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人口動態統計の死亡増の原因を探る① [mespesado理論]

「人口動態統計の死亡増の原因を探るシリーズ」のスタートです。

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487 名前:mespesado 2022/11/05 (Sat) 12:24:34


>>478
 いよいよ2021年の人口動態統計の死亡増の原因を探るシリーズを開始したいと思います。
 この件については去年の今頃から年末にかけてと今年の5月に中途半端な分析結果をこの場で発表してきたところですが、はぐらめいさんが、10月27日のエントリーで、私の過去発言を取りまとめて下さっています↓
> 下記はこれまでの関連記事
> ・「新・mespesadoさん講義(107)落ち着け!」
>   https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2021-11-28-3
> ・「新・mespesadoさん講義(108)2021年超過死亡再考察」
>   https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2021-12-01
> ・「新・mespesadoさん講義(150)検証「超過死亡者数」」
>   https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2022-05-28

 いやあ、今改めて読み直すと、どうも結果が二転三転して恥ずかしい限りです。なので、ここで改めてきちんと1から解説し直すことにしたいと思います。図やグラフで見た方が直観的に分かり易いと思いますので、それらを多用したいと思いますが、まずは厚労省の「人口動態統計(速報版)から、2021年の対前年死亡者数対比グラフと、参考のために2020年の対前年、2019年の対前年グラフを冒頭に添付画像として貼り付けておきます。
 これらをご覧になれば一目瞭然、上から2番目(2020年)と3番目(2019年)は、対前年で死亡者数が増えている月と減っている月が入り乱れ、全体としてほぼ同じレベルで推移しているのに対して、一番上(2021年)だけは、すべての月で2021年の死亡者数の方が前年同月を上回っていて、特に春から秋にかけて、その差が拡大しているように見えます。
 ただし、過去の記事でも述べたように、これは死亡者「数」ですから、死亡「率」が増えたことによるものなのか、死亡者の多い高齢者の人口が増えたことによるものなのか、そこを分析しないと原因分析になりません。そのためには「死亡者数」ではなくて、「死亡率」、それも、全体の死亡率ではなく、各年齢ごと、性別ごとの死亡率がどう推移してきたかを調べなければいけないのですが、これをきちんと分析しているブロガーや専門機関は私の調べた限り、どうも見当たりません。私の過去記事ではそこを分析したことはしたのですが、最終的な合計値だけで論じているため、その年齢別とか月別状況がどうなっているのかをブラックボックスにしたままだったので、確かなことは言えませんでした。そこで、今回は月別、年齢別という2つの要素によって分析した結果を披露することにします(このような複数の要素で集計することを、統計の分野ではクロス分析といいます)。 (続く)


488 名前:mespesado 2022/11/05 (Sat) 13:59:33

人口グラフ.jpg
https://bbs6.fc2.com//bbs/img/_409100/409098/full/409098_1667624373.png
>>487
 まず、死亡率の増減要素でない、もう一つの要素である「死亡者数の多い高齢者人口の増加」の要素が意外にバカにならないことを視覚的に確かめておきたいと思います。添付画像の上段は、おなじみ、日本の2020年の人口ピラミッドです(正確な年齢別人口は国勢調査によらないとわからないので、正確な人口ピラミッドは国勢調査の行われる5の倍数年が主として用いられます)。これをご覧になれば明らかなように、今の日本の人口分布はデコボコが酷いw。まともに人口「ピラミッド」になっているのは72歳以上(それも75歳と76歳は第二次大戦末期によるディップがある)だけで、72歳以下、64歳くらいまでは逆さピラミッド、それより下の世代(45~64歳)は戦後のベビーブームと高度成長期による、ピラミッドの「正常化」時代、そしてそれより下の世代は、65~75歳の「逆ピラミッド」世代の子供の世代なので、同じく逆ピラミッドになったわけですが、それだけだったら10年くらいで再び正常化に「反転」するかな~と思ったら、豈図らんや、そのまま人口は減少まっしぐら、まさに失われた〇〇年を地で行く日本の人口ピラミッドといえるわけですね。
 その結果、「正常なピラミッド」の世代では、決められた年齢でカウントしたときの人口は増加傾向にあり、「逆ピラミッド」の世代では、決められた年齢でカウントしたときの人口は減少傾向にある。その結果、仮に各年齢の死亡率に何の変化が無かった場合でも、前者の世代の死亡者数は増加し、後者の世代の死亡者数は減少することになります。その結果を実際にグラフ化して可視化したのが、添付画像の下段で、これは世代を5歳ごとに刻んで、2015年の人口を1としたとき、2016年の人口を赤線、2017年の人口をオレンジ、2018年の人口を黄緑、2019年の人口を緑、2020年の人口を青、そして2021年の人口を太い紫で表したもので、見事に人口が単調に増加している世代と単調に減少している世代が交互に現れていることがわかります!
 こんな複雑な様相を呈していれば、仮に2021年の死亡率に特に変化が無かったとしたって、2021年の死亡者数が前年に比べて増えるのか減るのかなんて、すぐにわかるわけがありません。従って、年齢別に母体となる人口がどう変化したかを考慮しないと、2021年に全体の死亡者数が増えたからといって、直ちに年齢ごとの死亡率に異常があったのかどうかもわからないことになります。そこで、次回はこの「死亡率」、しかも性別、年齢別に見た死亡率について分析した結果をお見せすることにしたいと思います。 (続く)


489 名前:mespesado 2022/11/05 (Sat) 16:05:50
https://bbs6.fc2.com//bbs/img/_409100/409098/full/409098_1667631950.png
m489.jpg
>>488
 そこで、各性別・各年齢ごとに「2021年の超過死亡率」というものを求める必要があるのですが、その計算方法の概要を説明します。
 2015年と2020年については国勢調査により、男女別・年齢別の人口がすべてわかっています。一方、人口動態統計により、毎年1年間に死亡する人数も、死亡時の性別・年齢別にすべてわかっています。
 これらのデータにより、2015年から2020年までの毎年の性・年齢の人口を、死亡者数だけ引き算したりして間の年の分を補間することによって2016年、2017年、2018年、2019年についても推計によって求めます。そして、男女別、年齢別に、その性・年齢の各年の死亡者数を、その性・年齢のその年の人口で割り算したものを、その性・年齢のその年の「死亡率」とよびます。今、特定の性・年齢に対して2015~2020年の毎年の死亡率を上記の方法で計算してグラフにプロットしたのが、添付画像の一番左のグラフです。
 次に線形回帰という統計学の手法によって、これら6つの点を誤差の2乗が最小になるような直線を描いて、その直線が2021年の縦軸と交差するときの死亡率を2021年の予測死亡率とします(添付画像の真ん中のグラフ)。これは、各年齢の死亡率というのは、衛生状態の改善や医療技術の進歩などにより年々下がってきているので、2021年に他の年と著しく違う環境変化が無い限り、同じトレンドで死亡率は微減していくと予想されるわけですが、その予測死亡率を具体的に定量的に求めるのが、このような「線形回帰」と呼ばれる統計学の手法なわけです(ただ、厳密に言うと、死亡率というのはマイナスには決してなり得ないにもかかわらず、単なる線形回帰で推計するとマイナスの値になってしまうこともあり得ること、また、仮に死亡率が毎年同じ率(例えば3%)で低下していた場合でも線形回帰の手法で2021年の死亡率を推計すると、その値が2020年の死亡率の3%減に厳密には一致しなくなってしまう、などの難点があることから、対数線形回帰というもう少し複雑な方法で推計するのですが、大勢に影響はありません)。
 そして、最後に2021年の実際の人口と死亡者数によって2021年の実際の死亡率を求めます(添付画像の右側のグラフ)。そして先ほど(対数)線形回帰で求めた予測死亡率と実際の死亡率の差を「超過死亡率」と定義することにするわけです。この計算を、男女別に、すべての年齢に対して独立に行うわけです。その結果、どの性のどの年齢では超過死亡率が何%になっているのかということがわかり、性別・年齢別の超過死亡の傾向というものがわかるわけです。                              (続く)

490 名前:mespesado 2022/11/05 (Sat) 19:57:45
https://bbs6.fc2.com//bbs/img/_409100/409098/full/409098_1667645865.png
m490.jpg
>>489
 さて、男女別に2021年の男女別・年齢別に2021年の予測死亡率と実際の死亡率を算出して、その差を取れば、死亡率がどれだけ増減したかがわかります。添付画像にあるのは、その増減を元の死亡率に対するパーセンテージである「増減率」に直して、それを年齢を5歳刻みで横軸にずらっと並べたものです(ただし、各歳の数値を5歳分にまとめるときに、その中の各歳の人口の比率で重み付け平均を取っています)。
 これらを見ると、若い方の年齢はともかくとして、35歳以上の年齢ではほぼ一様に、男女とも2%の増加率になっていることがわかります。
 一番最初の >>488 の添付画像の人口動態統計によると、2021年の死亡者数は2020年のそれに比べて約6万7千人も多くなっていて、日本の年間の死亡者数は130万人ほどですから、これは率で言うと5%ほど死亡者数が多かったことを意味しています。この5%というのは驚異的で、前年の2020年は新型コロナの流行が始まった年であるにもかかわらず、前年より死者数はなんと減少していました。それなのに、なぜ2021年はこんなに急激に死亡者が増えたんだ、と驚きを持って受け止められていたわけですが、死亡者数ではなく、死亡率で調べると、数字はグッと減って、2%増えただけ、という結果になった、というわけです。要するに、残りの3%分は、死亡率のアップ以外の要素、つまり、死亡者の大半を占める高齢者人口の増加による見かけ上の増加であった、ということがわかったわけです。
 「なあんだ、死亡者の増加は人口の高齢化で過大評価されていたんだ」と安心した人もいるかもしれません。ところが、クロス集計のもう一方の集計、すなわち年齢別の集計ではなく、月別に集計した結果を調べると、大どんでん返しが待っているのです。 


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