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「ノボロシア(新ロシア)建国がウクライナでの露の目標?」(田中宇) [ロシア]

私には田中宇氏の「国際ニュース解説」が最も信頼する情報源だ。この1ヶ月間は3日に2本の記事発信だからすごい。平常時は1週間に1本か2本だった。さっと読める記事ではないので、mespesadoさんの記事同様、いったんこのブログにコピぺしてじっくり読むことにしている。時間もかかるが、時にはゾクゾクするほどの展開もあって、記事の届くのが楽しみだ。飲み込みの悪い私には、ありがたい頭の訓練にもなっていると思う。今回は、マスコミ報道ではわからないウクライナにおける戦況が理解できた。あわせてこれからどうなるかも見えてくる。会員版でないので全文貼り付けた。
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《ロシア政府は、米国側の誤報に対してあまり反論しなくなっている。米国側のマスコミに好き放題にロシア敵視の誤報をさせ、ロシアを極悪だと歪曲報道させている。極悪なロシアを許すなという米国側の世論によって、過激な対露経済制裁が行われ続ける。しかし、石油ガスなど資源の輸入停止を中心とする対露経済制裁は、中長期的にロシアをあまり傷つけない半面、米国側、とくに欧州諸国の経済に大打撃を与え続ける。米国側の対露制裁は自滅的な超愚策である。情報戦争・プロパガンダ戦争としては、ロシアが惨敗、というか不戦敗している。しかしこの不戦敗は、米国側が自分たちの経済を自滅させる対露経済制裁をどんどん進めることにつながり、経済戦争や、米国側と非米側の地政学的な戦いにおけるロシアや非米側(中国やBRICS)の優勢や勝利をもたらす。》《そしてロシアは、軍事的な面でもウクライナにおける優勢が崩れない。米国側のマスコミはロシアの惨敗を描くが、実際のロシアは予定通りゆっくりと勝っている。ロシア国内でのプーチンの支持率も下がらない。この状態が長引くほど、経済面で米国側が崩壊していく。露軍はもっと早くウクライナでの作戦を完了できそうだが、それをやらない。戦争状態が長引くほど、米国側が過激な対露制裁によって経済的に自滅していってくれるからだ。経済の自滅が進むと米国の覇権が低下し、非米側の全体が相対的に優勢になっていく。露軍は、時間をかけた方がウクライナの諸都市の街区を破壊せず、住民を死なせずに作戦を進められる。露軍は予定通り、時間をかけて勝っていく。 》
米国側のいろんな権威筋が、ウクライナ戦争はこれから1-2年続くと予測している。彼らは自分たちの敗北までは明言していない。英国首相が「ロシアは勝ちうる」と発言したり、米国の財務長官が「対露制裁はロシアより欧州を打撃する」と言うなど、状況はわかっているようだが、自滅への道をやめる動きはない。》
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ノボロシア建国がウクライナでの露の目標?

2022年4月25日   田中 宇

今回のウクライナ戦争について、ロシア敵視を誇張する方向に歪曲されている米国側(米欧日)のマスコミでは「ロシアが突然、善良なウクライナを残虐に侵攻してきた」といった感じの話になっているが、これは2月末の開戦より前の経緯を意図的に無視することで話を歪曲している。今回の戦争の起源は、2014年に米英が諜報力を駆使してウクライナをロシア敵視の方向に政権転覆したことに始まる。その後、米英加仏が出資して全欧州からネオナチの活動家を10万人ほどウクライナに集めて軍事訓練して極右民兵団を作るセンチュリア・プロジェクト(Centuria project)を遂行し、それまで弱かったウクライナ軍をテコ入れしつつ東部の親露勢力を攻撃させるなど、ウクライナが米英の傀儡になってロシア側に戦闘を仕掛けてきた。 (NATO lies exposed! Former agent speaks out!

ウクライナは1991年のソ連崩壊まで、ロシアを中心とするソ連の一部であり、ロシアとウクライナは同じ国で、ウクライナには多くのロシア系が住んでいた。ソ連崩壊後も、ロシアとウクライナの関係は良かった(だからロシアの最重要なセバストポリ軍港があるクリミア半島がフルシチョフ時代からウクライナ領内に編入されたままでもロシアは容認していた)。2014年の米英によるウクライナ政権転覆後、すべてが変わった。米英はウクライナを、ロシアを敵視して怒らせるための傀儡国に変質させた。極右勢力がウクライナ国内の親露勢力を殺したり抑圧し続けた。ロシアはとりあえず軍港があるクリミアだけウクライナから引き剥がして奪還した。しかし、米英傀儡のロシア敵視装置にされてしまったウクライナをどうするか、ロシアにとってのウクライナ問題は未解決なままだった。

今回のウクライナ侵攻は、ロシアにとってウクライナ問題を解決するために行われている。親露派が多いウクライナ東部2州(ドンバス)の自治政府がウクライナから分離独立したのを2月22日にロシアが国家承認して安保条約を結び、ウクライナ軍から攻撃され続けているドンバス政府がロシアに軍事支援を求めたのを受け、ロシアは安保条約に沿って、ドンバスを攻撃してくるウクライナ軍に2月24日から反撃して破壊していった。ロシアから見ると今回の戦いは、同盟国となったドンバスを攻撃・侵略してくるウクライナに反撃する正当防衛だ(だからロシアは「戦争」「侵攻」と呼ばず「特殊作戦」と呼んでいる)。

ロシアはウクライナの軍事力を破壊して制空権を奪い、窮したウクライナはロシアが求める「中立(NATO加盟を希望しないこと)」をとりあえず宣言した。だが今後、ロシアがドンバス以外のウクライナから撤兵して制空権も返還したら、おそらくウクライナは再び米英の傀儡に戻ってロシアや親露派への敵視と攻撃を再開する。米英はウクライナを軍事支援し続け、ウクライナが疲弊するのもかまわず親露派やロシアと戦わせ続ける。米英の傀儡をやめない独仏など欧州諸国も巻き込まれてロシア敵視とウクライナ支援を続ける。ロシアに脅威を与えるウクライナ問題は残る。

最終的に、ロシアはどのようにウクライナ問題を解決していくつもりなのか。一つありそうなのは、ウクライナの中で親露派が比較的多いドンバスなどいくつかの地域において、露軍の庇護のもと、地元の地方政府がウクライナから分離独立を宣言し、ロシアが国家承認してウクライナとは別の国になることだ。ウクライナは、分離独立した親露派の国と、以前からの米英傀儡ロシア敵視のゼレンスキーの残存国に分割される。ドンバスなどウクライナの東部と南部が親露派の国として分離独立すると、それは2100万人の人口と、旧ウクライナのGDPの3分の2を持つ。ウクライナの工業地帯の多くは東部にある。ロシア敵視の残存国は人口が4600万人から2100万人に減る。残存国は、引き続き米英傀儡としてロシア敵視を続けるが、その国力はかなり縮小し、ロシアにとっての脅威が減る。ウクライナから分離独立した親露派の国は、ロシア本土と米英傀儡残存国との緩衝地帯として機能するので、その意味でもウクライナがロシアにもたらす脅威が減る。 (Putin’s “Greater Novorossiya” – The Dismemberment of Ukraine

このような構想は、すでに実際に存在している。それは「ノボロシア(新ロシア)」と呼ばれている。ノボロシアは、18世紀後半から実際に今のウクライナの東部と南部に存在していたロシア帝国傘下の行政区の名前だ。当時のロシア帝国は領土拡張の目的で、衰退していたオスマントルコ帝国から割譲させたり、自立的なコサックが開拓した地域を併合したりして、この地域をまとめてノボロシアとして自国領にした。18世紀にウクライナという国はなく他国に分割支配されていたが、20世紀始めのロシア革命で近代ウクライナが建国されてソ連の一部になると、ノボロシアの地域はウクライナに編入された。 (Novorossiya Governorate - Wikipedia) (Novorossiya - Wikipedia

2014年初めに米英がウクライナの政権をロシア敵視側に転覆し、ロシアにとってのウクライナ問題が始まった後の2014年4月、ロシアのプーチン大統領はテレビ出演の中で、ウクライナ問題の解決方法として「ソ連建国時になぜかウクライナ領に編入されたが本来はロシア領であるべきノボロシア(ハリコフ、ルガンスク、ドネツク、オデッサといった諸都市)に多いロシア系住民に、解決方法を考えてもらうのが良い」と述べ、昔のノボロシアにあたるウクライナ東部・南部の住民が、米英傀儡のロシア敵視国になってしまったウクライナから分離独立してノボロシアを建国・再建するのが良いと示唆した。これ以来、米英では「ノボロシア」の名前が「プーチンの危険なウクライナ分割構想」として攻撃的に紹介されるようになった。ロシアでは逆に、愛国的な人々が「ノボロシアを建国してウクライナ問題を解決しよう」と言い続けた。ウクライナの東部から南部にかけてノボロシアが建国されると、ウクライナは黒海岸を全て失って内陸国になる。 (Putin Talks About Novorussia

ノボロシアは、東端がウクライナの対ロシア国境だが、西端はウクライナとモルドバの国境を少し越えて、モルドバから分離独立を宣言しているロシア系住民が主導する「沿ドニエストル共和国」までつながっている。ルーマニア人に近い人々がすんでいるモルドバはかつてソ連の一部で、ソ連崩壊後、大部分がモルドバ共和国として独立した。だがモルドバには、ソ連の後継国であるロシアの一部になりたいと思っている親露派の人々もいて、親露派が特に多いウクライナ国境とドニエストル川に挟まれた細長い地域だけ、1990年にモルドバから分離独立して「沿ドニエストル共和国(正式名称は沿ドニエストル・モルドバ共和国)」となった。モルドバはこの分離を認めず内戦になり、1992年にロシア軍が沿ドニエストルに入って両者を停戦させ、それ以来1500人ほどの露軍が駐留したまま、沿ドニエストル共和国は国際的に未承認国家として存在している。ロシアは、モルドバとの関係も良いので沿ドニエストル共和国を国家承認していない。ウクライナにノボロシアが建国されると、沿ドニエストルもそこに入ることが想定されている。

2014年の米英によるウクライナ政権転覆(マイダン革命)後、ロシア敵視政権がウクライナ国内のロシア系の自治権や、ロシア語を公用語として使う権利を剥奪し、親露派への弾圧を強めると、実際にウクライナの東部と南部では、ロシア系住民が主導してウクライナから分離独立しようとする動きがあった。しかし、南部のオデッサや北東部のハリコフでは、極右の脅迫を乗り越えて分離独立を支持する住民が十分におらず不発に終わった。住民の大多数が分離独立を望んだ東部のドネツクとルガンスクのドンバス2州のみが、自治の復活要求を拒否された後に分離独立を実際に宣言し、自治も分離も認めないウクライナ政府軍や極右軍との長い内戦に入った。 (What people in southeast Ukraine really think of Novorossiya May 25, 2015

プーチンは2014年にノボロシアの構想を示唆したものの、ウクライナのドンバス以外の親露派の動きが鈍いため構想は棚上げされた。実際にその後ロシア政府がやったことは、ミンスク合意体制を作ってドンバスとウクライナ政府を話し合わせ、ウクライナ政府が国内のロシア系に自治を再付与するように求めただけだった。ウクライナ政府はミンスク合意を無視し続け、ドンバスのロシア系を攻撃し続けた。その後2021年から米英がウクライナ政府をけしかけてドンバスとの内戦を激化させる動きを強め、2022年2月になってウクライナ軍がドンバスへの攻撃を劇的に強めたため、プーチンも対応せざるを得なくなり、今回の大反撃のウクライナ侵攻になった。 (“The policy of the USA has always been to prevent Germany and Russia from cooperating more closely”

今回の戦争開始とともに、ロシア側では再びウクライナ問題の最終解決案としてノボロシアを建国してウクライナを分割する話が出てきた。私は開戦翌日に書いた記事「バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた」の中で、ロシアの地上軍の動き方が、ノボロシア建国への布石を作ろうとしているような感じになっていると指摘した。しかし開戦前後にロシア政府が正式な表明の中でノボロシアの話を出すことはなく、その後しばらくノボロシアの話は宙に浮いていた。 (バイデンがプーチンをウクライナ侵攻に導いた

ロシア政府がノボロシアに言及したのは開戦から2か月たち、露軍作戦の第1段階が終わって次の第2段階がどうなるのか人々が注目する中、4月22日にロシア軍のミネカエフ副司令官(Rustam Minnekayev)が、ウクライナでの露軍の今後の目標を発表した時だった。ミネカエフによると露軍は今後、当初の目標である東部のドンバス2州を完全に管理下に入れるだけでなく、まだウクライナ側の管理下にある南部地域にも支配を広げ、沿ドニエストル共和国までロシアから陸路で行けるようにすることを目標にする。ミネカエフはノボロシアという言葉を使っていないが、これはまさに露軍のウクライナでの今後の目標がノボロシアの領土確保であると言っているようなものだった。 (Russia says it plans full control of Donbas and southern Ukraine

露軍はノボロシアの想定領土の主要な4地域のうち、北東部のハリコフ、東部のルガンスク、ドネツクの3つをすでに管理しており、南部のオデッサだけがまだウクライナ側の管理下だ。ドネツクで極右の最重要拠点だったマリウポリも露軍がほぼ抑えた(極右軍が住民を人質にして地下壕網に立てこもっている攻略が難しい製鉄所以外)。露軍はウクライナ南部において現在、東から侵攻してきてクリミアから100キロほど北西のミコライフ市まで占領しているが、そこからさらに西のオデッサ市や、沿ドニエストルとの国境までの黒海岸の150キロほどは、ウクライナ側が管理している。オデッサでは最近、それまで散発的だった戦闘の頻度が上がっている。 (Russian separatist claimed "Novorossiya" borders in black, and the current military situation in Ukraine

露軍のミネカエフ副司令官が、ウクライナ東部だけでなく南部も占領し、すでに露軍が駐留している沿ドニエストルとつなげるノボロシア建国を連想させる計画を発表したことに対し、沿ドニエストルの分離独立を認めていないモルドバ政府が、駐在するロシア大使を呼びつけて苦情を言った。モルドバは今回のウクライナ戦争に際して中立の立場をとっている。モルドバは経済がロシアとの貿易に依存しており、ロシアと対立したくないが、沿ドニエストルの分離独立を認めるわけにはいかない。モルドバはロシアに「わが国は貴国と仲良くしたいので困らせないでください」という態度だ。ロシア政府は何も答えていない。ノボロシア的な計画の表明はミネカエフ副司令官の不規則発言でなく、ロシア政府の公式見解な感じだ。 (Moldova's foreign ministry expresses 'deep concern' after Russian military chief outlines plans to seize Ukraine's entire south coast

露軍が今後オデッサを陥落して沿ドニエストルとの国境まで管理下におき、ノボロシアの主要地域(ウクライナ内陸部以外)を建国用地としてウクライナの親露派が分離独立できるようお膳立てしても、その地域の住民の過半数がウクライナからの分離独立、ノボロシアの建国を支持しなければ、ノボロシアは実現しない。2014年に実現しなかったことが、今回は実現するのか。疑問も残る。しかし2014年より今回の方が、親露派住民にとって分離独立にともなうリスクは大幅に少ない。2014年には、分離独立を宣言したらウクライナ側の軍や極右に敵視され、攻撃や殺害の標的にされたが、今はすでに露軍が進駐して守ってくれる。住民はリスクなしに分離独立を宣言できる。今回の戦争は、ウクライナが敗戦国でロシアが戦勝国だ。ロシア側にいた方が今後安定できる。露軍がオデッサなど南部の占領を完遂すると、ノボロシアが建国されていきそうだ。

露軍がウクライナの諸都市を大きく破壊したと喧伝する米国側のマスコミを軽信する人は、露軍が南部を占領してノボロシアを建国しても、新国家は廃墟の中に作られ、住民を幸福・裕福にするものでないと思うだろう。それは間違いだ。露軍は今回のウクライナ侵攻で、できるだけ街を破壊せず、市民を殺さないようにしており、露軍の作戦はおおむね成功している。米国側のマスコミは街区の破壊を大幅に誇張して報道している。実際はおそらく、マリウポリなどで破壊された街区はあまり広範囲でない。2か月間のウクライナ全体の戦争で市民は2千人ほどしか死んでいない(米軍はイラク戦争で最初の1か月に数万人を殺した)。街を積極的に破壊しているのは海外からの傭兵が多いウクライナ極右軍で、米国側のマスコミはそれを露軍の仕業だと意図的に誤報し続けている。

ロシア政府は、米国側の誤報に対してあまり反論しなくなっている。米国側のマスコミに好き放題にロシア敵視の誤報をさせ、ロシアを極悪だと歪曲報道させている。極悪なロシアを許すなという米国側の世論によって、過激な対露経済制裁が行われ続ける。しかし、石油ガスなど資源の輸入停止を中心とする対露経済制裁は、中長期的にロシアをあまり傷つけない半面、米国側、とくに欧州諸国の経済に大打撃を与え続ける。米国側の対露制裁は自滅的な超愚策である。情報戦争・プロパガンダ戦争としては、ロシアが惨敗、というか不戦敗している。しかしこの不戦敗は、米国側が自分たちの経済を自滅させる対露経済制裁をどんどん進めることにつながり、経済戦争や、米国側と非米側の地政学的な戦いにおけるロシアや非米側(中国やBRICS)の優勢や勝利をもたらす。 (米欧との経済対決に負けない中露

そしてロシアは、軍事的な面でもウクライナにおける優勢が崩れない。米国側のマスコミはロシアの惨敗を描くが、実際のロシアは予定通りゆっくりと勝っている。ロシア国内でのプーチンの支持率も下がらない。この状態が長引くほど、経済面で米国側が崩壊していく。露軍はもっと早くウクライナでの作戦を完了できそうだが、それをやらない。戦争状態が長引くほど、米国側が過激な対露制裁によって経済的に自滅していってくれるからだ。経済の自滅が進むと米国の覇権が低下し、非米側の全体が相対的に優勢になっていく。露軍は、時間をかけた方がウクライナの諸都市の街区を破壊せず、住民を死なせずに作戦を進められる。露軍は予定通り、時間をかけて勝っていく。 (米露の国際経済システム間の長い対決になる

露軍がこれから何か月かけてオデッサからウクライナ軍を追い出していく計画なのか予想できないが、ゆっくり進めていくだろう。オデッサが露軍の管理下に入ると、沿ドニエストルまでの距離は近い。ノボロシア建国の準備が整っていく。そこから実際の分離独立や建国までの住民の政治的な動きにも時間をかけるだろう。その間、まだ戦争が続いているかのような状況が描かれ続ける。米国側のいろんな権威筋が、ウクライナ戦争はこれから1-2年続くと予測している。彼らは自分たちの敗北までは明言していない。英国首相が「ロシアは勝ちうる」と発言したり、米国の財務長官が「対露制裁はロシアより欧州を打撃する」と言うなど、状況はわかっているようだが、自滅への道をやめる動きはない。Johnson Warns Russian Victory A "Realistic Possibility") (Yellen: European ban on Russian energy may do more harm than good

 

 



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めい

《集団ヒステリー状態になって、ロシアが悪い、ロシアをやっつけろと言っている人たちも、テレビが見られなくなったら、急速に正常な判断力を取り戻すのかもしれない。メディアを使った心理操作こそは、実は最大の大量破壊兵器だったのだ。20世紀に入ってから、戦争はほとんどがメディアを使った心理操作で引き起こされたものだったということがわかってきているのだけれど、このウクライナの戦争になって、ようやくそれがはっきりと見えてきたようだ。》

長いですが、読み応えのあるいい文章です。

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Chihiro Sato-Schuh
4月25日 23:46 ·
https://www.facebook.com/chihiro.satoschuh/posts/5845800522102073

【大量破壊兵器はテレビだった】
テレビが大衆操作の道具になっているというようなことは、前からよく言われていたことではあるのだけれど、2年前にパンデミックが始まってからは、それが目に見えてはっきりとしてしまったようだ。どの局もあまりに同じことしか言わないので、どうもおかしいと思って調べた人たちは、どれも同じ財団から多額の資金を受けていることを突き止めていた。それで、主流メディアはどれもグローバル金融エリートに買収されているということがわかったのだ。
2月にウクライナの戦争が始まったら、今度は急にすべてのメディアがロシアを敵にし始めた。それまではウィルスの脅威を煽り立てていたのに、今度はロシアに対する敵対意識を煽り立て始めたのだ。恐怖を駆り立てるような映像をこれでもかとばかりに出している点では、パンデミックのときとまったく同じだった。恐怖を駆り立てて、パニックを起こさせ、そして誰が悪いのかを繰り返し断言している。こうしたことは、本来、中立公正な報道をするべきメディアは、絶対にしてはいけないことなはずなのに、そんなことは忘れたかのように、一方的な断定をし続けている。
危機のときにこそ、人々がそれぞれに適切な判断ができるようにニュートラルな情報を与えるのが、本来のメディアの役割なはずなのだ。恐怖を煽り立てるのではなく、何が危険で何が危険でないのか、何がどの程度に危険なのか、そういったことを正確に伝えて、それぞれが判断できるようにするものだ。ところが、パンデミックにしてもウクライナの戦争にしても、メディアは一方的に恐怖を煽り立てるような報道ばかりしている。
もちろんこの頃では、誰でもインターネットが使えて、世界中からの情報が得られるようになったので、いくらテレビや新聞が買収されていても、別なルートからの情報がたくさん入ってくる。現地の住民や兵士たちも、自分でスマホで動画を撮影して、SNSにアップしていたりする。そうした映像からは、テレビや新聞が口をそろえて報道していることとは、まったく違う現実がそこにはあることが、否応もなく見えてきている。
テレビでは、キエフの空を爆撃機が飛び交っている映像が繰り返し放映されていたけれど、市民が撮ったキエフの街はそんな風ではなかった。ウェブCAMに映っていた街の風景もまったく平穏だった。ウクライナ東部では、団地が爆撃されたといって、焼け焦げになり穴だらけになった建物が映し出されており、テレビではロシア軍が爆撃したと言っていたけれど、それは8年前からウクライナ軍がやっていることなのだと現地の人々が口々に言っている動画がSNSにいくつもアップされていた。
戦争が始まるや否や、西側の国ではロシアのメディアを締め出して、ウクライナ政府側からの情報だけを報道していた。戦争に加わっているわけでもないのに、ロシア側からの情報は敵国プロパガンダと決めつけて、締め出してしまったのだ。一体何だってそんなことをするのかと思っていたら、直にそのわけがわかった。
実際には、ウクライナ軍がウクライナの街を無差別攻撃していたのだ。そして、それをロシア軍がやったとウクライナ政府は報告していた。西側のメディアは、ウクライナ政府の報告通り、すべてはロシア軍がしたことだとして、ロシアへの敵対意識を煽っていた。だから、ロシア側からの情報をあらかじめ締め出しておく必要があったわけなのだ。両方の側からの情報が入ってきていたら、明らかにウクライナ軍の方が非道なことをしていることがわかってしまうからだ。
ウクライナのアゾフ連隊は、ナチのシンボルをつけて、自分たちはナチだと言っており、明らかにナチそのものなのだけれど、そればかりではなく、彼らはロシア人は害虫だから皆殺しにすべきだと公然と言っていて、ジェノサイドを正当化していたのだ。それなのに、西側のメディアはアゾフはナチではないと言い、それはすべてロシアのプロパガンダなので、アゾフがナチだなどという人間こそは、ロシアのナチだとさえ言い始めた。
そして、「ロシアのナチ」をやっつけるために、ウクライナにもっと武器を与えろと煽っているのだ。つまり、公然とナチに武器を与えているわけなのだけれど、恐ろしいことにこれが世界中でまかり通っている。その結果、世界中でロシア系住民が公然と差別されたり暴力をふるわれたりするようになり、対ロシアの経済制裁を加えることが義務であるかのような空気が作られ、抗議するロシアの外交官たちが、プロパガンダを広めているとして追放されさえした。
かくして、メディアはあっという間に世界的にナチの正当化という、最もあり得ないようなことを実現してしまったのだ。そして、さらに恐ろしいことに、テレビを信頼している多くの人はそれがナチ化であることに気がついていない。
ところで、メディアというものはまさに大衆心理操作のためにあるのだという話がある。心理操作ではイギリスのタビストック研究所が有名だけれど、この研究所は何と、まさに人々を心理操作して戦争に向かわせるようにすることを目的にして作られたものだったのだと、ドイツの医学者のライク・ガルネ博士が4月に出した動画で言っていた。
この研究所の前身になる研究所が最初にできたのは1913年のことで、それはドイツとイギリスを戦争に巻き込むことを目的としていたのだという。つまり、まさに第一次世界大戦を起こさせる目的で作られていたのだ。この研究所は非営利組織として設立されたのだけれど、非営利組織というのは、実のところ資金を出している組織の言うなりに動くことになっている。この研究所に資金を出しているのは、英国王室やロスチャイルド家、ロックフェラー財団などで、つまり世界を影から支配しようと企てているシティ・オブ・ロンドンそのものだった。
1932年にタビストックの所長になった心理学者のクルト・レヴィン博士は、普通の平和的な人間をどうしたら戦争に駆り立てることができるのかということを研究していた。彼によると、人間は緊張状態にないときには、誰でも冷静に判断する能力があり、さまざまな角度からものを考えることができるのだそうだ。そこに通常の緊張状態が加わると、その判断能力が、最も効果的に問題を解決するべく動き始める。
ところが、この緊張状態が異常な強さになったとき、人はあらゆる判断能力を失ってしまい、動物のような状態になってしまうのだという。そうなると、人は外からどのようにでも操作することができるようになってしまう。これを集団的に行なうと、盲目的に動く群衆を作り出すことができてしまうのだそうだ。レヴィン博士のこの理論を使って、タビストック研究所はイギリス、ドイツ、アメリカを第二次世界大戦に巻き込むことに成功したということだったらしい。
普通の人々は戦争などしたいとは思わないものだ。だから、人々を戦争に駆り立てるには、正常の判断力を失わせる必要がある。そのためには、人を絶えず異常な緊張状態にさらせばいいということになる。パンデミックでもウクライナの戦争でも、テレビがやっていたことはまさにそれだと言える。昼も夜も恐ろしい映像を流し続けて、人にショックを与え続け、心理的パニック状態が続くように仕向けていたわけだ。
心理的パニック状態が続いたところで、何が悪者で、何と戦うべきなのかを、繰り返し断定するわけだ。心理ストレスが限界を越えて、判断能力を失う状態になっていた人々は、それを盲目的に信じてしまう。それで、ヒステリックに攻撃的な行動に走ることになる。実際、パンデミックのときには、少なからぬ人々がマスクをしていない人に対してヒステリックな攻撃性を向けるようなことになっていたし、ウクライナの戦争が始まってからは、ロシア系の住民に暴力をふるう人が続出していた。そして、それをメディアは問題視するどころか、さらに煽っていたのだ。
テレビこそは、大量破壊兵器だったのだ。核兵器も生物兵器も、人々が戦争に駆り立てられていかないかぎり、使われることなどない。ところが今、テレビで恐怖を煽られた人々は、ロシアをやっつけるためにウクライナにもっと危険な武器を送れと叫んでいるのだ。ロシア軍は市民など攻撃していない、あれはウクライナ軍がやっているのだと、あらゆる証拠を出して説明しても、判断力を失った相手を納得させることはできない。それこそはまさに、メディアが心理操作で作り出した状態なのだ。
一方、買収されたメディアではなく、一人で現地に乗り込んでいった個人のジャーナリストたちがいる。こうした人たちは、どんな組織からもお金をもらわず、SNSで発信して寄付だけで活動している。こういうジャーナリストたちが伝える情報は、テレビが伝えるイメージとは対照的だ。
テレビが伝えるイメージは、思考力が停止してしまうようなショックを与えてくる。だけど、一人で乗り込んでいったジャーナリストたち、ドイツのアリーナ・リップやスペインのルーベン・ジスベルトの伝える情報は、どんなに残酷な現実であっても、それに対して人は何かができるという感覚を与えてくれる。そうした動画には、実際にひどい破壊状態の中でも普通に生きようとしている人々の姿があり、助け合っている人々の姿がある。現実に起こることは、どんな状況であっても、必ず抜け道があり、進んでいける道があるものなのだ。そういうときには、人間は実にクリエイティブになり、解決策を見つけていく。そうした姿が、彼らの動画にはちゃんと映っている。
本来人間には、どんな状況でも冷静に判断し、最上の解決策を見つけ出す能力があるのだと、レヴィン博士も言っている。とりわけ危機の状態になったときには、その能力はさらに磨きがかかって、普通なら思いつかないような発想が出てきたり、普通なら出せないような力が出せたりする。タビストックは、まさにこうした状態に人々がならないようにして、そうではなく盲目的な群衆を作り出すために、非現実的な恐怖のイメージをテレビを使って送り込んでいるわけだ。
パンデミックのときも、テレビを壊せばパンデミックは終わる、とよく言われていたけれど、ウクライナの戦争も終わらせようと思ったら、テレビ局を破壊するのが一番手っ取り早いのかもしれない。集団ヒステリー状態になって、ロシアが悪い、ロシアをやっつけろと言っている人たちも、テレビが見られなくなったら、急速に正常な判断力を取り戻すのかもしれない。メディアを使った心理操作こそは、実は最大の大量破壊兵器だったのだ。20世紀に入ってから、戦争はほとんどがメディアを使った心理操作で引き起こされたものだったということがわかってきているのだけれど、このウクライナの戦争になって、ようやくそれがはっきりと見えてきたようだ。
私たちは100年以上もの間、同じ手で騙され続けてきたあげく、ついにそれを見破ったということなのじゃないだろうか? そこで見えてくるのは、私たち人間は、本来はどんな状況でも人々と調和して生きる道を見つけていくすばらしい存在だということだ。殺し合っていたのは、意図的な心理操作によって愚かにさせられていたからにすぎなかったのだから。
そのことに気づいたときにこそ、私たちは本当に新しい人間性というものを見つけるのじゃないかと思う。そして、私たち人間が本来持っている力によって、新しい文明、調和する世界が織りなす文明を始めていくことができるのがわかるのじゃないかと思う。
***
画像は、平和が戻り、復興が始まっているマリウポリの人々

by めい (2022-04-27 05:20) 

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