるのだ。露中が送り込んだ二重スパイ、とも考えられるが、露中は米英に見破られない二重スパイを多数送り込めるほど巧妙な国々でない。多極派は、P5体制の国連を作ったころから続く米国の土着勢力と考えられる。 》

*   *   *   *   *

続きを読む


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:blog