新・mespesadoさん講義(194)(承前)日本の正念場 [mespesado理論]
「インフレになればMMTは通用しない」というのは気になるところでした。そこのところをmespesadoさんがきっちり説明してくれます。要するに今インフレが問題なのは、国内の供給力低下によるものではなくて、海外からの原材料の確保における輸入不足によるコストプッシュによるものであること。したがって、財政均衡に囚われた緊縮財政は、より深刻な需要不足となり、国民の暮らしは苦しくなる。今こそ積極財政が必要な時、《国は安心して積極財政を行って国民を豊かにすればよい。》ということなのですが、もうひとつmespesadoさんの前段(965)での問題提起。資源獲得競争をする上で円安は不利、今の状況は、ABCD包囲網によって資源獲得を封じられた第二次世界大戦前夜を思い起こさせられる。《ここで日本が第二次大戦のように、窮鼠猫を噛んで破局に向かうのか、それとも別の智慧で難局を乗り越えるのか、という岐路に立たされている》。まさにそれ、日本の正念場です。先ずもって、いま世界がどう動こうとしているのかをしっかり見極めることです。→「中国をどう見るか」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2022-10-27 副島氏は《日本は、やがて、この2千年間、そうだったように、歴代中華帝国(れきだいちゅうかていこく)に、従順に従う、属国のひとつに、静かに戻って行く。これもよし、とする。》と言う。しかしその先に、きっと日本独自の道が拓けてくる。あるいはその流れとは別次元に、日本独自の道が在る。中国はそれに倣おうとしているのではないか。習近平は、「利」とは別次元のものを価値基準の第一義にしている。→「石原莞爾『最終戦争論』(3)「橋頭堡」」https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2022-05-11-1
ただ、最近聴いて「日本は大丈夫だろうかと」気になり続ける動画→「【朝話】●●業界も外国人参入,日本人競争激化」https://www.youtube.com/watch?v=B-cXyR8xMiU ハングリー精神の欠如=インセンティブの喪失。
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965 名前:mespesado 2022/10/29 (Sat) 10:05:09
>>963
> 元ヘッジファンドマネジャーの横森一輝氏はMMT理論を批判していたが、
> 今のところ其方に一票。
横森一輝氏によるMMT批判の動画↓
https://keizaiclub.com/2022/02/15/26757/
この動画は、MMT批判に対して(この動画はシリーズもので、おそらく前の動画に対する)「日本が破綻するなんて気分が悪い」という質問者に対し、それに再反論をしている動画です。
横森氏の主張は「MMTはインフレになったら使えないと書いてある。今日本は物価が上がってるからインフレじゃないか。だから、日本では使えない。だから日本でMMTを行えばハイパーインフレになって破綻する」ということのようですw。また「今日本は需要不足だというが、供給不足だから物価が上がってるのだ」とも主張しています。
いちいちツッコミどころ満載ですが、「そもそもMMTを行う」という言い方をしてますが(w)これは「MMT理論に従って積極財政を行う」という意味で使っているようですのでそのように翻訳して理解することにします。
横森さんは、元ヘッジファンドマネジャーだということもあって、完全に投資家の発想ですね。動画の中でも例えばこんなことを言う:MMTでは自国建て国債は絶対破綻しないと言うけれど、国債を主に持っているのは生保である。ところがここで言えない理由により(w)人がどんどん死んでいるから保険会社はヤバいよ。で、保険金の支払いのために国債をバンバン売らなければならない。その結果国債価格が暴落するじゃないか、と。
横森さんは、要するに投資家が市場で扱われている有価証券を売買することで価格が決まるので、日本のように物価が上がってインフレの時に積極財政を行えば、円を刷った分だけ円の価値が下がるからますますインフレになって(ハイパーインフレ)日本が破綻する、ということで、貨幣の真の価値が「資源」とか「生産能力」などに支えられたものであるという貨幣理論の一番大切な所を一切無視しているように見えます。まあ、オリジナルのMMTも「自国建て国債は破綻しない」という表現を使っていることからもわかるように、実は貨幣に価値を与えているのが何なのかというところは無視しているのですが、これはMMT発祥の地が、「自国通貨が供給力に支えられているのではない」米国だからだと思います。
さて、横森さんの話に突っ込む前に、ここからちょっと新しい話をします。
貨幣の価値が「資源」に支えられている場合と「生産力」に支えられている場合では、国家破綻に関する仕組みが実は違います。前者の場合は、その資源が世界で必要不可欠のものであり、しかも生産できる地域が限られている場合は最強です。今のロシアがこの仕組みを最大限活用しようとしていますね。それに気づいた西側闇勢力が、パイプラインを破壊するなどで妨害しているのは、この資源を売ることで得ている貨幣価値の根っこのところを無効化しようとして行った事であり、明らかに乱暴な方法なので、平和な状態でこれを続けるのは無理がありますよね。それから米ドルも「国債基軸通貨」なんてカッコイイ言葉を使ってはいるけれど、実は自国ではなく中東で産出される石油にペグさせるための国債基軸通貨なので、やはり米ドルもその価値は「資源」に支えられていることは以前にも書いたとおりです。ただ、こちらの方は、自国の資源ではなく、中東という「他人の褌で相撲を取っている」わけですから、中東の産油国がドル取引を止めてしまうと、それこそ恒久的に破綻してしまう。だから、こちらは「ナンチャッテ資源」による価値ということができますね。
これに対して日本のような「生産力」に支えられている場合はどうか。日本は昔から教科書に書いてあるように「加工貿易」でやってきました。つまり「資源」を輸入してそれに質のよい製品化という「付加価値」を付けて海外に売る。こうして得た利益で自国で生産できない原材料を獲得してきたわけです。ところが今般のウクライナ情勢で、輸入しなければ得られない「資源」が得にくくなっている。このため、それが製品の価格として上乗せされ、輸入物価上昇によりインフレになっている。これはオカネの言葉で言えば、生産能力が低くて供給不足になった場合と同じく「インフレ」ですが、実体は全く違います。まず、世界的な「資源」そのものは、別に埋蔵量が枯渇したからというのではなく、宇露戦争+対露制裁のような人為的・政治的な行為によって西側に「だけ」資源が入って来ないことによる「西側のみの」資源不足であり、オカネはどうあれ、西側全諸国にとって、そもそも原材料資源が不足してるのですから、いくら生産能力があったって原料がなければ生産できないので「モノ不足」になるのは当たり前です。するとどうなるか。そこで起きることは、今の情勢を見る限り、そこに闇勢力による故意を感じますが、戦争回避や制裁解除による資源の確保の方向には進ま(め)ずに、西側諸国同志による「資源」の「争奪戦」になっている。つまり、為替で自国通貨の価値を高めた国が、より原料を調達しやすくなる。米国がドル高を狙っているのは明らかにこの意図があるからです。その結果、ドル以外の通貨は安くなり、とりわけ米国に首根っこを押さえられている日本はひたすら円安に甘んじざるを得なくなり、資源獲得競争に負け続けている。これが今の情勢です。しかし、この円安は、モノの需要と供給のバランスのような、いわゆる「経済原理」に則ったものでは全く無く、ただただ「投資市場」の仕組みを利用して仕掛けられている。具体的には投資市場で投資家に円を売らせるように仕向けるためにドルの金利を引き上げて利息が高いことで投資家を引き付けて、円を売らせ、ドルを買わせるように仕組んでいるわけです。
このように、「加工貿易立国で、自国で資源が産出できない国」は、「投資市場」という本来の経済の目的である「モノの需要供給」とは関係ないところでいいようにカモにされているわけですね。これ、どっかで見覚えはありませんか?そう、第二次世界大戦前夜です。日本はABCD包囲網とか言って、資源を確保するすべを完全に断たれ、戦争でこの「いやがらせ」から逃れる以外に術が無いところまで追い込まれた。今回の日本に対する円安による「いやがらせ」も同じ構図ですね。ここで日本が第二次大戦のように、窮鼠猫を噛んで破局に向かうのか、それとも別の智慧で難局を乗り越えるのか、という岐路に立たされているわけです。
大変長くなってしまったので一旦切ります。 (続く)
>>963
> 元ヘッジファンドマネジャーの横森一輝氏はMMT理論を批判していたが、
> 今のところ其方に一票。
横森一輝氏によるMMT批判の動画↓
https://keizaiclub.com/2022/02/15/26757/
この動画は、MMT批判に対して(この動画はシリーズもので、おそらく前の動画に対する)「日本が破綻するなんて気分が悪い」という質問者に対し、それに再反論をしている動画です。
横森氏の主張は「MMTはインフレになったら使えないと書いてある。今日本は物価が上がってるからインフレじゃないか。だから、日本では使えない。だから日本でMMTを行えばハイパーインフレになって破綻する」ということのようですw。また「今日本は需要不足だというが、供給不足だから物価が上がってるのだ」とも主張しています。
いちいちツッコミどころ満載ですが、「そもそもMMTを行う」という言い方をしてますが(w)これは「MMT理論に従って積極財政を行う」という意味で使っているようですのでそのように翻訳して理解することにします。
横森さんは、元ヘッジファンドマネジャーだということもあって、完全に投資家の発想ですね。動画の中でも例えばこんなことを言う:MMTでは自国建て国債は絶対破綻しないと言うけれど、国債を主に持っているのは生保である。ところがここで言えない理由により(w)人がどんどん死んでいるから保険会社はヤバいよ。で、保険金の支払いのために国債をバンバン売らなければならない。その結果国債価格が暴落するじゃないか、と。
横森さんは、要するに投資家が市場で扱われている有価証券を売買することで価格が決まるので、日本のように物価が上がってインフレの時に積極財政を行えば、円を刷った分だけ円の価値が下がるからますますインフレになって(ハイパーインフレ)日本が破綻する、ということで、貨幣の真の価値が「資源」とか「生産能力」などに支えられたものであるという貨幣理論の一番大切な所を一切無視しているように見えます。まあ、オリジナルのMMTも「自国建て国債は破綻しない」という表現を使っていることからもわかるように、実は貨幣に価値を与えているのが何なのかというところは無視しているのですが、これはMMT発祥の地が、「自国通貨が供給力に支えられているのではない」米国だからだと思います。
さて、横森さんの話に突っ込む前に、ここからちょっと新しい話をします。
貨幣の価値が「資源」に支えられている場合と「生産力」に支えられている場合では、国家破綻に関する仕組みが実は違います。前者の場合は、その資源が世界で必要不可欠のものであり、しかも生産できる地域が限られている場合は最強です。今のロシアがこの仕組みを最大限活用しようとしていますね。それに気づいた西側闇勢力が、パイプラインを破壊するなどで妨害しているのは、この資源を売ることで得ている貨幣価値の根っこのところを無効化しようとして行った事であり、明らかに乱暴な方法なので、平和な状態でこれを続けるのは無理がありますよね。それから米ドルも「国債基軸通貨」なんてカッコイイ言葉を使ってはいるけれど、実は自国ではなく中東で産出される石油にペグさせるための国債基軸通貨なので、やはり米ドルもその価値は「資源」に支えられていることは以前にも書いたとおりです。ただ、こちらの方は、自国の資源ではなく、中東という「他人の褌で相撲を取っている」わけですから、中東の産油国がドル取引を止めてしまうと、それこそ恒久的に破綻してしまう。だから、こちらは「ナンチャッテ資源」による価値ということができますね。
これに対して日本のような「生産力」に支えられている場合はどうか。日本は昔から教科書に書いてあるように「加工貿易」でやってきました。つまり「資源」を輸入してそれに質のよい製品化という「付加価値」を付けて海外に売る。こうして得た利益で自国で生産できない原材料を獲得してきたわけです。ところが今般のウクライナ情勢で、輸入しなければ得られない「資源」が得にくくなっている。このため、それが製品の価格として上乗せされ、輸入物価上昇によりインフレになっている。これはオカネの言葉で言えば、生産能力が低くて供給不足になった場合と同じく「インフレ」ですが、実体は全く違います。まず、世界的な「資源」そのものは、別に埋蔵量が枯渇したからというのではなく、宇露戦争+対露制裁のような人為的・政治的な行為によって西側に「だけ」資源が入って来ないことによる「西側のみの」資源不足であり、オカネはどうあれ、西側全諸国にとって、そもそも原材料資源が不足してるのですから、いくら生産能力があったって原料がなければ生産できないので「モノ不足」になるのは当たり前です。するとどうなるか。そこで起きることは、今の情勢を見る限り、そこに闇勢力による故意を感じますが、戦争回避や制裁解除による資源の確保の方向には進ま(め)ずに、西側諸国同志による「資源」の「争奪戦」になっている。つまり、為替で自国通貨の価値を高めた国が、より原料を調達しやすくなる。米国がドル高を狙っているのは明らかにこの意図があるからです。その結果、ドル以外の通貨は安くなり、とりわけ米国に首根っこを押さえられている日本はひたすら円安に甘んじざるを得なくなり、資源獲得競争に負け続けている。これが今の情勢です。しかし、この円安は、モノの需要と供給のバランスのような、いわゆる「経済原理」に則ったものでは全く無く、ただただ「投資市場」の仕組みを利用して仕掛けられている。具体的には投資市場で投資家に円を売らせるように仕向けるためにドルの金利を引き上げて利息が高いことで投資家を引き付けて、円を売らせ、ドルを買わせるように仕組んでいるわけです。
このように、「加工貿易立国で、自国で資源が産出できない国」は、「投資市場」という本来の経済の目的である「モノの需要供給」とは関係ないところでいいようにカモにされているわけですね。これ、どっかで見覚えはありませんか?そう、第二次世界大戦前夜です。日本はABCD包囲網とか言って、資源を確保するすべを完全に断たれ、戦争でこの「いやがらせ」から逃れる以外に術が無いところまで追い込まれた。今回の日本に対する円安による「いやがらせ」も同じ構図ですね。ここで日本が第二次大戦のように、窮鼠猫を噛んで破局に向かうのか、それとも別の智慧で難局を乗り越えるのか、という岐路に立たされているわけです。
大変長くなってしまったので一旦切ります。 (続く)
966 名前:mespesado 2022/10/29 (Sat) 12:41:21
>>965
さて、横森さんは「MMTはインフレになったら使えないと書いてある」と言い、その教科書の主張を肯定しています。ということは、氏は「輸入物価が上昇したことによるコストプッシュ型インフレになった場合でも積極財政を採用してはいけない」と主張している、ということです。これ、今の日本に当てはまるでしょうか?
普通は積極財政によって市中に流通する貨幣を増やせば貨幣価値は下がるので通貨安になり、その結果、当該通貨建てで発行された国債の価格は下落します。これは藤森さんも自明の前提として考えておられると思います。ところが、円の場合にはこの構図が当てはまらない。日本は消費者の潜在需要も供給能力も十分あるのに、ただ市中の貨幣が足りないがために、モノが売れず、価格を下落せざるを得なくなってデフレになっています。なので、積極財政によって市中の貨幣が増えれば、人々は欲しかったモノを買うことができ、生産者もちゃんと売れるので、無理して価格を抑えていたのを本来のあるべき価格に戻すことができ、物価は上がるというよりも本来の価格に戻り、経済は回るようになります。従って国債の信頼度は何ら毀損されることはないので、国債価格が下落するつまり金利が上がることもないでしょう。ただ、輸入物価の問題はどうなるのかというと、今のような「西側諸国による争奪戦」をそのままにしていおいて輸入物価の上昇を抑えようとすれば、円安を抑える必要がありますが、この円安は国債の金利が低いことに由来するので、上に述べたように、積極財政によってこの低金利を反転させることはできません。
それでは、日本がこのまま(恐らく藤森さんも考えているであろうような)緊縮財政を続ければ、国債金利は上昇して為替が円高になって争奪戦に勝つことができるようになるでしょうか?
あまり思いつきませんが、もし何らかのカラクリで国債の価格が下落したとしましょう。すると、これは国債の金利が上昇したことを意味しますから、金利競争で他の国の国債に勝ち、日本国債は人気が出て日本国債はすぐまた価格が上昇して金利が下がってしまい、金利の魅力が無くなった国債はすぐまた人気が無くなり、元に戻ってしまいます。
要するに、重要なことは、為替の円安を抑えることに関して、積極財政を行ったか緊縮財政を行ったかということは全く関係が無いことです。ですから、本来なら国は安心して積極財政を行って国民を豊かにすればよい。そして為替の円安に起因する輸入物価の上昇は、この財政政策とは全く無関係なのだから、別に考えればよい、というより、別の問題として考えなければならない、ということになります。
もうここまで来れば、藤森さんの主張の誤りは明らかですね。インフレはインフレでも積極財政を行ってはいけないのは国際的資源不足による輸入物価の上昇によるインフレの場合ではなく、国内の供給力不足に起因するインフレの場合に限ります。また、藤森さんのいう需要不足ではなく供給不足だ、というのは、国内生産能力による供給不足ではなく、原材料の確保における輸入不足ですから、国内では需要不足、つまり国内の需要不足と輸入の供給不足で対象が違いますから、この需要不足と供給不足は当然に両立します。
そして最後に生保の国債保有の話ですが、生保の運用部門や統計部門にもいたことのある身として言わせてもらえば、海外はいざ知らず、国内では生保の契約において死亡がバンバン増えているという事実はありません。コロナやワ〇チ○で死亡しているのは、その殆どが基礎疾患を持っている人か超高齢者に限られているので、(生命保険では加入時に医的な査定を行っており、基礎疾患を持つ人の加入が防がれるため、)死亡増が経営に影響を与えるところまで行っていません。
また、資金の運用先ということで言うと、保険事業というのは預貯金事業と違って契約を途中で解約することは稀です(生保は途中で解約すると損することが多いので)。ですから基本的に満期まで契約が続くものとして、いつどこでどうカネが社外に流出するかということが、死亡率と確率論で把握できていて、それに伴って、資金運用の方も、保険金の支払いに丁度見合った時期に償還を迎えるような資金運用のポートフォリオを組みます(生命保険事業のALM=AssetLiabilityManagement)。ですから、債券の価格が償還前にどう価格変動するかはあまり大きな問題ではなく、きちんと償還時にデフォルトしないかどうかが最重要となり、加えて外国債の場合は償還時の為替変動によるリスクがありますから、これも極力避けたい。つまり購入する債券の信用度と償還時の為替リスクが一番大切になり、その面では日本国債への運用というのはやはり主力とならざるを得ないんです。そういうわけで、国債は大量に持っていたとしても、途中の金利の変動とかに惑わされることもなければ、死亡でバンバン資金が流出して大量に国債を売らなければならないとかいうこともないのです。藤森さんは生保業界に対して営業妨害したい意図でもあるんかな、と勘繰ってしまうレベルの誤解ですね。
>>965
さて、横森さんは「MMTはインフレになったら使えないと書いてある」と言い、その教科書の主張を肯定しています。ということは、氏は「輸入物価が上昇したことによるコストプッシュ型インフレになった場合でも積極財政を採用してはいけない」と主張している、ということです。これ、今の日本に当てはまるでしょうか?
普通は積極財政によって市中に流通する貨幣を増やせば貨幣価値は下がるので通貨安になり、その結果、当該通貨建てで発行された国債の価格は下落します。これは藤森さんも自明の前提として考えておられると思います。ところが、円の場合にはこの構図が当てはまらない。日本は消費者の潜在需要も供給能力も十分あるのに、ただ市中の貨幣が足りないがために、モノが売れず、価格を下落せざるを得なくなってデフレになっています。なので、積極財政によって市中の貨幣が増えれば、人々は欲しかったモノを買うことができ、生産者もちゃんと売れるので、無理して価格を抑えていたのを本来のあるべき価格に戻すことができ、物価は上がるというよりも本来の価格に戻り、経済は回るようになります。従って国債の信頼度は何ら毀損されることはないので、国債価格が下落するつまり金利が上がることもないでしょう。ただ、輸入物価の問題はどうなるのかというと、今のような「西側諸国による争奪戦」をそのままにしていおいて輸入物価の上昇を抑えようとすれば、円安を抑える必要がありますが、この円安は国債の金利が低いことに由来するので、上に述べたように、積極財政によってこの低金利を反転させることはできません。
それでは、日本がこのまま(恐らく藤森さんも考えているであろうような)緊縮財政を続ければ、国債金利は上昇して為替が円高になって争奪戦に勝つことができるようになるでしょうか?
あまり思いつきませんが、もし何らかのカラクリで国債の価格が下落したとしましょう。すると、これは国債の金利が上昇したことを意味しますから、金利競争で他の国の国債に勝ち、日本国債は人気が出て日本国債はすぐまた価格が上昇して金利が下がってしまい、金利の魅力が無くなった国債はすぐまた人気が無くなり、元に戻ってしまいます。
要するに、重要なことは、為替の円安を抑えることに関して、積極財政を行ったか緊縮財政を行ったかということは全く関係が無いことです。ですから、本来なら国は安心して積極財政を行って国民を豊かにすればよい。そして為替の円安に起因する輸入物価の上昇は、この財政政策とは全く無関係なのだから、別に考えればよい、というより、別の問題として考えなければならない、ということになります。
もうここまで来れば、藤森さんの主張の誤りは明らかですね。インフレはインフレでも積極財政を行ってはいけないのは国際的資源不足による輸入物価の上昇によるインフレの場合ではなく、国内の供給力不足に起因するインフレの場合に限ります。また、藤森さんのいう需要不足ではなく供給不足だ、というのは、国内生産能力による供給不足ではなく、原材料の確保における輸入不足ですから、国内では需要不足、つまり国内の需要不足と輸入の供給不足で対象が違いますから、この需要不足と供給不足は当然に両立します。
そして最後に生保の国債保有の話ですが、生保の運用部門や統計部門にもいたことのある身として言わせてもらえば、海外はいざ知らず、国内では生保の契約において死亡がバンバン増えているという事実はありません。コロナやワ〇チ○で死亡しているのは、その殆どが基礎疾患を持っている人か超高齢者に限られているので、(生命保険では加入時に医的な査定を行っており、基礎疾患を持つ人の加入が防がれるため、)死亡増が経営に影響を与えるところまで行っていません。
また、資金の運用先ということで言うと、保険事業というのは預貯金事業と違って契約を途中で解約することは稀です(生保は途中で解約すると損することが多いので)。ですから基本的に満期まで契約が続くものとして、いつどこでどうカネが社外に流出するかということが、死亡率と確率論で把握できていて、それに伴って、資金運用の方も、保険金の支払いに丁度見合った時期に償還を迎えるような資金運用のポートフォリオを組みます(生命保険事業のALM=AssetLiabilityManagement)。ですから、債券の価格が償還前にどう価格変動するかはあまり大きな問題ではなく、きちんと償還時にデフォルトしないかどうかが最重要となり、加えて外国債の場合は償還時の為替変動によるリスクがありますから、これも極力避けたい。つまり購入する債券の信用度と償還時の為替リスクが一番大切になり、その面では日本国債への運用というのはやはり主力とならざるを得ないんです。そういうわけで、国債は大量に持っていたとしても、途中の金利の変動とかに惑わされることもなければ、死亡でバンバン資金が流出して大量に国債を売らなければならないとかいうこともないのです。藤森さんは生保業界に対して営業妨害したい意図でもあるんかな、と勘繰ってしまうレベルの誤解ですね。
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