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「持っててナンボ」から「使ってナンボ」の経済へ [ロシア]

義叔母の葬儀で東京へ出かけて戻ったら、田中宇氏の記事が2本届いていたのをゾクゾクしつつ読み切ったところ。

27日、「地方を豊かにする会」発足総会に参加してきた。昨年8月の三橋貴明氏の講演会を機に準備が進められ、この日発足にこぎつけた。三橋氏の説くMMT(現代貨幣理論)に基づく財政出動を世論にしてゆくことで、地方を豊かにしようという会だ。しかし田中氏の記事を読みつつ、MMTの限界を思った。インフレが一定程度(2%ぐらい)に収まっていればMMTもいいが、もうそう言ってはいられない時代になっている。札を刷り続ければどこまでも物価は上がっていく。今の株高がそうであるように。《29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は4日続伸し、前日比338ドル30セント(1.0%)高の3万5294ドル19セントで終えた。》もう歯止めが効かなくなっている。そしていつか必ず来る金融崩壊。

三橋氏についてはmespesadoさんが昨日こう指摘している。(>>850《三橋さんの話は、一見すると非常に冷静で合理的な観点で論理的に分析しているので、いわゆる大手マスコミに同調する人たちによる、低次元の、呆れるような低次元の論評とは一線を画す、非常に納得感のある話だなと感じることが多いけれど、ときとして、例えば今回のウクライナ情勢の分析などで、どこか違和感を感じることがある。それは何なのかということを >>841>>843 で考えてみたけれど、そのときはわかったようなわからなかったような、まだ中途半端な気持ちだったけれど、今回気付いたのは、「個々の問題を論理的に考えるだけではダメで、一見別々の話に見える多くの問題の中から関係性がある問題を複数見つけてきて、それらを結びつける発想」が必要であり、それができるためには、もちろん関心を持つ視野を広げることは大切ですが、やはりそこに問題提起や問題解決のセンスというものが必要であり、そのセンスを磨くには、「大局観」というか、「非論理的な思考」の力を磨くことが大切であり、亀さんやはぐらめいさんや suyap さんなどがしばしばポジティブに取り上げる識者は、その能力が高い人が多いのではないのかな、という気がしています。》どうも事態の展開は三橋氏の視野を超えてしまったのかもしれない。

以下田中氏2本の記事から。会員版なので抄録です。今起こっている事態の展開のすごさが伝わると思います。金融中心経済から実物中心経済への大転換、「持っててナンボ」から「使ってナンボ」の経済です。多くの仕事が「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」として消えてゆきます。

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世界を多極化したプーチン

《ウクライナに侵攻したロシア軍は、ウクライナ側の軍勢(主に極右民兵団・アゾフ大隊)を掃討していき、戦闘は終わりつつある。これまで最も激しい戦闘が行われていたのはアゾフ大隊の中心地であるドネツク州のマリウポリだった。そこでは極右たちが市民を人間の盾にして市街地に立てこもった。市街を包囲した露軍が人道回廊を作ったのに、極右は市民が人道回廊を通って市外に避難することを許さず、事態が膠着していた。しかし露軍はしだいに人道回廊を機能させて人間の盾にされていた市民を避難させ、市民の避難後に露軍が極右を制圧し、市街地を少しずつ解放した。3月24日にはマリウポリの中心街や市役所から極右が排除され、露軍の占領下に入った。極右は市内の南部に退却し、そこを最後の拠点として露軍に対抗しようとしている。中心街から極右が排除されたことで、マリウポリの戦闘は山を越えた。》

ウクライナでの戦闘はロシアの成功裏に終わりつつある。しかし、激しい米露対立はずっと続く。米国は、自国中心の経済覇権体制からロシアを完全に排除したい。ロシアも今や米国覇権を全否定しており、米国の経済覇権体制から完全に離れたところで、ロシアと中国など友好諸国(BRICSや途上諸国)との非米的な新たな世界経済体制を作っていきたい。ウクライナ戦争の開始とともに、米国の覇権は、全世界を支配するものから、米欧日など先進諸国だけを支配するものへと、領域が半減した。米国側(先進諸国)では引き続きドルが基軸通貨であるが、非米側ではドルが決済通貨として使われなくなる。ドルや米国債を備蓄していると、いつ米国から敵視されてロシアのように資産凍結されるかわからないので使えない。非米側は当面、各国の通貨や金地金を決済通貨として使う。ドルは、世界の半分でしか通用しなくなった。世界経済は、ドル側と非ドル側に分裂した。》

これまで石油ガスを国際取引するための通貨は米ドルと決まっていた。石油の国際価格はドル建てで表示され、ドルがないと石油を買えなかった。このドルの機能(唯一の基軸通貨・国際決済通貨としての地位)が「ペトロダラー」であり、それが米国の経済的な強さ・覇権の象徴だった。ところが今、ドル決済のSWIFTから追放されたロシアが報復として「非友好諸国には石油ガスをルーブルでしか売りません。ドルやユーロはもう使いません」と言い出している。これはロシアがペトロダラーと米国覇権を否定し、代わりに「ペトロルーブル」を掲げ出したことを示している。これは「ペトロダラーや米国覇権を終わりにしてやるぞ」という政治的な表明であり、実際の決済時のロシアの対応はもっと柔軟なはずだ(買い手がロシア敵視を扇動せずいい子にしている限り)。米国が対露制裁に協力しない非米諸国全体を敵視し始めているので、今後、非米諸国間の貿易におけるドルの比率は大幅に減る。ペトロダラーは本当に終わる。

ドルは非米側で使用禁止にされうるし、ルーブルは米国側で使用禁止にされうる。使用禁止にされ得ない通貨はないのか。実は、ある。金地金だ。》

米欧日は金地金を軽視し、米国債を資産の中心にしてきた。しかし今、米国債の価値はどんどん落ちている(金利がどんどん上がっている)。近いうちに米連銀のQEが終わると、米国側はもっと激しい金融崩壊になる。米国側のレバレッジ(金融詐欺)がぜんぶ剥げ落ちる。ここでも、非米側が勝ち組で、米国側が負け組だ。》

プーチンは世界を二分し、中国やBRICSなど非米諸国の全体を米国覇権から決別させた。米国覇権は「世界全体」から「世界の一部」に格下げされた。プーチンは世界を多極化した。》

バイデンの側近の中に隠れ多極主義者が何人もいて、米欧要員の総撤退をバイデンにやらせ、プーチンが大胆にウクライナに侵攻できるようにした。その結果、米覇権は劇的に縮小し、世界は劇的に多極化しつつある。 》

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現物側が金融側を下克上する

欧日は、ロシア政府がどんな条件を出そうが、それに従わないわけにはいかない。今の米国は、政府の戦略としてでなく大統領の気分で「プーチンを辞めさせるべきだ(政権転覆すべきだ)」と言ってしまう国なので、大統領の気分みたいな感じで属国群のG7にルーブル払いの拒否を決めさせた。だが、欧日は現実的にルーブル払いを拒否できない日本政府は、G7で決めたロシア政府資産の没収をやりたいが国内法がないので残念ながらできません、と言い訳してロシアとの敵対を事実上軽減していく策をとり始めた。自民党と官僚は無能な小役人を演じて、同盟諸国を自滅させようとする国際圧力から国益を守ってくれている。コロナの時も今回も。いつもおつかれさまです。》

15年前から、現物コモディティの多くは非米側が持っていた。反米諸国に移る石油利権)/なぜ米国側は現物コモディティの利権を手放してしまったのか。それは、現物よりも、現物の取引と連動している金融取引の方がはるかに儲けが大きく、取引も巨額になっていたからだ。株や債券、ETF、信用取引、先物、ヘッジ、レバレッジ、デリバティブなど金融の分野である。保管や輸送などの汚れ仕事に手間がかかる現物の事業は儲からない「下位」のものなので新興諸国(非米側)に利権を渡して下請けさせ、スマートな米国側の先進諸国は、金融の技術を使って現物の取引を操る「上位」にいる、というのが最近までの世界的な上下関係だった。製造業でも、最先端の儲かるハイテク技術だけを米国が握り、その下の薄利な現業部門は中国など新興諸国に下請けさせ、現業部門の運営資金を米金融界が供給するという上下関係も作られた。》

冷戦後のロシアも、コモディティ産出しか能のない新興諸国として過ごし、米英金融筋によって何度も金融危機を起こされてきた。覇権の最上位にいた米英の金融システムは、2008年のリーマン危機で実のところ自滅したが、その後も中銀群のQE策(過剰造幣による相場テコ入れ)によって、あたかも金融システムが蘇生しているかのようなニセの状況が作られてきた。ニセの状況を作ってバブルを維持するのも米国側の金融技能の一つだ。だが昨年来、世界的にインフレがひどくなってQEが終わりに向かっている。 》

今回のウクライナ戦争によって劇的に始まった徹底的な米露対決は、これまで下位にいて米英から虐げられてきた現物コモディティの国だったロシアが、同様に虐げられてきた他の非米諸国(新興諸国、現業諸国、現物コモディティ産出国)を巻き込んで、上位にいた米国側(米欧日、先進諸国)に対する下克上をやり出したことを意味する。現物コモディティの利権を握っている非米諸国は、これまで下位にいたものの、結束すれば世界のコモディティ利権の大半を握っている。今回のように非米側が結束すると、金融で支配してきた上位の米国側と対決して勝ち、米英覇権を転覆して非米側が世界の主になる多極化を成功させられる。》

非米側はこれから発展する人口大国の集団だ。人口大国群が発展して経済力をつけて米英をしのぐ国際政治力を持つと、米英覇権が崩れて多極型覇権に転換する。それを防ぐため、米英の覇権主義勢力は、非米諸国で金融危機を誘発して潰したり、人権侵害の濡れ衣をかけて経済制裁してきた。しかし今、プーチンと米隠れ多極主義者の隠然合作によって非米側と米国側が完全に分離したため、これ以上米国側が非米側の経済発展を邪魔することができなくなり、非米側の何10億人かが、貧困層から中産階級にのし上がって消費力をつけていく道が開けている。非米側は、もう米国側にピンはねされたり成長を阻止されたりせず、自分たちの成長の果実を自分たちで使えるようになる。コモディティと巨大な消費市場の両方を得た非米側が台頭し、金融バブルと覇権の支配力の両方を失う米国側が弱体化しいてく。》

▼世界の半分がドルを棄てた日

リーマン危機の直後、私は「世界がドルを棄てた日」という本を書いた。米英の金融覇権を支えてきた債権金融システムは、リーマン倒産でいったん全面的に凍結・崩壊した。当時、米英中心のG7に代わって多極型のG20が世界経済の意思決定機関になったり、ドルに代わる基軸通貨体制としてIMFのSDRが取り沙汰されたりした。世界がドルを棄てつつある感じがあった。しかしその後、米連銀や日銀がQEの資金で金融相場をテコ入れして相場が再上昇し、まるで金融が蘇生したかのような状態が14年間続いてきた。QEの策略を予測しなかったので私のドル崩壊予測は外れ、ドルは延命した。実際は、民間の需給が自力で蘇生したわけでなく、QEが終われば再び金融崩壊だ。 》

プーチンが今回のタイミングで下克上の米国覇権転覆を試みたのは、金融で世界を支配してきた米国の覇権を、リーマン危機による金融崩壊に一本柱で支えてきた米連銀のQEが3月初めで終わるからだった。米連銀はその後もこっそりQEを続けており、私だけでなく米国の分析者ピーター・シフのサイトも、連銀がこっそりQEを続けていることを指摘している(私の妄想でないことが確定した)。しかし英カナダなど他のアングロサクソン諸国はすでにQEをやめてQTに入っている。米連銀がQEをやめるのは時間の問題だ。QEをやめると米国側が金融崩壊し、米国覇権を支えてきた金融技能が無意味になる。》

日銀だけは、まだQEとゼロ金利を続けているので円安が止まらなくなっている。円建ての石油ガス鉱物の価格がどんどん高騰する。円安を止めるには日銀がQEをやめねばならないが、そうなると日本の株が暴落する。日銀は日本の上場株の半分以上をQE資金で買ったETFの形で持っており、これを売ってQEの円を回収することになるので株暴落になる。大幅な円安は輸入インフレを招き、日銀はQE中止と利上げを迫られる。そして株が暴落する)》

中露など世界の半分(非米側)はドルを棄てた。非米側は同時に、米英が冷戦終結時に作った債券金融システムを国内金融に導入してきたこともやめていく。株や債券のバブル、投機的な先物取引、デリバティブの金融商品、レバレッジを効かせた金融取引など、以前は金融の花形だった部門をぜんぶ棄てる。そもそもこのバブルそのものの金融花形はリーマン以降、世界的に低調になっていたが、それがさらに今後は、非米側で金融バブルの膨張が許されなくなる。中国は習近平の就任以来、国内の株や不動産のバブルを積極的に潰す策をやってきた。金融バブルは、冷戦後の米英経済覇権の象徴だった。非米側は今後、ドルや米国債だけでなく金融バブルを肯定するシステムを棄てていく。代わりに非米側は、石油ガス鉱物穀物や金地金などコモディティの現物を資産として保有していく。非米諸国の通貨は金本位制に近くなる。》

露中などが非米側が出ていった後の世界の残りの半分である米欧日など米国側は、今後もドルや米国債、金融バブルやQEに依存していく。非米側は現物のコモディティを保有し、米国側は現物を金融商品化したバブル(泡。幻想物)を保有している。今回、世界のコモディティ現物の大半は非米側に行ってしまっており、米国側にあるのは本物のコモディティでなく、コモディティ関連の金融商品(バブルの産物)である。QEを続けている限り、金融バブルはおおむね保たれ、現物よりもバブルの方が合計金額的にはるかに巨大だ。しかし、いずれインフレの激化を理由にQEを本当にやめねばならなくなると、バブルは崩壊し、価値がほとんどなくなっていく。 》

今は金地金の価格も、米英金融界がQE資金を使った信用売りによって引き下げている。金相場は一般に、地政学的な大事件や戦争やインフレがあると高騰する。今回のウクライナ戦争はまさに世界大戦級の地政学的な大事件であり戦争だし、インフレも世界的にひどくなっているが、金相場は1オンス2千ドル以下に幽閉され続けている。他のコモディティは高騰しているが、金地金だけ上がっていない。米英金融界が、ドルの究極のライバルである金地金の相場高騰を信用売りによって阻んでいると考えるのが妥当だ。米連銀がQEをやっている限り、金相場は上昇を抑止され続ける。この状態は、金地金をドルに代わる国際決済通貨として使おうとしている非米側にとって都合が悪い。》

QEが続いている限り、株や債券の相場は上がり続け、金相場は抑止される。QEが終わると、金融崩壊と金高騰の両方が起きる。米連銀は、国内的な政治圧力がなければずっとQEを続けるつもりだろうから、米政界がいつ連銀への圧力を再び強めてQEを本当に終わらせるかが、プーチンによる下克上の全体的な展開の速さを決める。中国が米国債を売り払うまでQEが続くなら展開はゆっくりになる。そうでなければQEは間もなく終わる。 》

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