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「中国は台頭する(潰れない)」(田中宇) [現状把握]

「中国は台頭するか潰れるか」は、いまもっともシュンのテーマです。22日には米国が在ヒューストン中国総領事館閉鎖を命令-中国は報復表明」、すると昨日の日経一面トップ、「中国、データ規制へ新法/外国企業も対象に/米中対立先鋭化懸念」

深田萌絵さんを読み始めて3冊目、まもなく『日本のIT企業が中国に盗まれている』を読み終えるところです。《いま、中国にとっていちばんホットなのは、「AI」の技術なのだ。/なぜか。習近平が「部下を信じられない」からだ。/習近平の人間不信から始まった「社会信用システム」構築のために、中国は世界中からAI、スパコン、半導体技術を集めている。国内不満分子を何よりも恐れるあまり、国を挙げて監視システムを強化して》(『日本の…』38p)いる。そのやり方は手段を選ばない。その源をたどれば鄧小平だ。《青幇と組んだ鄧小平こそ、日本の技術を流出させ、「日本の家電の落日」を生み出した張本人である。世界中で諜報活動をさせるために「ファーウェイ」と「ZTE」を作らせたのも鄧小平だ。》(同74p)《鄧小平が中国企業にやらせた技術泥棒によって、日本のエレクトロニクス・メーカーは研究開発費用を回収できなくなり、いつしか下請けへの開発費用すら出せなくなった。日本の大企業を支えてきたのは実は中小企業だったのに、大企業が中小企業に開発費を出せなくなった。それが、日本の家電メーカーが斜陽産業となった最大の原因だ。》(同76p)

田中宇氏の見立ては「中国は台頭する(潰れない)」。日本はこの現実の中でどう対処してゆくか。狭くてもいずれ広がる道はある、そう思っています。

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中国は台頭するか潰れるか

2020年7月23日   田中 宇

中国は台頭しているのかどうか。米国と並ぶ超大国になるのか。それとも中共が政権崩壊して潰れていくのか。この問いは、中国の隣にある日本にとって特に重要だ。マスコミは以前から、中国はいずれ経済崩壊するとか、中国人が共産党を嫌っていずれ政権転覆するとか、米国と同盟諸国が中国を経済制裁して潰すとかいった論調に満ちている。マスコミ的には、中国は台頭してないし、してはならない。対照的に私自身は以前から、中国が台頭しつつあると分析し、これから中国がもっと台頭して覇権的に米国と並び、世界が多極化すると予測してきた。私は歴史分析(国連P5など)から「昔から米国が中国を台頭に導いてきた」と考えている。 (600年ぶりの中国の世界覇権) (米国の多極側に引っ張り上げられた中共の70年

中国(などあらゆる国)が台頭しているのかどうか判別しにくい。それには理由がある。現代の世界においては「国家」が人類の最高権力機関であり、国家どうしは対等だという国際政治上の建前があるからだ。ある国が台頭して他の諸国を凌駕・支配・覇権行使する場合は隠然とやることが多い。今の中国がそうだし、911までの米国もそうだった(911後、単独覇権主義を標榜した)。中国と米国との国際的な力量(覇権の力)の比較の検証も簡単でない。状況がわかりにくいので歪曲報道しやすい。中国は台頭しつつあるのか、それとも潰れていくのか、確定的に言えないので水掛け論にしかならない。 (米中百年新冷戦の深意

今回私が発見したのは逆方向からの分析で、中国が潰れていくシナリオの現実味が減っていることだ。中国が潰れるには共産党政権が混乱したり弱体化することが必要だ。(1)共産党の上層部での権力闘争が激しくなって習近平の独裁体制が崩れるか、もしくは(2)香港の民主化要求運動が大陸に波及して中国で反政府運動が激しくなるといったシナリオが具現化すると、中共の政権崩壊につながりうる。だが、2つとも実現の可能性は最近むしろ減っている。さよなら香港

習近平が権力に就く前、中共はトウ小平が敷いた路線に沿って江沢民、胡錦涛など党内民主主義を重視するリベラル(演技)国際派・親米派が集団指導体制を組んでいた。習近平が独裁を強化した際に権力をそがれた国際派が復活してくると(1)の中共上層部の権力闘争の激化が起きる。だが昨秋来、トランプの米国が中国への敵視を強めているなか、中共での議論の中心は米国からの敵視にどう対抗するかであり、米国と仲良くすることは選択肢に入ってこない。親米的なリベラル国際派の出る幕はむしろ減り、米国に対抗できる非米的な覇権国になるためリベラル主義の演技を捨てて権威主義的な中共独裁を強める習近平がますます強くなっている。米国が中国を敵視し続ける限り、中共は習近平の独裁が安泰で、権力闘争にならない。(私の見立てでは、トランプが中国敵視を強めているのは習近平を強化するためだ) (習近平を強める米中新冷戦

(2)の香港の民主化運動の大陸への波及は、新型コロナのせいで以前よりさらに現実味が乏しくなった。中共はコロナの感染拡大防止策として、中国に住むすべての人々への行動監視を強めている。中国の反政府運動家は、ほぼすべての行動を当局に監視されており、反政府運動を広めていくことが、コロナ前よりさらに難しくなった。外国人への監視も強まり、米国のマスコミの支局や駐在記者たちも閉鎖追放されている。米諜報界のスパイ(外国人、中国人)も中国で活動できず、米諜報界(軍産複合体)は中国の政権転覆を支援できなくなっている。(1)と(2)の両面で、中共の政権崩壊は前より起こりにくくなっている。After China Forced Out Reporters, Trump Hits Back With Severe Restrictions On Chinese Media) (Beijing Escalates the New Cold War

このほか中国崩壊の可能性は金融・経済の面からも取り沙汰されてきた。中国は金融バブルの膨張がひどくてバブル崩壊が近いとか、中国経済の成長が減速して人々の生活が悪化して中共への支持が減るといった見方だ。これらについても、具現化の可能性は減っている。中国の金融は昔からバブル状態だが、米国のように中央銀行のQE漬けになっておらず、むしろ当局はバブルの崩壊を健全化として推奨してきた。米国のバブルは崩壊するとシステム崩壊になるが、中国のバブルは崩壊しても大したことにならない。実体経済の悪化はコロナ後に起きているが、これは世界的な現象だ。すでに述べたように、コロナは中共の独裁をむしろ強化している。以前は、中国経済がマイナス成長になったら中共が政権崩壊すると言われたが、今はすべてコロナのせいにできるのでマイナスになっても政権崩壊しない。中国の意図的なバブル崩壊) (ウイルス戦争で4億人を封鎖する中国

トランプ政権は、中国の金融機関にドルを使わせないようにする経済制裁を検討しているが、これはドルの基軸通貨性を低下させる自滅行為だ。中国は人民元の国際化を加速し、ドルの傘下から離れていく。米国からの脅しを受け、中国企業が米国で株式上場を避けるようになっている。たとえば、アリババ傘下のアントは上海や香港だけで上場する。米国が中国を金融面で制裁すると、それは中国の崩壊でなく非米的な台頭につながり、米国の覇権体制の方が崩れていく。 (Jack Ma’s Ant IPO Signals Start Of De-Dollarization

米国の中国敵視が高じて軍事的な米中戦争が起こり、中国が物理的に破壊されるシナリオも日本人のお好みだ。だが、このシナリオは以前から絵空事である。米中とも核保有国であり、核保有国どうしは本気の戦争をやらない。中国とインドは、ヒマラヤの国境で兵士どうしの殴り合いをするものの、本気の戦争はしない。インドとパキスタンも同様だ。米中は戦争しない。「米中戦争」は、軍事も外交も自前でやっていない対米従属な日本人の無知に基づく妄想だ。 (4 Reasons Why India Couldn't Win a War With China

などなど、中国が潰れていくシナリオは最近どれも可能性が低下している。最近の中国は、破綻する方向の要素が減り、台頭する方向の要素が増えている。中国は近年、イランやイラク、サウジアラビアなどの石油利権を貪欲に獲得している。中国は、以前より安価に石油ガスを得られる。中国本体の経済成長が鈍化しても、エネルギーの原価が安くなった分の経済利得の増加で穴埋めできる。トランプWHOからの脱退を決めたが、これによってコロナやその次のパンデミック(国際政治的な謀略としてありうる)の国際対策における主導権が米国から中国に移転していく。 (コロナ時代の中国の6つの国際戦略) (中国が好む多極・多重型覇権

これまで、中国の台頭については何度も記事にしてきたが、中国が潰れる可能性についてはあまり分析してこなかったので、今回はそれについて書いてみた。台頭の分析は改めて展開する。


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