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宮内に流れる名家大江氏の血脈(南陽市民大学講座)(2) [地元の歴史]

野見宿禰.jpg先に挙げた系図は平城天皇から始まっていますが、さらに遡ると土師氏から始まっていることになっています。

◎土師氏
 大江氏の源流は古代氏族土師氏(はじし)とされます。 葦原中国平定のために出雲に遣わされたのに、大国主神を説得するうちに心服して地上に住み着き、3年間高天原に戻らなかった天穂日命(あめのほひのみこと)の末裔野見宿禰(のみのすくね)、出雲から大和に来て当麻蹴速(たいまのけはや)と相撲対決、圧倒的な力で殺してそのまま大和に住み着き、殉死者の代用品である埴輪を発明したというのが土師氏の起こり。4世紀末から6世紀前期までの約150年間、古墳時代の古墳造営や葬送儀礼に関わる。やがて土師氏の一族は、桓武天皇にカバネ(王権との関係・地位を示す呼び名)を与えられ、大江氏・菅原氏・秋篠氏に分かれていった。学問名家大江・菅原両氏の祖。

大江氏と菅原氏はもとをたどると一緒です。これで思い起こしたのが熊野大社の菅原神社(お文殊様)と融通神社です。菅原道眞公を祀る菅原神社と長井家第2代泰秀が祀られる融通神社が同一社殿の裏表になっているのです。関連あるのかどうか。菅原神社は尾崎氏が飯山から遷した神社です。融通神社については定かでありません。ネットで見る限り、融通神社というのはここ以外見当りません。なぜ「融通」神社なのか。金のやりくりを助けてくれる神様であることは私自身で実証済みです。巳年の一代神様です。苦労させられた娘が巳年生まれで、この神様にはほんとうに助けられました。
私が大江氏を意識するようになったのは、二十数年前「ニューリーダー」という雑誌に馬野周二さんが連載していた「古代史の謎」というシリーズで「大江匡房と『闘戦経』」という論考を読んだ時からでした。『闘戦経』が古来日本精神を体現する兵法書として紹介されていました。

◎大江匡房(まさふさ 1041-1111)

大江匡房.jpg 大江広元の曽祖父。8歳にして『史記』『漢書』『後漢書』に通じていた。求められるままに詩を即興した11歳の匡房に、関白藤原頼道「天に受けた稟質、成長の暁は人にこえて大位に到るであろう」と感嘆。25歳の源義家と23歳の匡房、相対し気脈を通ずる。「軍兵野に伏す時は、飛雁行を乱る」は匡房の示唆。

その義家が宮内熊野神社に柵を構え、安倍貞任・宗任軍と厨川(吉野川)を挟んで戦ったという伝えもあります。熊野宮の神験あって熊野の森から飛び立った数万のカラスが敵陣を襲い、日没の頃には神風が吹きまくって貞任の兵はたちまち潰滅したと「熊野宮由来記」は伝えています。義家は鎌倉権五郎景政に命じて紀州熊野三社を勧請、その時植えた銀杏が今の大銀杏と伝えられます。

また後三条天皇(1032-1073)の皇太子時代から学問の師として仕え、後三条天皇治世のブレイン役。

後三条天皇による「延久の善政」は、匡房に依るところが大きかったと考えられます。
〇「延久の善政」

後三条天皇は大江匡房の考えを取り入れ、藤原摂関家とは一線を画して日本古来の政治のあり方を復活させようとしました。菅原道真公が遣唐使を廃して日本古来の道に還ろうとしたことに対応します。それが「うしはく(領)」から「しらす(統)」への転換でした。
 藤原摂関家による「うしはく」政治から、日本本来の「しらす」政治へ
 《「ウシハク」は、「国の主人となって領土領民を私的に支配すること」、つまり西洋や大陸のかつての王国で行われたことや、国家による他民族の奴隷的支配構造などにおける統治手法を示す言葉です。・・・世界中が19世紀までずっと「ウシハク」という統治形態しか知らなかった世界にあって、唯一日本では、はるか太古の昔から「シラス」国を築いて来たし、それが天照大神(あまてらすおおみかみ)様の御心であるということなのです。》(シラスとウシハク -シラスと日本人と天皇- なぜ天皇陛下は大切なのか?https://hologon.exblog.jp/22280742/
・荘園整理令(1069) 
 荘園(私領)の増加が公領を圧迫するようになったことから、不正に荘園化されたものを公領に戻す。記録荘園券契所の設置によって有力貴族や国司などの介入を排除。150年来の荘園整理令の徹底を図った。後三条天皇が藤原摂関家と縁戚がないためにできたことだった。
・天皇領の拡大
 皇室の経済基盤を強化することで、藤原摂関政治の専横からの独立。朝廷権威の復元。後三条天皇の治世はわずか4年で、息子の白河天皇20歳に譲位。その時後三条上皇は39歳。その後の院政への道をひらく。34歳で家督を治広に譲り、制約多い藩主の立場から自由になって、後見役として力を発揮した上杉鷹山公を思う。
・宣旨升
 升の統一による税の全国的公平化。
〇『闘戦経』
 日本最古の兵法書。日本に古来から伝わる「武」の知恵と「和」の精神の統合。「孫子」をはじめとする古代シナの兵法が、戦いの基本を「詭道」として権謀術数を奨励するのに対し、『闘戦経』を貫く基本理念は「誠」と「真鋭」。「孫子」と表裏をなす純日本の兵法書。
 《匡房あるいは大江氏の一人の書いた文書『闘戦経』が、あまりにも当時の宮廷官僚の思考を逸脱しており、到底日常処世の枠内のものではなく、この著者は透徹した歴史の行く先を明瞭に見抜いて、自らの家の行く先と国家の安定を願う心を内心深く蔵していたと考えるからである。この家の深慮が伝えられていたからこそ、広元に至って鎌倉に下ったのであろう。/私は戦国の世を納めて太平を開いた家康を高く評価してきた。・・・頼朝もまた律令摂関政治の命脈が尽きたのを知り、代わるべき政治の形態を政治の専門学者広元に託したのではなかったか。そこには京都朝廷との継続性の考慮があったろう。匡房はそのことあるべき遥か以前に理解し、自らの到達した思想の精華をこの一書に託し筐中深く納めて児孫に遺したのではなかったか。》(馬野周二「大江匡房と『闘戦経』」)

*   *   *  

《参考》心に「武」を秘めているか (『闘戦経』第1章)
【原文】
 我が武なるものは天地の初めに在り、しかして一気に天地を両つ。雛の卵を割るがごとし。故に我が道は万物の根元、百家の権與(けんよ:物事のはじまり)なり。
 【現代語訳】
私たち日本人の「武」というものは天地の初めからあるものである。その「武」の力によって天と地が分かれたのだ。それはまるで雛が卵の殻を割るように自然なことであった。私たち日本人の「武」の道はすべての根元であり、いろいろな考え方の大本になるものである。
 【解説】
 「武」という言葉は「矛」を「止める」という字からなっています。つまり「矛を収める」という意味も含んでいるのです。武によってすべてをやっつけてしまっては何もなくなってしまいます。武の力で混沌としたものに秩序を与えていくことが大事なことなのです。
 『古事記』の冒頭の部分の「天地初発之時」でも、世界の最初は混沌としているが、やがて天と地が分かれて秩序が生まれてくると書かれています。『古事記』に限らず多くの神話に共通するのですが、最初はカオス、混沌としている。そこに何かの力が加わって秩序が生まれる。秩序がないと文明が生まれても、発達しません。その秩序を生み出すのが「武」の力です。ですから「武」は破壊するだけでなく、それによって何かを生み出す、平和も保つ、ということです。例えば、新しい担任として小学校の教室に行く。そこはだいたいカオスです。教室に初めから秩序があるわけではありません。そこで先生は初日に、威厳のある話し方で 「このクラスのルールはこれこれです。ルールを守ることで自由もあります。皆さんもきちんと守るようにしてください」といったことをきちんと話す。これによって子どもたちが落ち着き、教室にも秩序が生まれるのです。これは仕事でもまったく同じだと思います。新しい課長が来た、優しいけれどどこか優柔不断ではっきりしない。すると部下がなめてしまって、雰囲気がだれてくる。
 ところが、新しい上司がどこか「武」の気持ちを持っていると感じさせたらどうでしょう。ここでいう「武」とは腕力ではありません。当たりは柔らかくても、どこか強いものを持っている、根本的な部分では厳格で、いざという時はきちんと対応してくれる。そんな「武」を秘めている上司であれば部下からリスペクトされるでしょうし、部署の雰囲気も変わってくるでしょう。
 今のリーダーシップ論はチームワークが大事で、昔のようなカリスマ的なリーダーではなく、チームをまとめていく人が必要だと言われます。これは確かに時代の流れかもしれませんが、やはりどこかに戦う気持ちがなければいけません。戦う気持ちがなければ、チームはどこに進めばいいのかわからなくなる。あるいは士気や秩序を保つことができない。力も分散してしまいます。日本は平和な国ではありますが、『古事記』に書かれているように、最初は「武」の力で秩序がもたらされたという、古代の神話を踏まえての「武」の捉え方がまず書かれているのです。
 日本最古の兵書『闘戦経』に学ぶ勝ち戦の原理原則
『日本人の闘い方』 斎藤孝 (致知出版社)
〇百人一首第七十三番
 高砂の尾の上のさくら咲きにけり 外山の霞立たずもあらなむ(七十三 権中納言匡房)
  (あの山の峰の桜が咲いたなぁ 里の山の霞は立たないでほしいものだ)

《参考》日本を取り戻せ! ~大江匡房と延久の善政~https://www.youtube.com/watch?v=R_EWYfM73o4

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