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『量子コンピュータの衝撃』を読む [本]

量子コンピュータの衝撃.jpg『米中AI戦争の真実 』( 2019.12 )、『「5G革命」の真実 --5G通信と米中デジタル冷戦のすべて』( 2019.7 )、『日本のIT産業が中国に盗まれている』( 2019.1 )、『量子コンピュータの衝撃』( 2020,5 )の順で一通り目を通し終えた。まえがきに《エンジニアだけでなく文系やビジネスマンにも読みやすい本を目指して》とある。とはいえ、私にははるか先である。それでも、その初期イメージはおぼろげながら見せてもらえたと感じている。この先だんだんわかってくるにちがいないという手応えを少しでも得ることができたのは大いなる収穫だ。

古典コンピュータと量子コンピュータ.jpg量子コンピュータは古典コンピュータとどうちがうか。《古典コンピュータではビットごとに0か1の表現でビットを使ってきたので、複雑な数式を解く際には、コンピュータのなかで論理計算を幾つも組み合わせないと解けないところを、量子コンピュータでは一発で解ける問題もあるよということだ(何でも量子コンピュータの方が速いというわけではないが)。古典的にはビットは情報を象徴しているのみだが、量子ビットはそれ自体が情報となれる。》(58p)その結果、古典コンピュータでは苦手な因数分解が量子コンピュータでは簡単にできるようになり、その意味するところ、「暗号解読」の全能性へと限りなく突き進む。《量子コンピュータの台頭で暗号に意味がなくなる未来がやがて来る》(125p)。それは『歴史の終わり』の始まりである。《全ての人の行動がリアルタイムに監視され、政治思想も記録に取られていき、経済は暗号を解読できる一部の人間だけが握る。民主主義と自由経済が終焉してしまうが、中国共産党にとっての平和と安定が無期限に維持できる。全ての通信、移動、カネの流れが監視されているので、テロもクーデターという歴史的大事件も起こせるはずもなくなるのだ。》(157p)《中国が量子コンピュータを実用化すれば、プライバシーという概念は終わる。・・・・・プライバシーが終わるということは、自由が終わるということだ。》(158-159p)ちょうどこの時、米中対立が顕在化した。強引にも見えるトランプ大統領、そのわけがよくのみこめた。この先、希望はあるのか。

《量子コンピュータで最大のポテンシャルを持っているのは、実は日本だと考えている。コンピュータ技術、半導体技術、材料科学技術から、半導体製造設置技術だけでなく、量子コンピュータに必要とされるシリコンフォト二クスの技術をもっている。・・・日本は光量子コンピュータに必要な要素技術は揃っており、あとは旗振り役が現れるのを待つだけなのだ。》(180p)そしてこう宣言する。《フォトニクスという『光』ソリューションがデジタル全体主義者による監視システムと戦う武器になるというのは、天照大神という神のいる日本に相応しいソリューションだ。》(194-195p)最後はこう締められる。《通信技術、コンピュータ技術で、私たちは自分の国だけでなく、多くの人を守ることができる。盗まれた個人情報を技術で取り戻し、世界最高のコンピュータを構築することで、平和裏にデジタル全体主義を終わらせられる。/そう、監視社会に立ち向かうには、自分の弱さと決別し、日々学び、技術を磨くしかない。今日は小さな要素技術でも、日本中から集まれば世界最高のソリューションになる。新型コロナウィルスが蔓延し、それと同時に監視社会化が急激に進行している今だからこそ、日本中に散らばった要素技術をインテグレーションしなければならない。そして失敗すれば、そこから学び、改良して、より良いモノを作る努力をし続ける。/私たちは、それを『文明の始まり』と呼ぶ。》(198p)自から「旗振り役」を任じているように思える。アマゾンレビューのどこかに「国会議員になってほしい」とあったが、大いに同感である。

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