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「知恵で何とかなる世界ではなさそうです」(堺のおっさん) [地方再生]

上神谷p_niwadani.png昨日の記事「地域の力 結集」に堺のおっさんからの貴重な忠言(472)です。堺のおっさんが「酒米作りの分野で関わった」日本酒「上神谷」、昨年5月の東北一郎会に送っていただいて体験済み、「重味(おもみ)」の記憶がある。あらためて味わってみたくて注文しました。(→http://shop.kitashouji.jp/?pid=136145873

30数年前から10数年、日本酒ばかり飲んでいた時期がありました。今はもう無い高畠町夏刈「紅一点」の蔵元長谷川平内さんの指南によってでした。(「紅一点」の酒がコトバンクに残っていた!→https://kotobank.jp/word/%E7%B4%85%E4%B8%80%E7%82%B9-494000吹原産業事件を題材にした梶山季之『一匹狼の歌』のモデルになったほどの事情ある蔵元で、銀行取引停止で資金力がないため醸造用アルコールを仕入れることができないということもあったのだろうが、どこも純米酒など造る酒蔵のない時代にひたすら純米酒を造り続けた。あらかじめ米を購う金もないわけで、予約制で前金を集めながらのやりくりだった。見るからに綱渡りだったが、全国にファンがいた。獅子の会メンバーが関わってのつきあいで、「悪酔いするのは醸造用アルコールのせい。うちの酒はいくら飲んでも悪酔いしない」ということで、泊まり込んで飲み明かしたこともあった。以来、純米酒信仰が深く根付いた。そのうち純米酒がどんどん出回る様になって、長谷川さんも亡くなって「紅一点」も無い中で、「紅一点」の先見性を思わされていたわけだが、出回る純米酒は「紅一点」とのちがいは明らかだった。すぺらっこい、という感覚。その辺の事情を「東の麓」の製造部長に聞いて納得したことがある。(→「東の麓」新藤製造部長の話 2.純米酒とアルコール添加酒https://oshosina.blog.ss-blog.jp/2017-02-24

くらべる東の麓product-img01.png堺のおっさんの発言で昔のことをいろいろ思い出し、また本来の酒造りの原点に思いを致すことにもなったが、今回の南陽市の取組みは、日本酒需要激減の中で、一体となってなんとか活路を開こうとする山形県蔵元連のチャレンジの一環として評価したい。(→「東の麓」新藤製造部長の話 1.「山形清酒」GI指定https://oshosina.blog.ss-blog.jp/2017-02-23中でも先代社長亡き後、生え抜きの「若い衆」が牽引する、若い人をターゲットにした「東の麓」の戦略はたしかにうまくハマっている。エールを送りたい。そんな思いあっての昨日の記事でした。

放知技板の過去ログから、堺のおっさんの米づくりに関わる発言を見つけたので、あわせて転載させていただきます。

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472:堺のおっさん:2020/12/25 (Fri) 22:23:59
「地域の力 結集」 [地方再生]
https://oshosina2.blog.ss-blog.jp/2020-12-25-1

はぐらめいさんのブログを読んで常々考えていたことを書きたい。
地域の力を合わせて日本酒を作ろうというプロジェクト。
私も酒米作りの分野で関わったので何が問題か少しは理解しているつもりです。
①酒は製造から販売までものすごい規制が横たわっている。
②日本人が日本酒を飲まなくなっている
③良い酒は良い酒米からしか作れないが、その作り手がほとんどいない。
無農薬でコメを作れる技術は特殊技術になります。
申し訳ないが、有機米レベルで本当の日本酒は作れません。
必ず、流行りの吟醸酒になるはずです。
その分野では4合瓶で1000円という値段で大手が
ほとんど差のわからない「日本酒」を大量生産して有り余っています。
そんなわけで本当に誇れる日本酒を作ろうとするとまず赤字です。
そりゃ化成肥料撒いて、農薬振って作れば何ぼでもできる。
特に吟醸酒はは種類によっては最低40%は削るので
粒の大きさが要求されますし、化成肥料と農薬で1等米は楽にできます。
有機米といっても農薬は使います。
そのお米は、発酵力が劣ります
そこで、流行りの吟醸種でなければろくな酒になりません。
なぜ吟醸酒(それも大吟醸酒)が流行るのか
誤解を恐れずに言えば混ぜ物だからです。
実際本当の日本酒に近い純米酒はなかなか見当たらない
我々も吟醸酒は作りますが、本当に売りたいのは純米酒。
さらには研磨10%の普通酒。特に、この普通酒はなじむと格別。
日本酒のわかる人でなければ理解できないものでもあります。

そこで、発想を変えてみることにしました。
日本酒を作るのではなく、地酒を作ると。
地元の人間が消費すれば売り切れ。
生産量も限られます。
ホントの話、それくらいしか作れないのです。
発酵タンク2~3個くらい、4合瓶で3~5000本くらい。
ある意味地酒の地産地消
極端な話、地元の祭りでみんなで消費すればなくなっちゃった!
位のスタートが本当の日本酒造りにつながると。
販売の心配もない。消費する分だけ清算する。
そして、ここが肝なんですが…
その名酒を飲みたければ、ここへ来なさい…という設定。
勿体付けてるのではなく、今はそれが王道と信じています。

私たちが手掛けた酒造りを聞きつけて周りでも
やってみようといくつか動き出しているのですが…
話を聞くと海外に持っていくとか、ネット販売だとか…
だいたいそんな話が出てくる。
心の中で「やめとけ」とつぶやきながら悲しくなる。
ブドウを絞れば勝手にできてしまう葡萄酒に比べて、
日本酒は、熟練の杜氏さんでも毎年満足できないくらい
工程も複雑だし、純米酒で毎年同じ味をキープすることは難しい
ましてや麹の選定はキモ中のキモ。
お米に合う麹の発見は杜氏さんの腕の見せ所
だからこそ、地酒として定着することが王道なんです。
そして飲みながら「今年のはいいねえ」とかの会話が
普通に出るようになって、地酒になるのです。
ふるさと納税用であるとか、海外輸出とか…
ハッキリ言いますが名酒はできません。
水を差すようですが、知恵で何とかなる世界ではなさそうです
その上、酒税も厳しいですよ。
タンクの数で納税額がほぼ決まっています~。
それやこれやをクリアーしながらでも、
酒造りを通じて地域でお金が回ること
それが長続きと地域活性の礎になるコツではないかと。

余談ですが…酒税は高杉君


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先読み上手なオッサンたちの闘論スレ -35-
名前:堺のおっさん  2018/09/28 (Fri) 05:31:40


食糧安保の議論の本質についての私見。
私は、この問題の視点に日本の食文化の変化を加えたほうが良いと思います。
ついで、廃棄される600万tを超える食材の存在も考えたほうが良いと。
さらに言えば、カロリーベースではなく、金額ベースでいうと
日本の農業全体では80%あたり。結構、健闘しているんですね。

しかし農業も産業であり、従事することで生活が成り立たなくては空論
したがって、消費者の視点だけでは本質が見えなくなるし、
と言って、生産者の都合のみで語るのも素性というものを無視した話になる。
補助金で保護すれば解決するものではない。

私はかれこれ10年、近場でコメ作りや野菜作りに関わってきました。
嫁の実家がコメ農家ということもあって農業の実態に触れる機会も多かった。
結論から言うと、「現状、農業では飯を食えない」と。
特に、本来日本人の主食であったコメが本当に作り甲斐のないものになっている。
利益が出る規模は、やり方や田んぼの状態にもよりますが、
最低でも3ha(3町歩)ほどの田んぼを必要とする。
10a(1反)で400kgが平均的なコメの収量ですが、
玄米ベース30kgで7000~10000円が売値。
1反の売り上げはよくてもせいぜい15万円まで
ここから機械の減価償却や水代や肥料・農薬代を差し引くと赤字。
ようやく利益が出てくるのは3町以上やって、それでも年間100万円
当然兼業でなければやっていけない
こんな状態であっても、どなたか一からコメ作りやってみますか?

この例は、在来農法(農薬・化学肥料を使う)農法での試算。
無農薬・有機肥料でやると、今度は大規模化が難しい。かつ、膨大な労力。
そこで玄米30kg20000円くらいの値段をつけないとやってられない。
その価値を理解し、買ってくれる市場はほとんどありません。
おそらく、1%以下でしょう。統計的には誤差の範囲ですね。

戦後70年かけて欧米化した食文化が簡単に変わると思いませんが、
今議論されているベースは現在の日本の食文化にこそ、
つまり、日本人がコメを食わなくなったことこそ最大の問題である!
この視点が抜け落ちているように思います。
ただ、よく言われる「和食」の世界的ブーム。
突き詰めると、「旨味」という概念が和食にはある
世界の食文化の中でもこれを確立しているのは日本だけ。
その本質は「アミノ酸」ということになるのですが、
この辺りをブレイクスルーしていけば、日本の農業は
輸入国から輸出国に転換していける展望が開けるかもしれません

あしたから、私もパンを止めよう。(爆)
あっ、実は山田錦という酒米の品種を仲間と死ぬ思いで今年も4反ほど生産。
初期除草から始まり、7月いっぱい炎天下でジャンボタニシ駆除。
8月は水管理に毎日追われ、今度は台風。
もちろん、無農薬・有機肥料で作りました。なので売価は30kg15000円
昨年は酒蔵では杜氏さんが、「なんや、このコメは」と驚く未体験の発酵
大変苦労されたそうです。(ほとんどの山田錦は在来農法、薬漬け)
なんやかんやで「上神谷」というネーミングの4合瓶になりました。
飯山氏に飲んでもらいたかったなあ。
大変高価な日本酒になりましたが、飲んでみたいという奇特な方は
かんだいショップにお願いしますので、そちらで試してみてください。

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