SSブログ

「四季南陽」構想、グレードアップ! [地方再生]

隈研吾さんが設計する宿泊施設のイメージ(隈・奥山両氏の事務所が共同作成)


日経2021.1.8.jpg今朝の日経東北版にビッグニュース。デジタル版には「奥山清行氏、山形・南陽で温泉施設再生 設計は隈研吾氏」の見出しで、東北方向高台から見たイメージ図もカラーで掲載。「新春なんよう」での奥山氏のビデオメッセージを聞いた限りでは一抹の不安もあって、つい「うまく軌道に乗ってくれるよう祈りつつ」と書いたのだが、とんでもない大きな構想で事は運んでいたのだった。

記事の最後に、隈氏の話として《山形県南陽市の建設予定地を視察した時、自然の美しさに圧倒された。渓谷の美を最大限に引き出せる建築を目指す。滞在する人がそれぞれ渓谷の美と向き合い、精神的体験を可能にする深みのあるリゾートが生まれると思う。》とあるのがうれしい。「渓谷の美」とはこれまで考えたこともなかった着眼だ。「精神的体験を可能にする深みのあるリゾート」の言葉が重い。熊野大社も視野に入ってのことと思われる。奥山氏のメッセージにも《昔ながらの上杉家の歴史とか。それから熊野大社があったりとか、それから童話の宝庫であったりとか、一般の方が思っていらっしゃる以上に、南陽市というのは宝の宝庫であり、文化の宝庫》との言葉があった。あの言葉を聞いた時、実は私がとっさに思ったのが小田仁二郎だった。寂聴さんにリンクしてゆくし、深いところで井筒俊彦ワールドへも。世界レベルの「南陽ブランド」の可能性がおおいに現実化してゆく。

建築的欲望の終焉.jpg30年近く前に、隈研吾氏の本を買っていた。いつどうして買ったのかの記憶もないし、何かに惹かれての衝動買いで、気になりながらの積読本だった。煤けていたのを引っ張り出してきた。『建築的欲望の終焉』(新曜社1994.12)。帯に《[住宅私有本位制]資本主義の行く方/[住宅私有の欲望が二十世紀の資本主義の原動力だった。][住宅は女性による家庭支配のための機械である]など、建築と住宅をめぐるわれわれの欲望を鮮やかに読み解く。》とある。隈氏40歳の時の著だ。とりあえず「あとがき」を読んだ。著者は1980年代世界的なバブルの崩壊に伴う「建築不況」を、人間の内面から突き崩す「建築的欲望の終焉」と考える。《建築といったエサを目の前にぶら下げることによって人々の欲望を喚起、誘導し、そのエサを与えることによってその欲望が充足されたという幻想を人々に与え続けてきた。この文明の本質が問われているのである。》以来日本は、デフレの泥沼に落ち込んで今に至る。いつの間にかひとり日本は世界の成長から取り残されてしまった。財務省のせいといえば財務省のせいだ。しかし、MMTの常識化とともに、そこから脱出の道筋は見えてきた。ではその先何をどうつくっていけばいいのか。隈氏はこれから先までを見据えた建築家のように思える。南陽が、新しい建築世界への実験場になるのかもしれない。期待したい。

以下は日経記事全文。

*   *   *   *   *

奥山清行氏、山形・南陽で温泉施設再生 設計は隈研吾氏

世界的な工業デザイナーの奥山清行さんが建築家の隈研吾さんやイタリア料理店「アル・ケッチァーノ」のシェフ奥田政行さんと組み、山形県南陽市で初の温泉リゾート開発に取り組むことになった。目玉となる宿泊施設を隈さんが設計し、飲食部門を奥田さんがプロデュースする。デザイン・建築・食の分野で知名度の高い3氏のそろい踏みは大きな話題になりそうだ。
工業デザイナー、奥山清行氏

開発するのは南陽市が同市上野に所有していた旧温泉施設「ハイジアパーク南陽」とその周辺の敷地の計12ヘクタール。同施設は1992年に開業したが、来場者の減少などで経営が悪化し、2021年3月に閉館していた。

奥山さんは同施設や敷地を市から事実上譲り受け、10億円かけて新たな温泉リゾート施設「四季南陽」として再生する。すでに運営会社「四季南陽」(南陽市)を設立しており、遅くとも今秋には工事に着手し、23年9月までの開業を目指す。

隈さんは新国立競技場を設計した日本を代表する建築家。奥田さん(山形県鶴岡市出身)は伊料理界の人気シェフ。奥山さんは仕事などを通じて面識がある両氏に協力を依頼した。

建築家、隈研吾氏

隈さんが設計するのは中核となる宿泊施設。敷地の南東側を流れる沢に面した雑木林に新設する。玄関やロビー、飲食部門を備えた施設と2階構造の宿泊施設を通路で接続する。部屋数は計30。全部屋に露天風呂を付け、景観を楽しみながら入浴できる構造にする。

部屋の広さは30~100平方メートル程度。一定のグレード以上の部屋にはサウナや水風呂も併設。1人当たり宿泊料金(2食付き)は1泊5万~10万円程度を見込んでいる。木材相場高「ウッドショック」などの影響もあるが、できるだけ木材の温かみが感じられる建物を検討したいという。

一方、奥田さんがプロデュースする飲食部門は塩とオイルで食べる新感覚のすしや米沢牛を使った鉄板焼きのコースなどを想定。日本酒や地元産ワインを提供することも検討する。食事はガラス張りで開放感のある定員60人規模のレストランで楽しむ形態にする。

イタリアンシェフ、奥田政行氏

奥山さんはフェラーリ、ポルシェ、コルベットなどをデザインした世界的な工業デザイナー。豪華寝台列車「トランスイート四季島」のデザイン・プロデュースを手がけた経験もあり「温泉や地元食材、自然景観も楽しめる豊かな観光資源を生かした高級リゾートを目指したい」と意気込む。

立地は山形新幹線の赤湯駅から2・5キロと近く、首都圏からの来客も見込めると地元関係者は期待している。閉館中の旧施設「ハイジアパーク南陽」(4800平方メートル)の再活用も検討する。南陽市は源泉利用や資金面などで再生を支援する。

奥山さんがリゾート開発を手がけるのは初めて。これを機に国内外でリゾート開発・再生事業に参入する。すでに国内や米西海岸で複数の案件が打診されているという。

◆隈研吾さんの話
山形県南陽市の建設予定地を視察した時、自然の美しさに圧倒された。渓谷の美を最大限に引き出せる建築を目指す。滞在する人がそれぞれ渓谷の美と向き合い、精神的体験を可能にする深みのあるリゾートが生まれると思う。

nice!(1)  コメント(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。