「相争う世界観の対立」を読み解く [ロシア思想]
ジョン・コールマン『世界の黒い霧』(2017.3)の「第3章 狙われるロシア 悪魔化されるプーチン」と「第5章 ワンワールド政府のウクライナ介入は世界大戦の号砲」を読んだ。
・
《ウクライナに関しては、われわれは新しい時代に入った。相当な戦略地政学的紛争が起ころうとしている。しかしそれは事実上、アメリカとロシアによる金融地政学的戦争である。原油価格は崩壊した。通貨戦争もある。ルーブルの不自然な「不足」ー空売りーもある。これは金融地政学的な戦争だ。そして、そして、この金融地政学的戦争の結果として今われわれが目にしているものと言えば、何よりも先ず、これがロシアと中国との緊密な同盟をもたらしたということである。/ 中国は、ロシアが最初のドミノだということを理解している。ロシアが倒れれば次は中国だ。この二つの国家は、ともに欧米の金融システムに縛られない、これと対応する金融システムを作り上げるために動いている。/ しばらくは、国際秩序は国際連合と一連の国際法を中心に構築されていた。しかし欧米は、国際秩序を維持するために設計された制度としての国連を迂回して、代わりに経済制裁によって一部の国に圧力をかける傾向をどんどん強めている。今はドル基軸の金融システムであり、ドルの取引すべてをコントロールするという立場ゆえに、アメリカは外交と国連という古いツールを迂回して、自国の目的を追求することができている。/ しかしこのところ、こうした準備通貨の独占状態がアメリカの一方的なツールとなり、国連での多国間行動に取って替わる傾向が強まってきた。アメリカは、世界のあらゆる場所でのあらゆるドル建て取引について管轄権を主張している。そして、世界のビジネスと貿易取引は大半がドルで行われている。これは事実上の世界秩序である。国際秩序は、以前のような国連ではなく、アメリカ財務省と連邦準備制度銀行による支配が強まっているのである。》
この後、コールマンの言葉が続く。
《金融戦争、非対称戦争、第四世代戦争、宇宙戦争、情報戦争、核戦争、レーザー戦争、化学戦争、生物戦争ーーアメリカは伝統的な通常兵器の範囲を超えて、その武器庫を拡張してきた。目的はもちろん、ソヴィエト連邦が崩壊した1991年後の世界秩序を保ち、全面的な支配を維持することだ。モスクワを先頭とする多極的な世界秩序の出現は、継続的な支配をめざすワシントンの計画にとって、唯一最大の脅威となっている。/この二つの相争う世界観が最初に大規模にぶつかるのは、ウクライナ東部でのことになるだろう。》そして《神よ、われらを救い給え。》の言葉でこの章を閉じる。
・
さらにその前に、プーチン顧問セルゲイ・グラジェフの論文が紹介されている。「ロシアvsウクライナ」を大きな時代の変化の中で理解することができる内容なので下に全文写した。以下は大意。
・
いま世界は、新たなシステムに向かって動いている。その新たなシステムは、《本質的に人道的なもので、それゆえ戦争を回避することができる。なぜなら、この波長での最大の牽引役は、(バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、認知テクノロジーによって基礎づけられた)人道的なテクノロジーだからだ。》という。これこそがプーチンの狙いであり、それはいずれ《ユーラシア全体の全面的開発圏が生まれることになる。》
しかし、それは必然《アメリカの覇権への挑戦》を意味する。《自分たちの指導的地位を維持するために、アメリカはヨーロッパで戦争を始めようとしている。》《ウクライナ国民は、この戦争の絶好の武器であり、使い捨ての兵士となる。》そのためにアメリカは、《ソ連=ロシアを標的として、ウクライナのナチズムを育ててきた。》《ヨーロッパの政治家は、自分が何をしているかと疑問に思うことすらないままに、アメリカに追随した。彼らは、ナチズムを呼び起こして戦争を挑発することで自らを苦しめている。ロシアとウクライナが、アメリカの扇動する今回の戦争の犠牲者だということはすでに述べた。しかしその点ではヨーロッパも同様だ。この戦争がヨーロッパの高福祉をターゲットにしたものであり、ヨーロッパの不安定化を狙ったものだからである。アメリカは、ヨーロッパの資本と頭脳が引き続きアメリカに流入することを期待している。だからこそ、ヨーロッパ全土を戦場にしようとしているのだ。》そして最後をこう結ぶ。《私たちは、彼ら(ヨーロッパの政治家?)がウクライナ・ナチズムのなかに見ている、この歴史的な記憶を呼び覚まさなければならない。今キエフで権力を握っているのは、ステパーン・バンデラやロマン・スヘヴィチといったナチ協力者を信奉している連中なのだ。この真実を広げていくことで、ヨーロッパを戦争の脅威から救い出さなければならない。》
・
* * * * *